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「アジアNo.1」への最短ルート——ユーザベースとAlternatives.pe、統合の舞台裏

「アジアNo.1」への最短ルート——ユーザベースとAlternatives.pe、統合の舞台裏

2026年4月、ユーザベースはシンガポールのスタートアップデータ企業「Alternatives.pe」をグループに迎え入れました。弁護士とベンチャーキャピタリストという異色の経歴を持つJason Edwards氏が創業した同社は、規制当局への提出書類を基にした「正確性」の高いデータで、東南アジアのプライベートマーケットに革命を起こそうとしています。

今回のM&Aは、ユーザベースが掲げる「アジアNo.1の経済情報インフラになる」というビジョン(VISION2028)に向けた大きな一歩です。なぜJason氏はユーザベースをパートナーに選んだのか。そして、この統合を率いるPMI(Post Merger Integration)責任者の大沢遼平は、Alternatives.peに何を見たのか。創業者であるJason氏と、PMI責任者の大沢に、出会いから未来のビジョンまで、そのすべてを聞きました。

大沢 遼平

大沢 遼平RYOHEI OSAWA執行役員 グローバル事業 アジア領域担当

総合商社から株式会社ユーザベースに転職し、SPEEDAのセールスおよびマーケティング業務を経て、INITIALのカスタマーサクセス(CS)立ち上げを主導。2023年にChie...

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Jason Edwards

Jason EdwardsAlternatives.pe CEO

オーストラリアで金融弁護士(Clayton Utz)としてキャリアをスタートし、1997年に香港のBaker McKenzieへ移籍。2005年にシンガポールのプライベートエ...

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目次

原体験が語る、プライベートマーケットの「情報格差」

Jasonさんはベンチャーキャピタリスト(VC)と弁護士というユニークな経歴をお持ちです。なぜ、データビジネスを立ち上げようと思ったんですか?

Jason Edwards(以下「Jason」):
プライベートエクイティで働き、その後VCファンドを立ち上げた際に、スタートアップや他の未公開企業に関する正確で包括的な財務情報を持つデータベースを見つけられず、強いフラストレーションを感じたのです。

他のデータプラットフォームも試しましたが、そこで得られるのは、基本的にウェブ上から誰でも見つけられるような情報だけでした。弁護士として働いた経験から、規制当局への提出書類を基にすれば、はるかに正確で包括的な情報を提供できるはずだとわかっていました。問題に対する解決策は、そこにあったのです。

2019年にAlternatives.peを創業された当時、東南アジアのプライベートマーケットにおけるデータはどのような状況だったのでしょうか?

Jason:
当時、市場にあったデータプロバイダーはどこも似たような情報を持っていましたが、それらはやはり信頼性が低く、網羅的でも正確でもありませんでした。そのほとんどが、ウェブをクローリングしたり、企業からの自己申告に基づいたりした情報だったんです。

本当の課題、つまり市場に存在した“ギャップ”は、より堅牢で、信頼性の高い何かを提供することでした。投資家が正しい意思決定を下すためには、正確かつ詳細で、包括的な情報が必要です。しかし、それが東南アジアには存在しなかった。そして、私たちが知る限り、日本を除くアジアの他の地域でも同様の状況でした。

Alternatives.pe社CEO Jason Edwards
「正確性」への強いこだわりは、そうした原体験から来ているのですね。

Jason:
データの重要性はますます高まっています。特に投資を行う金融の世界において、データは絶対的に不可欠なものです。

私はデータの正確性に対して、熱狂的とも言えるこだわりを持っています。なぜなら、もしあなたが投資目的で不正確な財務情報を提供しているとしたら、一体何をしていることになるのでしょうか? それは、他の誰もがウェブを自分でクローリングしてデータを統合すれば手に入れられるものを、ただ提供しているに過ぎません。

だからこそ、人々がもっと質の高いものを手に入れられるようにすることが重要でした。私たちは、これまで東南アジアやオーストラリアでは見られなかった、まったく異なるレベル、まったく異なる情報源を提供したかったのです。目指したのは、未公開企業についても、証券取引所に上場している公開企業の情報開示に限りなく近いレベルのものを、人々に見てもらうことでした。

なぜユーザベースだったのか。パートナー選びの決め手

ユーザベースと最初に接点を持ったのは、いつ、どのようなきっかけでしたか?

Jason:
2022年に、私からSpeedaに連絡を取りました。当時、私たちはすでにいくつかの大手データプロバイダーにデータのライセンス提供を始めており、Speeda、そしてユーザベースにもぜひライセンスしたいと考えていたのです。

知人を通じてTomoさん(太田 智之/上席執行役員 事業開発担当)を紹介してもらい、彼はシンガポールにいるSpeedaのチームメンバー数名と私たちのプラットフォームを試してくれました。彼は私たちのデータに非常に感銘を受けてくれましたが、そこで話の方向性を変え、より大きな機会を見出してくれたのです。

ライセンス契約ではなく。

Jason:
はい。彼は、私たちからデータをライセンスすること以上に、将来的に私たちの会社と協業したり、買収したりする可能性について、より強い関心を示してくれました。それは私たちにとって非常に興味深い会話であり、驚きと同時に興奮を覚えるものでした。それが最初のディスカッションです。

それから3年間、トモさん(太田)が日本からシンガポールに来るたびに会いました。私たちは良い関係を築き、私はトモさんや、これまで会ったユーザベースの他のメンバーに対して、深い尊敬の念を抱くようになりました。そして、「アジアにおけるプライベートマーケットのインサイト分野でリーダーを目指す」という彼らのアプローチに、心からワクワクしました。これが、私たちが最初につながった経緯です。

インタビュー風景
当初想定していたライセンス契約ではなく、最終的にユーザベースとのM&Aを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

Jason:
これは正しい選択だったと確信しています。私たちはアジア、特に事業を始めた東南アジアに非常に強くフォーカスしています。オーストラリアにも展開し、今後はインドやアジアの他地域にも拡大したいと考えています。ユーザベースもまた、アジアに非常に強くフォーカスしている。

そこにシナジーがあったんですね。

Jason:
ええ。私たちの事業には多くのシナジーと重なり合う部分がありますが、それは非常に補完的な形で存在しています。他のどのデータプロバイダーと比べても、私たちはユーザベースに対してより強い親近感を抱きました。

また、ユーザベースで出会った人々に対しても、非常に強い感銘を受けました。もし自分の会社を売却するのであれば、この会社こそが、次のレベルへ引き上げるために自分自身がその一員となりたいと思える、正しい存在だと感じたのです。それに、私は日本と日本食が大好きなので、私にとっては完璧なソリューションでした(笑)。

大沢さんはPMIの責任者として、JasonさんやAlternatives.peのチームと初めて向き合ったとき、どんな印象を持ちましたか?

大沢 遼平(以下「大沢」):
私が本当に感銘を受けたのは、彼らが投資家というユーザーのニーズに深く寄り添い続けるその“規律”のレベルと、そのニーズに応えるために高品質なデータセットをゼロから構築するというコミットメントでした。

その瞬間に、私たちがSpeedaで達成しようと目指していることを、まさに実践している会社がアジアに存在するのか! と。心の底から興奮したし、今もその興奮は続いています。

ユーザベースは「アジアNo.1の経済情報インフラになる」というビジョン(※)を掲げています。Speedaを通じて、私たちは正確な情報を常にフレッシュな状態で提供し、最速で結果を残す”挑戦者”であふれる世界をつくりたい。今回のパートナーシップは、そのビジョンとも強く連携しており、共に最速のペースで成長を加速できると確信しています。これから一緒に何を築いていけるのか、本当に楽しみです。

VISION2028として、2028年までのビジョンを掲げています。

Jasonさんは、統合プロセスの中で大沢さんや日本側のチームと仕事をしてみていかがですか?

Jason:
遼平と彼のチームが、いかにプロフェッショナルで、組織的で、そして物事をいかに速く進めているかに感銘を受けています。それは、ユーザベースのバリューのひとつである「Wow fast(スピードで驚かす)」を思い起こさせてくれました。今、まさにそれを実感しています。

物事がスピーディーに進んでいるのは、とてもエキサイティングです。同時に、彼らのサポートも素晴らしい。ユーザベースのチームは、私たちがより速く、より強く成長できるよう、心からサポートしたいと思ってくれているのが伝わってきます。「Stronger together」ですね。ユーザベースの一員になるという決断について、ますますポジティブな気持ちになっています。ここにいられることを、とても嬉しく思います。

先日無事にクロージングしましたが、PMI責任者とFounder、それぞれの立場で、今の率直な気持ちを聞かせてください。

大沢:
先ほども話した通り、今はとにかくワクワクしています! これからの数年間、統合を通じて、より多くの人々が正しい、つまり正確な情報にアクセスし、より速く、より良い意思決定を下せるようにすることを目指します。やるべきことはたくさんありますが、必ず実現させます。

大沢遼平

Jason:
私にとっては、プロフェッショナルで先進的なユーザベースという組織の一員となり、共にアジアのインサイトを提供するグローバルリーダーとなることに興奮しています。

ユーザベースは明らかに日本におけるマーケットリーダーであり、アジアの他の地域においても主要な情報源です。私たちの取引データと、ユーザベースが持つ東南アジアにおける非常に詳細な財務データやその他のデータを組み合わせることで、私たちはこの地域でさらに圧倒的なプレイヤーになると信じています。

そして、私たちの補完的なスキルと経験は、アジアの他の地域へ展開し、そこでもトッププレイヤーになるための助けとなるはずです。ユーザベースと共に働くことで、アジアのインサイト市場でリーダーになれるんです。

同時に、少し気後れするような気持ちもあるんです。なぜなら、私たちが多くのことを成し遂げることを多くの人々が期待しているからです。ハードルは高い。でも、だからこそ、私たちは必ずやり遂げ、誰もが見たいと望むものを届けたいと思っています。そのプロセスを開始し、目標達成のために共に働く準備はできています。

統合で描く、アジア経済情報インフラの未来

東南アジアのプライベートマーケットは、今後どのように変化していくと考えていますか?

Jason:
東南アジアは、約7億人という巨大な市場であり、過去数十年間にわたり世界で最も高いGDP成長率を記録している国々をいくつも擁し、今後も成長が続くと予測されています。これは、投資にとって計り知れない機会を提供します。

しかし、投資にはデータに基づいた慎重な意思決定が不可欠です。そのため、信頼性が高く、堅牢なデータを求める人々はますます増えていくでしょう。ユーザベースの一員として、私たちは投資家やアドバイザーがそうした意思決定を下すための最高のデータソースを提供できると考えています。東南アジアの市場が成長するにつれて、データへの需要も拡大し続けるでしょう。

Jason Edwards
SpeedaのデータとAlternatives.peのデータが組み合わさると、ユーザーにとっては具体的に何が変わるのでしょうか?

Jason:
この2つのデータを組み合わせることで、ユーザーはSpeedaが持つ最高の金融データと、Alternatives.peが持つ最高の取引データを手に入れることができます。これらが統合されれば、私たちがカバーする地域において、最高のプライベートマーケットデータソースとなるはず。私たちがひとつになれば、本当に誰にも止められなくなりますよ!

東南アジアの投資家や企業、あるいはAlternatives.peの既存ユーザーに向けて、今回のグループジョインが彼らにとって何を意味するのか、メッセージをお願いします。

Jason:
このパートナーシップは、既存および新規のユーザーにとって、非常にポジティブな利益をもたらします。なぜなら、彼らは最高の取引データを得られるだけでなく、Speedaが提供する驚くほど詳細な財務情報を活用できるようになるからです。これら2つのデータセットを統合すれば、市場にあるどの製品よりも一歩先を行くものになるはずです。

最後に、日本のビジネスパーソンに向けてメッセージをお願いします。東南アジア市場への進出を考えている方も多いと思います。

Jason:
そうですね。まず最初のステップは、私たちがすでに東南アジアやオーストラリアで提供している、スタートアップや他の未公開企業に関するデータをみることで、面白い市場があることを理解することだと思います。

私たちのデータを使えば、そこにどのような企業が存在し、どのような評価額で、財務状況はどうなっているのか、そして、彼らが投資したり協業したりする機会がどこにあるのかを理解できます。ぜひ一度直接ご覧いただければと思います!

大沢(左)・Jason(右)

編集後記

Jasonさんとは取材当日が初対面。しかも同時通訳を介してのインタビューだったので、正直、もう少し距離のある時間になるかなと想像していました。でも実際に話してみると、そんなことは全然なくて。終始穏やかで、言葉を丁寧に選んで話す方なのに、データへのこだわりを語るときだけ、内側の熱がふっと立ちのぼる。記事の中でJasonさんは自分を「熱狂的」と表現していますが、通訳を挟んでいても、その熱量は少しも薄まらないんだなと実感しました。

Alternatives.peがグループに加わったことは、「アジアNo.1」に向けた大きな一歩だと思っています。PMIはこれからが本番ですが、同じ熱を持つ仲間が増えたことが、今は素直に嬉しい。VISION2028に向けて、これから一緒に何をつくっていけるんだろうと、ワクワクしています!

撮影:井上 秀兵 / 編集:筒井 智子
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