「見せる」から「つながる」へ。ポートフォリオサイトに込めた狙い
髙木 菜々子(以下「髙木」):
もともとNewsPicks Brand Design(広告事業/以下「BD」)のアカウントページには記事コンテンツの実績は溜まっていたのですが、大型イベントなどそれ以外のデザインのアウトプットがまとまっていないという課題がありました。
当時、BDでは「アカウントベースドシフト」と呼ばれる取り組みに注力していて、特定のクライアント企業に集中して長期的にご一緒するスタイルへ移行しようとしていたんです。その際にコンテンツ以外のデザイン実績が整理されていれば、受注にも貢献できるのではないかという課題感がプロジェクトの出発点でした。
ただ、検討を進めるうちに、BDという枠よりもNewsPicks全体として見せたほうが価値が大きいという判断になりました。オリジナルコンテンツの蓄積もNewsPicks全体の資産ですし、デザインの幅を示すためにも、「NewsPicksデザイン全体のポートフォリオサイト」という形になったという経緯です。

プロジェクト背景
髙木:
まずはアウトプットのバリエーションの豊かさを見せることを重視しました。展示会のデザイン、イラストシステム、NewsPicks for Kids(子ども向け新聞)です、インフォグラフィックなど、多種多様な制作物を載せています。
一方で、当初載せる予定だったホワイトペーパーは外しました。ホワイトペーパーだと「ホワイトペーパーがつくれるんですね」で終わってしまう。キービジュアルやその展開のほうが、クライアントが自社での活用を想像できる余白があると判断したんです。
インフォグラフィックについては、Pick数が多いものを軸に、国際政治、テクノロジー、カルチャー、企業系などジャンルを分けて選んでいます。
髙木:
これについてはかなり議論しました。遷移先が有料会員しか読めないコンテンツだと、ポートフォリオを見に来た方にとってストレスになりかねない。かといってポートフォリオサイト上で有料コンテンツを全部見せるわけにもいかない。結果的に、サンプルとして割り切って見せるという方針に落ち着きました。
今後は年に1回、まとめて追加・更新する形を考えています。動くバナーなど、見ていてワクワク感のあるものは積極的に掲載しています。
視点を結び、価値を創造する。NewsPicksのデザインチームが担うミッション
月森 恭助(以下「月森」):
明確に答えがあります。社内では通称「ワームホール」と呼んでいるのですが、「つながらないものを、つなぐ力」──それがNewsPicksにおけるデザインの役割です。

NewsPicks Design Philosophy|Wormhole
もともとNewsPicksのデザインビジョンとして整理されていたものですが、よくよく考えるとこれはビジョンではなくフィロソフィー(哲学)だなと。情報と情報、情報と人、人と人。異なる視点を結びつけることをデザインの力で担う。その一点に尽きると考えています。
松嶋 こよみ(以下「松嶋」):
案件によってまったく異なります。特集のインフォグラフィックの場合は、記事の方向性が固まったタイミングで担当記者とミーティングをし、どんなデザインで、どんな世界観で届けるかを話し合います。だいたい特集開始の前週くらいですね。一方でニュース記事のように翌日公開のものだと、前日の夕方から入ることもありますし、デザイナーが企画段階から参加するケースもあります。
また、デザイナーが台本から書いて仕上げるコンテンツもあります。たとえばCOTENコラボの企画では、既存のPodcastを聴いて大枠をつかんだうえで、デザイナーがそれぞれ興味のあるトピックを選んで掘り下げ、図解記事にしています。
髙木:
ブランドストーリー(スポンサードコンテンツ)の場合、編集者が図版やバナーコピーの方向性をクライアントと合意したうえで依頼が来ます。ただ、制作中に「この図版はこう調整したほうが分かりやすいのでは」と判断すれば、こちらで修正して提出することもあります。バナーコピーについても、絵に合わせて調整したほうがいいと感じたら踏み込んで提案します。
大型イベントになると、シニアメンバーはコンセプトをまとめるところから入ることも多いですね。上流から関わり、ユーザー視点に立ち「何を伝えるか」を整理することで、結果どんな制作物が必要かを適切に判断することができます。
月森:
広告制作の現場もさまざまなので、一概には言えないですね。一般的には、コンセプトを固める人、コピーを書く人、絵をつくる人といった役割の線引きが比較的はっきりしているイメージがあります。NewsPicksの場合はその線引きがそこまではっきりしていなくて、営業もエディターもデザイナーも、一緒になって考える場面が多い。そこが違いなのかなと思います。
「コト」と「モノ」の両立──良いデザインとは何か
月森:
デザインを表面的に捉えるのではなく、意味を扱いながらも、扱っている意味だけに閉じずに、モノとしての強度がある状態。それが自分の中での最低ラインです。
かつてデザイナーが、最終工程でお化粧をするだけの存在に矮小化した時期がありました。そのカウンターとして、コンセプトや構造の整理といった広い意味でのデザイン──「コト」に向かおうという動きが生まれた。それ自体は、本来のデザインへの回帰として正しいと思っています。
ただ、振り子が振れすぎて、今度はアウトプットとしてのモノが弱いものが世の中に溢れているように見える。コトに向かった結果、モノが弱まるのでは本末転倒です。生成AIで誰でも簡単に形にできる時代だからこそ、「コトとモノ」の両立が欠かせないと思っています。
NewsPicksの文脈で言えば、伝えたい相手にちゃんと届いて、行動に置き換わるところまで機能するかどうか。接点が接点で終わらず、その先につながるか。それが良いデザインの条件だと考えています。
松嶋:
NewsPicksのデザインで言うと「コンテンツの面白さや記者の情熱を、きちんと読者まで届くアウトプットにできているか」が大切な気がします。デザイナーがいなくてもコンテンツは生み出せますが、そこにデザインが加わることで起こりうる化学反応をきちんと起こせているか。スクリーンを通しても伝わるくらいの強さや熱が出ているか。そのためには、「コトとモノ」に汗をかいて向かうことはすごく大事なんだろうなと。
月森:
何がそう思わせるのか明確には分からないのですが、不思議と伝わってくるものはあるんです。ペラペラのものと、どこか詰めが甘くても、そのノイズが体温になって熱量に変わっているもの。塊としての生命力があるかどうか、と言ってもいい。その違いは確かに存在します。音楽でも、ストック音源のフレーズをそのまま使っている曲は聴けば分かる。それと似ているかもしれません。
問い直し、ずらし、はみ出す。NewsPicksデザインの創造プロセス
松嶋:
CDO(Chief Design Officer)によく言われるのは、「みんなそれぞれの色があるのがNewsPicksらしさなんだよ」ということです。私は肩の力が抜けたゆるい表現が好きですが、別のデザイナーはシュッとした佇まいの雰囲気づくりが上手だったり。
それぞれが得意なところを伸ばしながら、横で見合って、間の取り方をあの人から学ぶ、みたいなことが自然に起きている。特に何を言われるわけでもないのに、みんなのびのびやっていること自体が、ほかのメディアではできない──それがNewsPicksらしさなのかなと思っています。
髙木:
毎回、自分の中で新しいことにトライしようと心がけています。「このバナーコピーだったら無難にこういう表現だよね」という方向ではないところで、ちゃんと真っ当になるものを模索するようにはしています。
月森:
NewsPicksのデザインには、Alternative、Bold、Minimalという3つの指標があります。最初のAlternativeが今の話に直結するのですが、たとえば「AI」というテーマのコンテンツをデザインするとき、世の中的には青い色、デジタルっぽさといった最大公約数的なイメージに引っ張られがちです。そこからいかに視点をずらすか。前提を問い直して、その枠組みから一歩はみ出した状態で物事を切り取る方法がないか、自分の軸で見つけていく。
それをみんながナチュラルにやっているから、結果としてNewsPicksのデザインは「あるある」の着地ではなく、切り口の違うものの集合体になっている。それが「らしさ」の正体だと思います。

NewsPicks Design Method|実践を導く3つの視点
松嶋:
先輩デザイナーの受け売りですが、バナーをつくるときも、大きな声をいきなり出せばみんな振り向くのは当たり前。赤くして、黄色くして、大きくして──そういう分かりやすい方向に行きたくなるところを、そうじゃないアテンションの取り方はどこにあるんだろうと一度立ち止まるプロセスは、みんなそれぞれの方法で大事にしている気がします。
髙木:
編集部のデザイナーは、その名のとおり編集力が強いという印象です。テーマに関わらず、読者が理解できるよう翻訳するためには、まず自らが理解する。編集者が言うならそうだろうと流されず、ひとりの人間の視点で考え続ける力がある。
編集部のデザイナーの方々がBDのヘルプに入ってくれたときに、編集者からバナーコピーのうまさを聞いて、本当にレクチャーしてほしいと思いました。専門知識があるわけではないからこそ、等身大の疑問をそのままコピーに変えられる力がある。それはすごいことだと感じています。
松嶋:
BDの方は本当に大変そうだなと(笑)。編集部では、デザイナーが記者と直接やり取りしたものが翌日そのまま記事になることもあるのですが、BDの方はその先にクライアントがいる。何度もボツになることもあるでしょうし、企画全体をクライアントにプレゼンする場面もある。私たち編集部のデザイナーにはない工程ですよね。でも、BDのブランドストーリーはいつも見ていて、「このデザインかっこいい」「これ誰がつくったんだろう」と、密かに勉強させてもらっています。
「遊び心」が未来を拓く。NewsPicksデザインの次なる挑戦
髙木:
BDはクライアントが主な相手ですが、最終的には読者に届かないと意味がないという構造の割に、読者への理解度がまだ十分ではないと感じています。今、BDでは読者のデータ分析が始まっているのですが、ぼんやりとした読者像ではなく、どんな人にどういう表現が届くのかをもっと明確にできれば、クライアントとの対話にも根拠を持って臨めるようになるはずです。
松嶋:
経済をもっとおもしろく、分かりやすくしたいです。たとえば最近、中東情勢でいろいろなことが起きていますが、その全体像を理解している一般の方はそう多くない。ニュースの断片は知っていても、そもそもなぜそうなっているのかという部分は、まだまだ伝えきれていません。漫画にしたり、視覚的なコンテンツを使ったりして、分かりやすく届ける取り組みをもっと広げていきたいと思っています。
月森:
ワームホールのフィロソフィーに接続されたバリューが3つあります。Clear、Honest、そしてWonder。この中で、すべての架け橋をつくる根幹にあるのはWonder──遊び心ではないかと感じています。

Core Value|デザインを導く3つの価値観
グラフィックデザインが人に手渡せるのは、言葉では表しきれない中間領域の空気感や価値観です。受け取った側も言葉にしにくいけれど、「なんとなく、こういうことなんだろうな」と感じ取れる。熱量があるもの、フックがあるものは、ちゃんと届くんです。
たとえばThoughtscapeのポスター。事業の内容をすべて言語化しなくても、層になったビジュアルに「深いところには、ひとりでは届かない言葉がある。」というコピーが添えられていれば、どんな伴走をしてくれるサービスなのか、なんとなく分かる。人によって受け止め方は違っても、曖昧で輪郭がぼやけたままでも、大きな感情として届くものがあります。

Thoughtscapeのポスター
言葉ならクリアに伝えられることがある。けれど、絵でしか伝わらない思想もある。その両方を担っていけるのが、NewsPicksのデザイナーがやれることであり、これからも果たしていってほしい役割です。そしてそれは、プロンプトにはできない何かにつながる。ほかでは代えがきかない価値は、きっとそこにしかないと思っています。
編集後記
とても楽しいインタビューでした! 普段あまり知る機会のないデザイナーの考えやベースとなる哲学、広告事業と編集部のデザインの違いなど、言語化されることで「なるほど、確かに」「へえ〜〜!」となりました。ちなみに記事に出てくるワームホールは社内向けにTシャツやポスターも販売されていました(私もTシャツを持っています笑)。
私はユーザベース入社前からNewsPicksユーザーだったんですが、最初にインフォグラフィックスを見たときは衝撃でした。馴染みの薄い経済ニュースが、めちゃくちゃ理解しやすい! と感動したのを今でも覚えています。NewsPicksのデザインポートフォリオサイト、ぜひご覧ください!










