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「新卒メンバーは手厚く伴走が必要」は幻想だった? ユーザベースが語る若い世代の可能性

「新卒メンバーは手厚く伴走が必要」は幻想だった? ユーザベースが語る若い世代の可能性

ユーザベースは2027年卒の新卒採用をスタートしました。
2025年卒、2026年卒の定期採用を見送った後、なぜ今、再び新卒採用に力を入れるのか。そこには、2024年卒の新卒メンバーたちがもたらした確かな手応えと、未来を見据えた組織づくりの思想がありました。

今回は、CHRO(最高人事責任者)の松井しのぶと新卒採用の責任者である渡瀬雄平に、ユーザベースの新卒採用に込める想いや、これから仲間になる方々への期待について、じっくり語ってもらいました。

松井 しのぶ

松井 しのぶSHINOBU MATSUI上席執行役員 CHRO

公認会計士。国内大手監査法人を経て、PwC税理士法人で国際税務のコンサルティングマネージャーに従事。2014年ユーザベースに参画し、人事・総務・法務などをはじめとするコーポレ...

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渡瀬 雄平

渡瀬 雄平YUHEI WATARUSE人事本部 採用責任者

大手総合人材会社を経て、ファーストリテイリング、アマゾンジャパンにて採用およびHRBP業務に従事。2022年 ユーザベースに参画。現在では採用責任者としてユーザベース全体の採...

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目次

業績、組織の不安。一度立ち止まったからこそ見えたこと

本日はよろしくお願いします。まず、2025年卒、2026年卒の新卒定期採用を見送った理由から聞かせてもらえますか?

松井 しのぶ(以下「松井」):
はい。理由はもう、ひたすら「業績」です。新卒の定期採用は入社いただく1年半ぐらい前から動くわけですよね。内定を出したら、当然そこに会社として責任を負う必要があります。ですが、当時はあまりにも会社の変化が激しくて、1年半後を見据えて新卒メンバーを採用するというコンセンサスが、足元の売上を追う中でなかなか取れませんでした。

具体的にはいくつかあって、まず現場のリーダーたちに「新卒メンバーを育成できるか」という不安がありました。また、足元の数字を積み上げなければいけない中で「やはり即戦力を採用したい」という声や、「1年半後に受け入れられるキャパシティがあるかわからない」といったさまざまな現実的な課題があったんです。

もちろん総論としてはみんな賛成なんですよ!「若い世代にちゃんと入社してもらって、ユーザベースを盛り立てていってほしい」という気持ちは、みんなすごく持っています。でも、各論になったときに、100%のGOサインはなかなか出せなくて。当時はトップダウンで動かせるほど、現場の不安を払拭できませんでした。

組織としても大きな変化があった時期でしたよね。

松井:
はい。特に旧SPEEDA・FORCAS・INITIALのサービスおよびブランドの統合(※)など、顧客起点の組織への転換を進めている真っ最中でした。もともと新卒メンバーを受け入れるのはSpeeda事業がメインだったので、その組織が大きく変化している中で「1年半後を見据えて採用しよう」という動きが取れなかったのは、確かだと思います。

2024年7月に「スピーダ」に統合。その後、2025年9月に「Speeda」にリブランディング

そんな状態で新卒の方々を受け入れるのは、会社として無責任ですし、中途半端にやるべきではないと。もちろん、インターンから入社してくれるようなメンバーは今もいるので、完全にゼロにしたわけではありません。ただ「新卒一括定期採用」という形をやれるだけの「組織ケイパビリティ」がなかった、というのが正直なところです。

対談風景
そこから一転、2027年卒の採用を再開したのは、その「組織ケイパビリティ」が整ったから、ということでしょうか?

渡瀬 雄平(以下「渡瀬」):
そうですね。2025年の1月頃に再開を決定したんですが、大きな変化は2つあったと思います。ひとつは、2024年卒のメンバーが入社してくれて、彼らが本当に素晴らしかったこと。

まだ入社していない人たちを想像しながら「受け入れられるか?」と判断するのは難しかったですが、24卒のメンバーの活躍を見て、「いけるね!」と。むしろ「積極的に採用したい!」という気持ちになったのが、すごく大きかったです。

もうひとつは、組織体制の変化です。顧客起点の組織への転換は進めていましたが、2024年当初はまだ職種ごとに組織が細分化されていました。たとえばインサイドセールス(IS)が、いろんな組織に少しずついる状態。そうすると、5人や10人のチームに新卒が1人入る、というのは育成の観点からかなり難しいんですね。

ですが、2025年の組織では機能軸で組織を統合しました。ISという1つの大きな組織ができたことで、アロケーションがしやすくなったり、体系だったオンボーディングができるようになったり。これが最大のポイントだったと思います。

松井:
イネーブルメントの観点でも大きな変化でしたね。それまでは各IS組織でバラバラに育成オンボーディングをやっていたものが、共通ファンクションとして立ち上がった。セールスもISも、ひとつの「型」のようなものを組織にインストールできたので、ようやくジュニアメンバーを受け入れられる基礎体力というか、土台ができた感覚です。

新卒採用では、優秀層にたくさん出会える

なるほど。組織としての「基礎工事」が終わった、と。とはいえ、業績を上げていく中で「即戦力重視」という考え方もあると思います。第二新卒やインターンからの採用という選択肢もある中で、あえて「新卒一括定期採用」を行うのはなぜでしょうか?

松井:
実は、新卒一括採用にこだわっているわけではないんです。私たちのイメージはあくまでも「Under 25採用」。第二新卒でもいいし、インターンからでもいい。一括定期採用は、あくまでその中のひとつの手法という位置づけです。

とはいえ、一括定期採用には良さもあります。それは、日本の新卒採用ではとにかく優秀な層と多く出会う機会があるということ。タイミング的に、優秀な人が同じタイミングで新卒として就職活動を行う。そういう人たちは、一度社会に出て経験を積むと一気に市場価値が上がるし、活躍している人であればそもそも転職活動をしないケースもまだ日本では多いので、採用できるチャンスが少ない。優秀層が採用できる母集団がある、というのは採用戦略的な目線でいくと重要度が高いんです。

渡瀬:
そうですね。第二新卒であっても入社初日からいきなり大活躍、なんてことはないじゃないですか。これは中途採用でも同じで、私たちの環境や業務に慣れてもらう期間は、どんな人でも必ずかかります。そう考えると、ポテンシャルという点で非常に優れた方が相対的に多いのが新卒採用なので、ここにアプローチしない理由はないな、と。

一方で、一般的に「新卒メンバーを育成することは大変だ」と言われます。先ほども現場から「育てている余裕がない」という声があったとのことでしたが。

渡瀬:
今回は本当になかったですね。というのも、まず初期配属する部署を、育成体制が整っているところに絞っているんです。カスタマーサクセスやISなど、ある程度たくさんのメンバーがいて、イネーブルメントのプログラムがしっかりあり、再現性高く育成ができるところ。もちろん、他の部署への配属も検討しますが、その組織のコンディションや体制を踏まえて、段階的に考えています。

そして何より、24卒での成功体験が大きかった。

採用責任者 渡瀬雄平

松井:
そうなんです。24卒の採用を検討していたときは、まさに「育成する余力がない」「新卒メンバーは手厚く伴走しないといけない」という声が結構ありました。でも、実際に受け入れてくれた部署のリーダーに話を聞くと、「むしろ、すごくフレッシュで、アンラーニングが必要ない分、素直にまっすぐ成長してくれる良さがある」と。

新卒のメンバーは、スポンジのように知識を吸収してくれます。それに組織全体が「応援してあげよう」「みんなで育てよう」というモードになるので、チームアップの観点でもすごくいい影響がある。新卒メンバー以外の社員のエンゲージメントも上がります。実際に受け入れた部署からは「継続することが大事だ」という声が上がっているくらいです。

新卒採用は、世代のダイバーシティを広げるための手段

24卒のメンバーたちも、「後輩ができるのが楽しみ」と話していました。採用活動にも積極的に協力してくれているそうですね。

渡瀬:
本当にそうなんです。めちゃくちゃ積極的に関わってくれていて、すごくいい影響をもたらしてくれています。

松井:
ただ一方で、こうした「同期」とか「新卒一括」といったものに、アレルギーを感じる人がいるのも事実だと思っています。日本的な、同質性の高い集団で走る、みたいなものに阻害感を感じてしまうメンバーもいるかもしれない。だからこそ、あくまで私たちは「採用手法のひとつ」だと捉えています。定期一括採用で入社したメンバーもいれば、インターンからそのまま社員になったメンバーもいる。いろいろな人がいていい

私たちが本当に欲しいのは、世代のダイバーシティなんです。だから「Under 25採用」という言い方もしているくらいで。ただ、新卒市場にアプローチする上では、「新卒採用」という言葉の方が分かりやすいので、そう表現しています。

他にも新卒メンバーが入ってきたことで、受け入れ側にも良い変化があったというエピソードはありますか?

渡瀬:
たくさんありますが、24卒のあるメンバーの話をさせてください。彼は入社1週間目くらいに、面識もなかった僕にDMをくれたんです。「相談があります」と。話を聞いてみると、ユーザベースのバリューでもある「オープンコミュニケーション」にすごく悩んでいました。オープンに指摘されることで、自分ができない人間だと言われているように感じて、傷ついてしまっていた。

そこから最初の3、4ヵ月は、毎月1on1をしていました。でも、そのときに思ったのは、悩んでいるポイントって、ビジネスパーソンとしての経験年数に関わらず、みんな同じなんだな、ということ。オープンコミュニケーションは、中途採用メンバーの多くも苦しむポイントでもあります。

彼と話すことで、僕自身のエンゲージメントもすごく高まりました。「責任を持って成長を支援しなきゃ」という気持ちになったし、同時に、社会人経験がまだ少ない彼らには、サポートがあってしかるべきだと再認識しました。

そして何より、彼の変化の速度がものすごく速いんです! 毎月会うたびに、考えていることのステージがどんどん変わっていく。その成長をビビッドに感じられたのは、僕にとっても本当に新鮮な経験でした。

対談風景
インターンシップに参加してくれた学生さんたちからも、新しい世代の可能性を感じることがあるそうですね。

渡瀬:
はい。一番驚いたのは、彼らがすでに生成AIに慣れていることです。インターンシップの新規事業立案ワークで、Speedaと並行して生成AIツールでリサーチをしてもらうんですが、彼らは「AIのアウトプットは、そのままでは使えない」という前提で考えているんですよ。

その感覚は、僕らビジネスパーソンが学ぶべき点が多いなと感じました。彼らは生成AIを普段から使っているからこそ、Speedaのような信頼性が高く、構造化された情報にアクセスできることの価値を、僕ら以上に理解してくれている

インターンシップの最後に、Speedaのトライアルアカウントをプレゼントした時の、彼らのどよめきはすごかったですよ!「やったー! これで業界研究し放題じゃん!」って(笑)。本当に嬉しかったですね。

「半強制」のジョブローテーションで、個人の可能性を広げる

ユーザベースは中途入社のメンバーが多いですが、新卒メンバーを迎えるにあたって、組織として変えていくべきことはありますか?

渡瀬:
キャリアに対する考え方かもしれません。ユーザベースには「自分のキャリアは自分でつくる」という思想が強くあります。でも一方で、本人の意思を尊重しすぎるあまり、不必要に悩ませてしまうこともあると感じています。

会社として、ある程度のキャリアパス──たとえば「ISで3年経ってこれができるようになったら、次はこれ」といった道筋を示すことも、時には必要なのではないかと。本人がまだ見えていない可能性を、会社として提示してあげる。特に、まだ社会人としての景色が広く見えていない若いメンバーにとっては、大事なことだと思っています。

松井:
まさにそうですね。会社として、ジョブローテーションはもっとちゃんとやった方がいいと考えています。本人が絶対に嫌だというのを無理やり、というのはユーザベースには合いませんが、「半強制」くらいの感じで「いいから行ってこい!」と背中を押してあげることも必要なんじゃないかなと。

そうやって社内の人材流動性を高めていく。たとえば、全従業員の10%が年間に異動している、という状態が当たり前になれば、「この仕事ずっとやりたい人じゃないと採りたくない」といった、人の可能性を狭めてしまうような声も減っていくはずです。

渡瀬:
そのためには、事業計画との連動が不可欠ですね。異動で人が出ていくことを前提に、先行して採用活動を始める。出ていく人と入ってくる人が、スムーズに入れ替わるような計画を、セットでつくっていく必要があります。

渡瀬雄平
カルチャーの面ではどうですか? ユーザベースは独特のカルチャーがあると言われることが多いですが、新しく入ってきた人が違和感を覚えたときに、その声をどのように拾い上げていくといいのでしょうか。

松井:
それはもう、対話しかないと思っています。シニアメンバーが定期的に面談をして、「それはそんな風に捉えなくていいんだよ」と伝える。個別にちゃんと対話していくしかない。
渡瀬:
そのための仕組みとして、新卒メンバーには「ナナメメンター制度」があります。部署の縦の関係ではない、少し離れた組織の先輩がメンターになる制度です。そこで関係性ができれば、その後も気軽に相談しやすくなります。僕自身もナナメンターに付いたメンバーには、オフィスで会ったら「元気?」って声をかけるし、やっぱり気になるから、声をかける、ということを自然にやっていますね。

松井:
あとは、新卒メンバーに限らず「New Joinerアンケート」というのを、入社後2年間、毎月取っています。そこでHRがコンディションを見て、ケアが必要そうな人には個別に声をかける、といったことも行っています。

パーパスに向かうなら、360°好きに成長していい

最後に、これからユーザベースの仲間になる新卒メンバー、そして若い世代の方々に、どのようなことを期待されていますか?

渡瀬:
正直、「新卒メンバーだから」ということはあまりないんです。ただ、Under 25の若い世代の比率を上げていくことは、年代におけるダイバーシティを広げることにつながります。それによって生まれる20代ならではの独自の視点で、事業をつくったり、ユーザベースを新しく、強くしていってほしい。他の世代と同様に、20代のリーダーがどんどん育っていく。そんな未来を期待しています。

なぜ世代間のダイバーシティがそれほど重要なのでしょうか?

松井:
視点が違うからです。育ってきた環境、見てきたドラマ、触れてきたカルチャー、全部違うじゃないですか。私たちのユーザーは幅広いので、いろいろな視点が混ざり合い、影響し合うことで、新しい価値が生まれると思っています。

今のユーザベースは、圧倒的に30代の子育て世代が多い。そこがマジョリティになることで、たとえば20代の若いメンバーが「自分よりできる人ばかりだ」と感じて、意見を出せなくなってしまうとしたら、それはすごくもったいないことです。

CHRO 松井しのぶ
松井さん個人としては、どのような期待を寄せていますか?

松井:
新卒メンバーに限った話ではないですが、1人ひとりが共通のミッションに向かって好きなように走っていたら、結果として会社がめちゃくちゃ成長していた。そんな状態が理想です。

特に若い世代には、アンラーニングが必要ないという強みと、スポンジのような吸収力があります。40代の私とは脳のフレッシュさが全然違う(笑)。だから、爆速で成長してほしい。それも、ただ売上を上げる優秀なマシンになる、といった一方向の成長ではなくて。

横にも、縦にも、斜めにも。360°全方位に、好きなように成長していってほしいんです。ユーザベースのパーパスに向かって走ってくれる限り、私たちはその成長を止めることはありません。

編集後記

インタビュー中にも2人が繰り返し話していますが、私も24卒メンバーにインタビューするたびに、彼らの素直さや熱意、優秀さに驚かされます。私が新卒だった頃と比べたら大違い! 私が今ユーザベースの新卒採用に応募したら、確実に見送りになるな……と思っています(笑)。

新卒メンバーのインタビューシリーズはあと少し続きます!

撮影:金子 華子/編集:筒井 智子
Uzabase Connect