事業の柱となる規模の新規事業創出を目指して復活
think beyondは元々、「Think Beyond Meeting」として、ユーザベースが創業以来毎年行ってきた社内公募型の新規事業開発プログラムでした。アイデア自体は毎年出ていたものの、「SPEEDA」「NewsPicks」のような、事業の柱を担うような規模にはいたらず、一時中断していたこのプログラムですが、2020年に3年ぶりに復活しました。
2019年に企業内の新規事業開発や企業変革を手がける株式会社アルファドライブ(AlphaDrive)がユーザベースグループにジョイン。豊富な企業内新規事業創出実績をもつAlphaDriveがそのノウハウを注入し、新たなプログラムとして再開したのが、今回ご紹介する「think beyond」です。
「経営ボード以外からも新しい事業を」
対象者はユーザベースグループメンバー(SPEEDA、NewsPicks、FORCAS、INITIAL、AlphaDrive、MIMIR)の国内拠点メンバー。ユーザベースグループのカルチャーとAlphaDriveの新規事業開発支援の知見をかけ合わせ、個人の小さな原体験を、成長性の高い新規事業として育て上げることを目指しました。
ユーザベースグループの事業は現状、経営陣が立ち上げた事業ばかりです。「経営陣の能力が、グループ全体の限界になってはいけません。経営ボード以外からも新しい事業を生み出したい」と話すのは、think beyond事務局長を担当したカルチャーチームリーダーの村樫祐美。
普段、AlphaDriveとして新規事業開発を支援している企業は社員数が1万人超の大企業が中心ですが、ユーザベースの社員数は約700人。しかも大半が直近2年ほどで入社したメンバーです。
事務局兼メンターとして、制度設計、各チームに伴走しアドバイスしてきたAlphaDriveの白杉大は、
と振り返ります。
ポイント1:実施意義を言語化、トークイベントや社内研修も
まず実施目的と、明確な経営陣のコミットを打ち出しました。think beyondの意義を経営陣に何度も確認し言語化、社内に発信しました。
起案するか迷っている人向けには、社内で何度もトークイベントを行いました。毎回100人程度の参加者があり、熱量の高さがうかがえました。イベント後、起案しようかどうか迷っているメンバーにさらに個別でヒアリングをし、参加の後押しをしました。
参加チームのメンタリング以外にも、AlphaDriveのお客様向けの研修を社内で定期的に実施し、体系的に事業開発を学べる機会を提供しました。
ポイント2:「キャリアにおいて重要。いい挑戦、成長の場に」トップからのメッセージ
アイデアや思いはあるけど、目の前の仕事がある中、なかなか応募に踏み切れない──。制度を整えても、現場の社員はこういった思いを抱えて躊躇している人も少なくありません。1人でも多くの挑戦者が現れるよう、ユーザベースグループのトップから何度も社内にメッセージを出し、応募を後押ししました。
ユーザベース代表取締役Co-CEOの稲垣裕介は以下ように発信しました。

ユーザベースCo-CEO 稲垣 裕介(画像の役職は当時)
また同時に、「実際に事業化されるのかはガチンコの勝負だと思うし、会社としても投資が入る以上、一切妥協できません」と会社としての本気度もアピール。
『新規事業の実践論』(NewsPicksパブリッシング)の著書があるAlphaDrive CEOの麻生要一は社内にこう訴えました。

think beyond 2020には33件のアイデアが集まりました。AlphaDriveによると、一般的に、社員に対する事業起案者の割合は0.5~2%のところ、今回ユーザベースの場合は5~6%。事務局側の、社内へのさまざまな発信や多面的な後押しが奏功しました。
実際に起案されたアイデアを見て、白杉(白杉 大/AlphaDrive)はこのように感じたそうです。
ポイント3:活動休止期間込みの長期プログラム
今回、現業の繁忙期を踏まえて、各チームで自由に活動休止期間を設けて良いことにした結果、9ヶ月間という長期間のプログラムになりました。

審査を経て、2件の事業化が決定
1次審査で23件、2次審査で9件へと絞られていき、2021年1月からMVP期間(Minimum Viable Product:必要最小限の機能を実装したプロトタイプをつくる期間)を経て、2021年7月1日に行われた最終審査には7チームが挑みました。
各チーム、現業との両立に腐心しながらメンタリングを受けてアイデアや事業計画をブラッシュアップし、15分間のプレゼンを準備。最終審査では、顧客課題を捉えられているか、課題に即したソリューションであるか、また収益性や市場性、事業計画などを厳正に審査。その結果、グランプリ受賞の「トイカケ(仮称)」と準グランプリ受賞の「UNIDGE」が事業化される運びとなりました。
2021年 think beyond グランプリ受賞 セルフコーチングサービス「トイカケ(仮称)」

「トイカケ(仮称)」は、成長したい若手社会人のためのセルフコーチングサービスです。「自分が何がしたいか・どうしたらいいか分からない」と悩んだ瞬間に使うことができ、ユーザー自身が自分を知り、解決行動を取るためのサポートをします。
トイカケ(仮称)は独力で新規事業の創出が可能と判断し、審査委員会での協議の結果、ユーザベースから独立して事業を立ち上げる運びとなりました。今後ユーザベースからの出資を検討しています。
2021年 think beyond 2位受賞 協業サポートサービス「UNIDGE」
「UNIDGE」は、事業会社が協業による課題解決を自ら出来る世界を理想とした、協業促進サービスです。コンサルティングサービスと並行して、協業の業務効率化や精度向上を目的としたプロダクトを提供。2022年1月、株式会社アルファドライブの子会社としての法人設立を予定しています。
2件の新事業を創出したthink beyond 2020について、稲垣(ユーザベースCo-CEO)は以下のように振り返ります。
think beyond事務局長の村樫は以下のように総括し、今後の展望についても語りました。
この連載では今後、審査の様子や各チームの奮闘もお伝えし、さらに多面的にthink beyond 2020の取り組みをご紹介していきます。







