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事業化決定。使命感というより、運命。「UNIDGE」の2人が語る、新規事業の魅力

事業化決定。使命感というより、運命。「UNIDGE」の2人が語る、新規事業の魅力

ユーザベースは新規事業育成プログラム「think beyond 2020」を実施し、新規事業創出に取り組んできました。2020年にスタートした第1期は、計33件の応募があり、うち2件の事業化が決定しました。

think beyond 2020をスタートした背景と、制度設計のポイントをご紹介した前回に続き、今回は準グランプリを獲得した「UNIDGE(ユニッジ)」の起案者である渡邉と土成に、think beyondを振り返ってどんな学びがあったのか、今後どのように事業を展開していこうとしているのかを語ってもらいました。

渡邉 由佳

渡邉 由佳YUKA WATANABE

新卒で株式会社マイナビに入社し、転職情報事業部にて中小企業の中途採用支援業務に従事。スタートアップ企業でセールスチーム...

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土成 実穂

土成 実穂MIHO TSUCHINARI

株式会社パソナ新卒入社後、人材紹介事業部にて医療分野での法人営業及びキャリアコンサルティングに従事。新人MVPを受賞。...

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目次

チーム崩壊からのリスタート

そもそもthink beyondに参加したキッカケは?

渡邉 由佳(以下「渡邉」):
私が参加したキッカケは、内田さん(内田友樹・元AlphaDrive/現 株式会社 GO TODAY SHAiRE SALON)に声をかけてもらったから。内田さんの前職であるグロービスに私と共通の友人がいて、内田さんの話は友人から聞いていたんですよ。それで内田さんが入社してきた頃に一度挨拶したくらいの関係性でした。

1次審査通過後に誘われたんですが、最初はちょっと迷いました。内田さんはスタートアップを支援したいという想いがすごく強かったけど、私はどちらかというと事業会社側の支援をしたい想いが強かったんですね。初期マーケットと採用・資金調達がスタートアップ立ち上げ時の大きな課題。そこには資金提供先やファーストカスタマーとして、事業会社が関わってくる。事業会社を通じてスタートアップを支援しようと伝えて、たしかにそうだと言ってくれました。

think beyond自体、全社に告知されたSlackは見ていたけど、自分が出るつもりはなかったんです。「参加したい」ってスタンプを押している人の顔ぶれを見て「さすがだな」「そうだよね、こういうメンバーだよね」って感覚でした。事業会社を支援したい思いはあるけど、自分が新規事業をつくれるのか不安があって。内田さんに「ありがたいけど私でいいんですか? こういうことならできそうです」と伝えたら、それでいいと言われたので参加を決めました。

最終プレゼン中の渡邉
当初は3人のチームだったんですよね。

渡邉:
もう1人のメンバーである文字さん(文字拓郎・執行役員 VP of Product Development)はメンターというかアドバイザーみたいな感じで参加してくれていたんですよ。内田さんから誘われて参加したこともあって、事業会社ではなくスタートアップ支援への思いが強くて、方向性も違うし辞退しようという話になりました。それが2021年1月ですね。

で、2月くらいに村樫さん(村樫 祐美・think beyond事務局長)から「こういう形でもう1回やりませんか」とDMをもらって、でも忙しくて1ヶ月くらい放置しちゃったんですよ……。でも、もう1回DMをいただいて「それだったらやりたいです」と伝えました。

土成 実穂(以下「土成」):
私はもともと新卒でパソナに営業として入社したんですが、学生時代から新規事業に興味があったので新規事業をやる部署に異動し、地域振興で旅行業の事業立ち上げをやっていました。

新規事業って一見華々しいけど、すごく泥臭いんですよ。そもそも旅行業自体、労働集約型の側面が強くて。ツアーコンダクターを雇えば雇うほど事業は伸びるけど、成長曲線が描けない……さまざまな経験を積ませてもらいましたが、自分のビジネススキルの弱さを感じ、もっと修行したいと考えて、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーに転職しました。

デロイトでも3年ほど地方ビジネスに携わってきましたが、コンサルあるあるで自分でも事業をやりたくなっていきました。コンサルは楽しかったけど、支援だけでなく実行者としてもやってみたい──そこでAlphaDriveに出会ったんです。

2021年1月に入社したんですが、いつかはパソナ時代の失敗体験をリベンジしたいと思っていました。入社してすぐの頃、AlphaDriveStudioで、とあるクライアントの研修の収録があって、そのときに一緒だった白杉さん(白杉大・think beyond事務局/AlphaDrive)に「いつか事業をやりたい」って話したんですよ。2人がthink beyondの事務局メンバーなのは知っていたので、「think beyondって2回目、3回目ってあるんですかね?」みたいな。

私は今回出ようとは思っていなかったんですが、「あれ? デロイトでオープンイノベーションやっていたよね? ちょうどいい案件が!」って由佳ちゃん(渡邉)のアイデアを紹介されました。

入社3ヶ月も経っていない頃で時間的に余裕もあり、まだ何も分からない、とりあえず言われたら「やります」みたいな精神状態だったので、ご縁だと思い参加を決めました。入社半年後だったらやらなかったかもしれません。入社4ヶ月目からインキュベーション事業部の仕事が忙しくなって、カオスだったので(笑)。think beyondに参加を決めたのと、クライアントワークで主担当を任されたのがほぼ同じタイミングだったんですよ……。

たぶん村樫さんがちゃんと演出してくれたんじゃないかな。新規事業をやりたいと思っていたのは間違いないけど、タイミングは考えていなかったので。今振り返ると、think beyondへの参加は奇跡の連続だったと思います。

最終プレゼン中の2人
チームの特徴・強みを教えてください!

土成:
チームアップにかける時間がなかったっていうのが正直なところですね(笑)。

渡邉:
あえて何かしようっていうのはなかったよね。最初から意見が合ったんですよ。2人とも人材業界出身だし、オープンイノベーションに対して持っている課題感も意見が合って。

土成:
AlphaDriveで私自身がメンターとして新規事業開発の伴走を常にしているので、残りの期間に対してどこを目指すのか、ある程度見えていたんです。最も頑張ったとして、このラインだろうなって。そこに到達するためには、この1ヶ月で何をしなきゃいけなくて、だから今週何をやるのか、みたいな。

やるべきタスクが見えていたので、あとは2人でめちゃくちゃコミュニケーションを取る必要があって、だから毎日会話していました。一緒にthink beyondをやることになって10日後に中間報告会があって、さすがにパスしようと思ったら由佳ちゃんが「いや、出るっしょ!」って(笑)。

由佳ちゃんの野心的な気持ちがなかったら、たぶんできなかったと思います。私だけだったら現実的に無理だと考えていただろうなって。由佳ちゃんはいい意味で目指すラインが見えていなかったか。「こういうものだ」がないからできたのかも。

渡邉:
スパルタでしたけど、こういうものなのかなって思っていました(笑)。私は深く考えず勢いだけで走っちゃうタイプなので、めっちゃ細かくフィードバックしてもらったし、詰めが甘い部分をビシバシ指摘してもらいましたね。

UNIDGEは、20代でやってきた私のキャリアの全てが活かせる事業

しんどかったことは?

渡邉:
1番は現業であるINITIALとの兼務ですね。勤務時間の20%を使っていいってことになっていたけど、どっちも100%やっていた感じ。バランスなんて取れなかったです。とにかくやるみたいな根性論でやりました。

でも4月末くらいにパンクしてしまったんですよ。INITIALでは営業担当なのに、受注できなくなってしまって……。千葉さん(INITIAL事業CEO)に相談し、一緒に業務の棚卸しをさせてもらいました。UNIDGEとINITIAL、それぞれどれくらい時間を使っているのかを洗い出し、INITIALは新規商談だけに絞らせてもらいました。採用や既存顧客のアップセルなどをやっていたんですが、一旦なしにしてもらって。

業務を絞ったことで受注できるようになり、現業の心配がなくなったことでthink beyondも全力でやれた感覚です。INITIALでの目標数字も達成できて、心の余裕ができました。それが6月頭くらいかな。

土成:
私は「事件」と呼んでいるんですが、最終プレゼン3週間前、現業であるインキュベーション事業部に対して、麻生さん(AlphaDrive CEO)から「MVP期も最終審査も、メンターとして全然クライアントを導けていないんじゃないか」って言われたんです。

インキュベーション事業部では、think beyondと同じような新規事業コンテストを提供しているクライアントがいるんですね。麻生さんがいろいろな最終審査に出る際、私も同席していたんですが、「起案者にもダメな部分はあるけど、メンターも悪い。『新規事業の実践論』を読み直せ」って爆弾が落ちて……。

その事件の3週間後に、自分がthink beyondで最終プレゼンをするわけです。麻生さんが認める水準まで達しなきゃ! とめちゃくちゃ焦りました。「AlphaDriveなのに、ココまでしかできていないんだ」って言われるんじゃないかって怖かったですね。最終審査当日も、麻生さんが「AlphaDriveの土成が出ます」ってプレッシャーをかけてくるし。

こんな短期間でそんなクオリティを上げられるか! って思いつつ(笑)、でもそれは言い訳になっちゃうなと。プレッシャーはすごかったけど、あのとき喝を入れてもらったおかげで、成長できたんじゃないかなと思います。

最終プレゼンの質疑応答中
嬉しかったことは?

渡邉:
つっちー(土成)が入ってくれたこと! 私、つっちーのこと大好きなんですよ。本当に尊敬しているし、コミュニケーションに全くストレスがないし。何度言ってもつっちーには全然刺さらないんだけど(笑)。

私が持っていないもの――たとえば真面目さとか確認の細かさとか、本当にたくさん持っていて、「そこまでやらないとダメだよね」っていつも気づかされるというか、勉強させてもらっているんです。

最終審査までやり切れるか本当に分からなかったけど、つっちーのおかげでここまで来ることができました。つっちーに出会えたこと、チームに加わってくれたことは本当に感謝しているし、嬉しかったです。

土成:
私たちが評価してもらえたのは、検証をしっかりやれた点が大きいなと思っています。でもこれは私1人じゃ絶対にできなかった。由佳ちゃんの顧客ネットワークがあったからこそできたと思っているので、私もすごく感謝しています。

新規事業開発はキャリア的に興味はずっとありました。ただ、「この社会課題を解決したい!」みたいなWillは自分の中になくて……それがthink beyondを通して見つかったと感じています。AlphaDriveではよく「Willは育まれるもの」と言っていますが、それを体現できた瞬間が自分にもあって。

UNIDGEは、20代でやってきた私のキャリアの全てが活かせる事業です。使命感というより、もはや運命。UBでこの事業をやるのに最も適任なのは私だと、本気で思っているんです。そういう事業に出会えて、それを実現できる機会をいただけて、本当に良かったなと。

最終審査の結果を受けて、感想を教えてください。

渡邉:
麻生さんが「やらない理由がない」って言ってくれたのは、本当にそうだよねって思っています。プロダクト開発に関しては、いろいろな人にプレゼンを見てもらう中で、フィードバックとしてもらっていたので、すぐにでもSaaSプロダクトを開発してほしかったというのは、納得感があります。ただ、もともとコンサルティングで1〜2年やって、実績をつくって型化してからSaaSをつくろうと思っていたんですよね。

土成:
正直、事業化はされると思っていました(笑)。ただ、最終審査で佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベースCo-CEO)の表情が気になったんですよ。そこ次第だなって。でもフィードバックを受けて、「いつか佐久間さんに認められるプロダクトをつくりたい!」ってスイッチを押された感覚です。

渡邉:
プレゼン前から「キーマンは佐久間さんだよね」って話していて、佐久間さんの思考に近いのは田口さん(田口 槙吾/FORCAS事業CEO)だろうってことで、プレゼンを見てもらったんです。実は佐久間さんにも最終審査前に「見てもらえませんか」ってDMしたんですけど、「当日フラットな目で見たいから」って断られちゃいました。

土成:
think beyondが終わった後、稲垣さん(稲垣 裕介/ユーザベースCo-CEO)から「プロダクト開発を楽しんでほしい」って言われたんですよ。それがずっと私の中にあります。パソナ時代に手掛けた新規事業で、労働集約型から脱却できなかった挫折を思い出させられました。

今回それの挫折を上書きするチャンス。ユーザベースグループには優秀なエンジニアもたくさんいるので、チャレンジする環境としてはすごくいいですよね。以前超えられなかった壁を、プロダクト開発という形で乗り越えるチャンスを与えてもらっているので、全力で取り組みたいと考えています。

佐久間さんの表情と、稲垣さんからのメッセージに、すごく背中を押してもらった感覚です。UBグループならではというか、AlphaDriveの仕事だけでは感じられない、貴重な経験をさせてもらいました

最終プレゼン中の土成

ユーザベースグループのアセットがあったから、私でも新規事業開発ができた

think beyondで得た1番の学びは?

渡邉:
AlphaDriveに媚びるわけじゃないけど、たしかに新規事業は誰でもできる、私でも新規事業開発できるんだって思えたのは大きかったですね。

最初はthink beyondって、自分には縁遠いことだと思っていました。私は会計知識もないし、Excelの関数も組めない。何ができるんだろうって思っていたけど、つっちーが「由佳ちゃん、新規事業開発に向いているよ」って言ってくれたことがあって、「そうなの!?」って(笑)。人それぞれ得意・不得意はあるけど、私でもできることがあるって思えたんです。

土成:
改めて社内新規事業の魅力が分かりました。私、新規事業には興味ありましたが、新卒で丸の内OLになれて、そのまま丸の内OLを楽しみ続けたいと強く思っていただけなのに(笑)。社内起業は、本当に誰にでもチャンスがあると思います。

ユーザベースグループ内のアセットがなければ、新規事業をやろうなんて思えなかったですね。直近ではエンジニアが2人加わってくれて、プロダクトをつくり始めています。自分たちだけだったら絶対できない。社内でやるからこそできるんだって、強く感じています。

UNIDGEに関わってくれている人、ユーザベース社内で100人くらいいるんじゃないかな。UBの外で2人でやっていたら、今の成果の1/100も出せていないと思います。ユーザベースでやっているからこそ、ここまで形になっているんです。社内起業は自社のアセットを使うから、事業をつくりやすいのは頭では分かっていました。でもそれを体感できたのがthink beyondなんです。

UNIDGEの事業概要と、世界をどう変えていきたいのか教えてください!

渡邉:
UNIDGEは、事業会社が協業による課題解決を自ら出来る世界を理想とした、協業促進サービスです。コンサルティングサービスと並行して、協業の業務効率化/精度向上を目的としたプロダクトを提供します。協業推進プログラムの設計をベースとした協業条件の整理から、協業候補先のソーシング、面談調整、検証実施までをサポートします。

先日つっちーと土井さんと合宿をして、ミッション・ビジョン・バリューもつくったので、ぜひ紹介させてください。

協業を通して、価値ある未来を作りたい。 ユーザベースグループとして多くの企業様の支援をする中で「想いある挑戦者」の皆様にお会いしてきました。多くの想いある挑戦者の皆様が、所属や立場を越え、複数社にまたがるイノベーションを生み出すことで、より複雑な課題解決ができると私たちは信じています。私たちはUNIDGEを通じて、人とテクノロジーの力で「協業」という選択肢を企業が当たり前にとれる世界を実現し、人や技術、企業の可能性を最大化していきます。
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あなたにとって「挑戦」とは?

渡邉:
難しい質問ですよね。私は昔から常に「今の自分が1番いい」って思えるような行動を取ろうと考えているんですね。できることをやり続けても、成長しないじゃないですか。できないことって不安だけど、それをできるようになるためには、不安な中でもやらなきゃいけない。

小学生の頃、自分のことが大嫌いだったんですよ。そんな自分を変えたくて、「こういう人であろう」っていうのをずっとやり続けてきました。たいしたキャリアも学歴もない、人に誇れることもあまりないけど、だからこそやるしかない。それが私にとっての「挑戦」です。

最終プレゼン中、思わず涙ぐむ土成

土成:
生きがいって言ったらいいのかな。今、コロナ下でどこにも行けない中、こういう挑戦をし続けていないと、生きている感じがしないんですよ。絶対につらいのは分かっているんですけど、あえて苦しい道を行きたいと思ってしまう。ドMなんですかね(笑)。

でもそれで生きた心地がする。毎日同じ生活を送っているのは、死んでいる感じがするというか。だから楽しく生きるために、挑戦する。UNIDGEでもこれからいろいろなカオスが待ち受けていると思いますが、思い切り楽しみたいと思います。

執筆・編集:筒井 智子
Uzabase Connect