ユーザベースの挑戦を記録するコーポレートマガジン
スタートアップ投資の「入り口」をつくる。「Speeda Startup Lab」が解決する3つの課題

2026/04/21

スタートアップ投資の「入り口」をつくる。「Speeda Startup Lab」が解決する3つの課題

スタートアップ投資やオープンイノベーションへの関心が高まる一方、「何から始めればいいか分からない」「相談相手がいない」という声は後を絶ちません。高額なコンサルティングや人材流出のリスクなど、その入り口には多くのハードルが存在します。こうした課題に応えるため、ユーザベース社内に「スタートアップラボ(以下「スタラボ」)」が発足しました。スタートアップ領域に特化したリサーチとコンサルティングで企業の挑戦を後押しする同組織は、どのような背景で生まれ、何を目指すのか。メンバーに話を聞きました。

酒井 駿

酒井 駿SHUN SAKAISpeeda事業 カスタマーサクセス本部長 兼Speeda Startup Lab責任者

新卒でドン・キホーテに入社。現場を経験後、戦略系部署に異動し約5年にわたりM&Aを複数件担当。その後オリエンタルランドに転職し、新規事業開発、CVC設立を主担当として...

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坂本 龍史

坂本 龍史RYUJI SAKAMOTOSpeeda事業 CRO室 Innovation Solution Promotion Team 兼 StartupLab

新卒でJAバンクへ入社。
その後不動産業界にてBtoB、BtoC向け営業を担当。
2019年にブティック系コンサルファームに転職。RPO事業の立ち上げや子会社設立...

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平川 凌

平川 凌RYO HIRAKAWASpeeda Startup Lab スタートアップアナリスト

2019年、ユーザベースのINITIAL事業(現・スピーダ スタートアップ情報リサーチ)に
インターンとして参画。スタートアップのファイナンスデータの組成や、VC/CV...

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目次

「データだけでは届かない支援がある」──スタラボ誕生の経緯

まずシンプルに、スタートアップラボ(以下「スタラボ」)とはどんな組織ですか?

酒井 駿(以下「酒井):
一言で言えば、スタートアップ領域に特化したリサーチとコンサルティングを行うチームです。これまでSpeedaのデータベースプラットフォームで、スタートアップにアクセスしたい人たちを支援してきました。

ただ、いろいろと見ていく中で、データプラットフォームだけでは解決できない課題があるなと。「ナレッジを使って、もっと踏み込んだ支援をしてほしい」という声もいただいていましたし、レポートという意味でも、たとえば「ディープテックの動向が知りたい」「M&Aの最新状況を深掘りしたい」といった特定のテーマに対して、より深い情報を求める声も増えていたんです。

スタートアップ領域にこれからアクセスしたい方には、より寄り添った支援を。すでに深く関わっている方には、リサーチした内容をレポートとしてお届けする。「スタートアップをもっと身近に、より深く知る」──それがスタラボのビジョンです。

既存のSpeedaのプレミアムサポートやカスタマーサクセス(CS)との違いは?

酒井:
プレミアムサポートは、基本的にデータベースを有効活用して、いかに最適なアウトプットをつくるかを支援するものです。一方でスタラボは、「そもそもなぜスタートアップを見たいのか」「どんな領域を知りたいのか」というところから会話を始められる。投資経験のある人間や、スタートアップをずっと見てきた人間と壁打ちができ、プロダクトの枠組みを超えられることが僕らの存在意義であり、プレミアムサポートとの一番の違いです。

なるほど。それをサービスラインナップではなく「組織」にしたのはなぜ?

酒井:
解決してほしい課題やペインが固定化されたものではないと思っているんです。サービスメニューとして「こういうサービスです」と固定してしまうよりも、組織化してお客様のニーズに合わせて柔軟にサービスをつくっていけるほうがいいんじゃないかなと。

お客様が抱える課題やペインは、固定されたものではないと思っているんです。「このサービスを使ってください」と型を決めてしまうより、組織として柔軟にサービスをつくり続けられるほうが、より多くのお客様の役に立てると考えました。

Speeda 酒井駿
酒井さんがこの領域にめちゃくちゃWillがあるって聞きましたが、なぜなんですか?

酒井:
もともとスタートアップ投資をしていた側の人間で、CSの中でも一番踏み込んだ対応をしていたという自負があります。「もう少し踏み込んだ支援ができるといいな」とずっと思っていたんですよね。

平川 凌(以下「平川」):
実はスタラボの前身として、「スタートアップシンクタンク」というプロジェクトチームがあったんです。社内でスタートアップ領域をちゃんとやっていかなければという思いがあり、CSとの連携が不可欠だったので、「誰と一緒にやるか?」という話をずっとしていました。それが酒井さんだったと。

酒井:
声をかけてもらったので、二つ返事でやりましょう! と。もともとやりたいと思っていたし、何回かコンサルメニューを考えてはいたんです。ただコンサルだけだと自分の時間の切り売りになるし、レポートだけだとビジネスとして組織を拡大していくのが難しい。シンクタンク的なリサーチとコンサルティング、両方合わせることで組織として成立するのではと考えました。

平川:
もうひとつ補足すると、今後のデータフィード(※)事業につなげるために、新しいデータの収集・拡充を模索するというミッションもあります。スタラボはその実験の場でもあるんです。

坂本 龍史(以下「坂本」):
僕は酒井さんに一緒にやろうと声を掛けてもらいました。もともと旧INITIAL(現在はSpeeda スタートアップ情報リサーチに名称変更)に入社した人間なので、この業界への思いは強いんです。迷わずやりたいと答えました。

データフィード事業:
Speedaデータソリューションとして、Speedaの各種データをクラウドストレージ連携やAPI連携といった形で顧客データ基盤に連携するデータフィードサービスを展開中です。
参考:Speeda AI Agent、新たにAgent-to-Agent(A2A)の提供を開始。データソリューションの提供を加速

表に見えているメンバー以外にも、関わっている人がいると聞きました。

酒井:
「フェロー」のような形で、スタートアップ領域に知見や経験、思いのある人たちがスタラボに関わっています。旧INITIALのメンバーがほぼ集まっている状態で、デザインチームやUB Datatechのメンバーにも、レポート制作やデータ面で協力してもらっていますね。

「もっと身近に、より深く」を実現する3つの柱

スタラボの提供価値を整理すると?

酒井:
大きく3つの柱があります。「有償レポート」「コンサルティング」、そして「新しいデータの収集・拡充」。コンサルティングでは、スタートアップ領域に参入したい事業会社の方と対話しながら支援します。レポートでは、すでに関わっている方に向けて、より深い情報をお届けする。そしてレポートをつくる過程で「こんな分析もほしい」というニーズが生まれるので、それをデータとして蓄積し、プロダクトに還元していく。この3つは全部つながっているんです。

既存の資金調達レポートとの違いは?

酒井:
資金調達レポートは、全体感と動向を定点観測するためのもので、広く浅く知るためのものです。たとえるなら、外国の方が来日するときの「日本観光ガイド」のようなイメージ。一方でスタラボがやりたいのは「東京観光」や「浅草観光」のような、ピンポイントに深く踏み込んだ情報の提供です。

昨年は上場維持基準が100億円に変更になる情報も出ましたが、それによって市場がどう変わるのかを、有識者へのインタビューも含めて平川が作成し、レポートとして提供しました。

平川:
スタートアップ投資経験の長い方はデータを見て感覚的に先を読めますが、経験の浅い方にとっては「データが何を意味しているのか」を読み解くこと自体がハードルになる。そうした方がより正確にデータを理解し、次のアクションに踏み出せるよう、テーマ別に整理したレポートを届けたいと考えています。

スタートアップアナリスト平川凌
ユーザベースは2028年までのビジョンとして「アジアNo.1の経済情報インフラになる」を掲げていますが、その中でスタラボの位置づけは?

酒井:
イノベーション情報のアジアNo.1を、目指して行こうと考えています。スタートアップ・イノベーション情報という括りで見れば、日本ではすでにトップTierを走っている自負があります。データもほぼ自社組成なので自由度も高い。まずは日本でのNo.1を盤石にしたうえで、M&Aなどの戦略とも連携しながら、アジア全体へと情報を広げていきたいと思っています。

中立だから言える。スタートアップ投資の「壁打ち相手」

実際の相談って、どれぐらいふわっとした状態で来るんですか?

坂本:
かなりふわっとしていることもありますよ(笑)。「うちのCVCってどう思います?」とか、「ファンドの管理報酬が大きくなって使い道に困っている」とか。社内の経営陣にも相談しにくいし、VCにも聞けない、スタートアップ側にも聞けない。行き場のない相談が、実は一番多いんです。

中立の立場だからこそ言えることがあると。

坂本:
そうですね。たとえば「VCへの追加出資をすべきか」という相談には、まず「そもそも何がしたいんですか」というところから聞きます。他社の情報や業界動向も加味して、改めてなぜ出資すべきなのか理想と現実のギャップを整理していく。VCでもスタートアップでもない第三者だからこそできる相談です。

コンサルティングとしては、どこまで伴走するイメージですか?

坂本:
投資助言にあたることはできませんが、スタートアップ投資の目的の整理から入って、投資すべき領域の提示、該当するスタートアップの整理、連携シナリオの提案までは対応します。接点をつくりたいときに僕たちがつなぐこともありますし、「こういう連絡の仕方がいいですよ」といった助言もします。

酒井:
実はこの「連絡の仕方」が、意外と大きなハードルなんですよ。事業会社の経営企画の方が、スタートアップのコーポレートサイトから問い合わせフォームで連絡したことなんてほとんどないし、創業者のSNSにDMを送るという発想自体がない。

対談風景

平川:
VCのキャピタリストにとっては、SNSでDMを送ってアポを取るのは日常的なことです。でも事業会社の方にその話をすると「そんな方法があるんですね!」と驚かれる。スタートアップ界隈と事業会社では、当たり前の前提がそもそも違う。だからこそ、その橋渡しが支援の第一歩になるんです。

事業会社がスタートアップ連携でつまずく、構造的な理由

事業会社ならではの難しさって他にもありますか?

平川:
事業会社はメインの業務を持ちながら兼務でスタートアップ投資もやる、というケースが多いんです。「やってみよう」という号令はあっても、実際には想像以上の工数がかかる。しかも始めた後、経営陣のサポートが薄くなりがちで、担当者が孤立してしまうことも少なくありません。

坂本:
評価の問題もありますよね。たとえば投資先スタートアップのリターンが出たとしても、CVC担当者の給料はそこまで変わらないとか。

平川:
大企業ではローテーション人事もまだ根強く残っていて、3〜4年で別部署に異動することも珍しくありません。せっかくスタートアップ投資のノウハウ・経験を積んでも、次の部署ではその経験が活かせない。そうなると、経験を素直に活かせる場所に転職してしまう人も多いんです。

坂本:
CVCの立ち上げで業界での知名度が上がった人材が、本体の経営企画に異動するケースもあります。CVCの代表でさえ、ローテーションの対象になる。そういう構造がある限り、組織としてのノウハウ蓄積が難しいんですよね。

Speeda 坂本龍史
だからこそ、スタラボのような外部の支援が必要だと。

坂本:
まさにそうです。これまでスタートアップ投資を始めようとしたら、高額なコンサルに設計してもらうか、VCに出資してノウハウをもらうか、VCに出向して学ぶか。どれも時間とお金がかかります。しかもVCに出向させた社員が戻らずに転職してしまうことも多い。

戻ったとしても、周囲との会話の次元が違って、スタートアップとは何かという説明からやり直さなければならないこともある。「やってみよう」という号令はあっても、気軽に始める手段がなかった。そこの受け皿として、スタラボをつくりました。

「スタートアップの関係人口を増やす」──スタラボが見据える未来

これからどんな実験をしていきたいですか?

酒井:
独自レポートを単体で販売すること自体、Speedaとしても新しい試みなので、まずそこを軌道に乗せたい。レポートをつくる過程で生まれるデータをプロダクトに還元していくのも大事ですし、将来的にはIPO周りのデータなど、特定のデータセットをショットで買えるような形も模索したいですね。

スタートアップ界隈にいる人たちが本当に欲しいものって何なんだろう? というところを改めて定義し直して、サービスとしてラインナップしていく。それが「ラボ」という名前にした意味でもあります。

どんな状態の人にスタラボの門を叩いてほしいですか?

坂本:
これからスタートアップ投資や連携を始めようとしている方はもちろん、すでに始めているけれど壁にぶつかっている方も歓迎です。「うちのCVCどう思う?」レベルのふわっとした相談でも全然構いません。一緒に方向性を整理するところから始められますから。

最後に、スタラボとして大切にしていることを教えてください。

坂本:
この業界が盛り上がって、挑戦する会社が1社でも増えることで、スタートアップも大企業もうれしい。その循環が巡って経済がもっと豊かになる。そういう世界の入り口をつくりたいと思って、僕はこの仕事をしています。

酒井:
僕らは、別にスタートアップ投資をする人を増やしたいわけじゃないんです。相談した結果、「今はやらない」という意思決定もあっていい。でも、そう決めた人も、スタートアップの動きを"自分ごと"として捉えられるようになっている。スタートアップに関与する"関係人口"を増やす──それが、僕らのやることなのかなと思っています。

集合写真

編集後記

酒井からスタラボの記事化について相談をされたとき、「また新しい組織をつくるの? 何で?」とちょっとだけ思ってしまったんですが、インタビューしてみて納得。「ラボ」という名が付いているのもいいなと思いました(ちょっと手前味噌ですが)。何よりインタビュー中の3人が本当に楽しそうで、スタラボがどんな風にお客様の役に立てるのか、その未来にワクワクしていることが伝わってきました!

撮影:金子 華子 / 編集:筒井 智子
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