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「柔の強さ」で戦う──異業種出身の新リーダーが語る、中国事業への覚悟

「柔の強さ」で戦う──異業種出身の新リーダーが語る、中国事業への覚悟

新たに中国拠点のリージョナルマネージャーに就任した大西佑徳。総合商社からキャリアをスタートし、中国の不動産事業で活躍。その後ユーザベースへ転職し、わずか1年あまりで、中国拠点の未来を託されることになりました。前任者からバトンを受け継ぐプレッシャーの中で、彼は何を思い、どこへ向かおうとしているのか。これまでのキャリア、価値観、そして新リーダーとしての挑戦について、率直な言葉で語ってもらいました。

大西 佑徳

大西 佑徳YUTOKU ONISHISpeeda事業 China Regional Manager

新卒時より総合商社にて11年半、主に大中華圏における不動産・物流ビジネスの最前線で営業・投資・事業開発等を経験。その後、中国にてユーザーベースに参画し、カスタマーサクセスや日...

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目次

「アジアNo.1の経済情報インフラになる」──新リーダーとして、まず地に足をつける

まずは、今回のリーダー就任について聞かせてください。中国事業全体のリーダーに就任されたという理解で合っていますか?

実はそこが少し複雑でして。これまでの「中国事業」という括りは、形としてはなくなるんです。

これまでは、ひとりのトップのもと、HRからマーケティング、セールスまで、Greater Chinaエリアのすべてを管轄する体制でした。それが今回、グローバルで「One Speeda」としてNo.1を取りにいくために、一旦解体されるイメージです。たとえば、プロダクトは日本のチームが見る、というように、各機能が縦割りの組織になります。

その中で僕は「リージョナルマネージャー」という立場を担います。もちろん「Speeda China」はありますし、現地で提供しているサービスは強化し続けますが、組織のあり方が大きく変わる、ということですね。

Speeda China Regional Manager 大西 佑徳

リーダーへの就任は2025年の秋頃から徐々に準備を始めました。とはいえ、対顧客に関しては、契約当時の担当者の方はもう帰任されていることが多く、現在のご担当者様とはアカウントマネージャーが普段からやり取りしているので、属人的な引き継ぎはそこまで多くありませんでした。

中国チームは今、どんな雰囲気ですか?

実は入社1年以内の人が4割くらいいるんです。中国の労働市場は流動性が高いので、3年もいればベテランという世界。リーダーが僕に変わり、かつそれぞれのチーム組織体制も変更したので、それに対する短期的な不安を感じているメンバーもいましたが、進むべき方向性が少しずつ分かってきてそれぞれ前に進んでいます。

一方で、中国のコンテンツがグローバルに解放されることへの期待感や実感を持っているメンバーも多いんじゃないでしょうか。自分の仕事の価値がもっと高まるんじゃないか、と。特に昨年末に「アジアNo.1の経済情報インフラになる」というVISION2028が発表されたこともあって、ワクワクとドキドキが入り混じっている感じですね。

僕自身もVISION2028が発表されたときは、大きな変換点であることを理解しました。「(2028年までに)アジアNo.1の経済情報インフラになる」に向けて実際に複数のM&Aが実行されてますし、事業戦略として展開する新たなサービス等も誕生しています。ただ僕個人としては中華圏の事業責任者としてローカル軸でただただ「できることをやる」がこのVISION2028を達成する過程での貢献になると思っています。

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個性がぶつかり合うチーム。ラグビーで感じた魅力との共通点

大西さん自身は、ユーザベースのカルチャーをどう感じていますか?

学生時代にラグビーをやっていたのですが、ユーザベースのカルチャーに近しいものを感じています。ラグビーって、15人という球技の中で最多の人数でやるスポーツで、ポジションごとに体型も性格も、キャラクターが全然違うんです。でも、それぞれがチームのために機能している。

ユーザベースも、特に中国オフィスは個性が強いメンバーが多い。まさに「異能だらけ(※)」です。でも、そこがラグビーと通じるというか。自分の得意な部分を活かすフィールドがあって、みんながオーナーシップを持って仕事をしている。みんな能力は高いし、自分の意見をしっかり持っている。入社したときは、その仕事のしやすさに本当に驚きました。

ユーザベースが大切にしているThe 7 Valuesに「異能は才能」がある

また、総合商社出身の僕にとってIT業界のスピード感、たとえば「勝てると思ったサービスが一瞬で優位性を失う」みたいな世界観は、最初は理解が難しかった。でも、ユーザベースに来て、ようやく分かってきた部分があります。

それは、プロダクト主導で一気に市場を書き換えるスピード、競争優位が数年でひっくり返るスピード、 AIなどの新規カテゴリが一気に立ち上がるスピードなど、どのスピードをとっても圧倒的です。優位性の高いとされていたプロダクトやサービスの市場における価値認識が、あっという間に変わって全く異なる市場形勢になるという怖さです。

マーケティング、営業、カスタマーサクセス、アナリスト、開発チームすべての組織が連動して、「意思決定 → 実行 → 市場反応 → 修正」のサイクルをどれだけ短く回すかが重要になってきます。営業ではなくプロダクト自体が成長を生むモデルであるPLG(Product-Led Growth)という言葉がありますが、プロダクトが強いことが営業が強いことよりも優先されるべきで、絶対条件であること、そしてプロダクトが強いという状態は数か月や半年等の短期スパンで更新され続けることが重要であり難しい部分でもありますね。

Speeda China Regional Manager 大西 佑徳
前職は伊藤忠商事とのことですが、なぜユーザベースを選んだのでしょうか。

実は、社会人になってからユーザベースとの接点は4回あったんです。

最初は2017年。当時、前職の伊藤忠で不動産投資の仕事をしていて、台湾のランドマークのM&A案件を担当していました。そのとき、台湾のマクロ情報を調べるのに「Speedaとか使うといいよ」と先輩に言われて。使ってみたら、魔法のようにデータが出てきて「これは使える!」と感動したのが最初の出会いです。

2回目は2019年。一度目の中国駐在から帰任して、Uzabase Chinaからヘッドハンティングを受けたんです。結局、そのときは選考には進まなかったんですが、カジュアル面談で話した方が、僕の人となりや考え方をすごく聞いてくれて。「素敵な会社だな」と、人に興味を持ちました。

3回目は、2回目の駐在で上海に行ったとき。今度は顧客として、部署へのSpeeda導入を検討する商談での接点でした。

そして4回目が、MBAスクールのキャンパスで安斎さん(元Uzabase Chinaリーダー)と再会したときです。すごく熱心に誘ってくれて、半年後くらいに入社を決めました。プロダクトと人が交互に来て、最後はまた人だった、という感じですね。

外資コンサルなど、待遇面で言えばもっと良い選択肢もあったかと思います。不安や、ご家族の反対はありませんでしたか?

正直、前職にそのままいた方が、給与や駐在員としての手当を考えれば、日本で外資コンサルに行くよりも良かったと思います。

でも、それ以上に「中国で頑張る日系企業を支援したい」という、自分自身のミッションを達成できる場所はどこだろう、と考えました。中国経済が厳しい中で、僕自身も中国の不動産事業で、恒大集団のニュース(※)で騒がれたような状況の当事者でしたから。その経験が逆に、このミッションへの思いを強くしたんです。

中国の国内総生産(GDP)の2%にあたる約2兆元もの負債を抱えて経営危機に陥った不動産大手企業

一方で、自身のキャリアに対する考え方や自分の人生へのオーナーシップを持つことの大切さを再認識させてくれた”中国市場”で恩返ししたいという気持ちに変わっていきました。

ユーザベースでなら、もっと人と人とがぶつかり合えるような、手触り感のあるビジネスができるんじゃないか。そう思って入社を決めました。金銭面はあまり考えなかったですね。家族にはもちろん説明しましたが、最後は「じゃあ、頑張れば」と。子どもも含め、家族全員が中国でお互いにオーナーシップを持ってやっています。

出る杭は打たれる日本、歓迎される中国。僕がここにいる理由

そもそも、中国という市場には最初から興味があったのですか?

いえ、まったく(笑)。大学で中国語の単位を落としたくらい、不向きだと思っていました。伊藤忠で配属された部署がたまたま中国を担当していて、会社の研修制度で天津に語学研修に行ったあたりから、どんどん中国の色が付いていった感じです。行ってみて気づいたんです。自分は、こっちの方が合っているんだな、と。

日本の社会って、良くも悪くも「出る杭は打たれる」みたいなところがあるじゃないですか。でも中国は、出る杭にならないと目立てないし、そのまま終わってしまう。みんなアグレッシブで成長意欲が強くて、失敗がOKなんです。「とにかくやってみよう」というスピード感が、僕には心地よかった。

日系企業の一員として行っていたけれど、現地のファンドGP(General Partner)の人たちと働く中で、自分の居場所はこっちにあると感じました。同世代のビジネスパートナーは本当に優秀で、「このままじゃ勝てない」と危機感を覚えてMBAに行ったくらいです。この厳しい市場でしのぎを削ることが、自分の成長につながると思いました。

Speeda China Regional Manager 大西 佑徳
成長したいという気持ちが昔から強かったんですか?

学生時代の受験も就職も、ナンバーワンを取った記憶がなくて。なんとなく上手くいったり、なんとなく失敗したり。どこか「やりきった感」がなかったんです。だからこそ、仕事ではやりきった感を大切にしてます。次のステップではビジネスパーソンとしてもっと成長したい、という思いが強いのだと思います。

中国で「失敗してもいいんだ」と思えるようになったきっかけは?

前職時代、コロナ禍の中国で、本当に大きな案件が外部要因などもあり頓挫してしまった経験があるんです。その経験があまりに大きすぎて、もう何でもできるな、と。ある意味、達観したというか。

それからは、意思決定に恐怖を感じなくなりました。自分が正しいと信じて進むなら、後悔はしない。もちろん、客観的に見れば間違っていることもあるかもしれないけれど、社会のため、関わる人のためになるなら、やりきれる。そんな自信がついていった感じですね。

「異能だらけ」のチームで、次世代ローカルリーダーを育てる

リーダーになって約4ヵ月、現在の手応えと今後どんな組織をつくっていきたいか教えてください。

メンバー1人ひとりのオーナーシップの高さを、もっとクロスボーダーに作用させていきたいです。今回の体制変更で縦割りになったからこそ、機能や地域の壁を越えたコラボレーションが生まれるような雰囲気づくりや制度設計に注力したいですね。

実際に、今年になってから社内でも東南アジアや日本チームとの連携も以前より具体的に増えてます。たとえば中国系企業がASEAN諸国への進出を加速させており、現地での日系企業ビジネス環境にも変化を与えている等、中国市場が単一市場として語るには難しい時代に突入しており、アジア・グローバル全体で俯瞰してお客様の事業戦略の意思決定をお手伝いする必要性が高まっている背景があります。

そして、中国拠点がグローバルの中で「強い組織だ」と認識され続けることが重要です。単なる売上だけでなく、人材アセットがユーザベース全体に貢献している状態をつくりたい。メンバー1人ひとりが、良い意味でのプライドとオーナーシップを持って仕事に取り組める。そんなチームが理想です。

その過程で次世代のローカルリーダーを育成すること、彼らに現地の意思決定のバトンを託すことが自分の目の前のゴールだと思ってます。

プレッシャーも大きいと思いますが、それ以上にワクワクしているように見えます。

プレッシャーはあります。でも、それ以上に「やらなきゃいけない」という気持ちが強いです。日系企業だけでなく、グローバルに展開する企業を支援する。その舵取りを任せてもらえるのは、ワクワクしています。

Speeda China Regional Manager 大西 佑徳
その自信はどこから来るのでしょうか。ご自身の強みをどう分析していますか?

メンタルは強い方だと思います。そして、その強さは「柔軟性」を伴っている。僕はそう考えています。

他人って、自分とは全員違うじゃないですか。だから、一緒に仕事をする以上、まずその人の良いところを探すことを大事にしています。特にユーザベースは、自分よりすごい部分を持っている人がたくさんいる。1人では仕事はできないから、お互いの良いところを掛け合わせて、どうすれば良い作用が生まれるかを常に考えています。

これからは、ユーザベース全体の方針を中国ローカルの文脈に置き換えて、機能の壁を越えて伝えていくことが、リージョナルマネージャーとしての僕の役目だと思っています。そのために、この「柔軟性」という強みを活かしていきたいですね。

アジアで勝つ鍵は「人の力」。グローバル競争に挑むセールス戦略

今、ユーザベース全体に対して、課題に感じていることはありますか?

会社が大きくなる中で、少し「大企業っぽさ」を感じる瞬間はあります。それは仕方のない部分もあるけれど、「ユーザベースらしさ」はなくしてほしくない。大企業から移ってきた身としては、そう強く思います。

あとは、セールスの力ですね。生成AIやAIエージェントなど、SaaSの業界を取り巻く外部環境が急速に変化してます。ユーザベースとしてソフトウェアを売るにしてもデータを売るにしても、ブルームバーグやS&Pのような巨人と戦っていく上で、コアデータの強さ・ユニークさ、プロダクトの魅力はもちろんですが、それと同じくらい「人」の力が重要になる。無形商材だからこそ、その価値を伝えるセールスパーソンのスキルを高めていく必要がある。

グローバル、特にアジアで勝負していく上で、この「セールスの力」をどう柔軟かつ速やかに強化していくのか。そこは課題でもあり、僕自身が背中を見せながら貢献していかなければならない部分だと考えています。

最後に、Uzabase Chinaの事業ポテンシャルと、ユーザベースの未来について、大西さんの視点を聞かせてください。

中国は、情報のバリアが高い国です。だからこそ、現地のリアルな情報を届けられる僕たちの価値は、ますます高まっていくはずです。ユーザベースアジアNo.1を目指す上で重要なアセットのひとつとしてパワーアップしていきたいと思います。

2026年3月に開催された中国オフィスの全社パーティー

2026年3月に開催された中国オフィス全社パーティー

編集後記

大西さんとは取材当日が初対面。社内向けの自己紹介投稿でラグビー経験者&総合商社出身とあったので、もっと押しの強いタイプを想像していました。実際にインタビューしてみると、穏やかで言葉を丁寧に選んで話す方で、いい意味で裏切られました。「剛」ではなく「柔」──まさに大西さんの言葉通りだなと。

5年半ほど前に上海オフィスを取材したときから、チームも事業も目指す景色も大きく変わったと思います。VISION2028に向けて、中国オフィスの未来にワクワクしたし、またいつか取材に行きたいなと思いました。

撮影:落合 直哉/編集:筒井 智子
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