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「月間8,000万再生」を生み出した新卒の軸探し。2ヵ月で部署消滅からの逆転劇

「月間8,000万再生」を生み出した新卒の軸探し。2ヵ月で部署消滅からの逆転劇

NewsPicks Studiosに所属する長田千弘。大学在学中に個人で動画制作を行い、大きな収益を上げていた彼は、就職活動を経てNewsPicksへ入社しました。しかし、入社後わずか2ヵ月で所属事業部がなくなるという、波乱の社会人生活の幕開けを経験します。

現在は、月間8,000万再生を超えるショートドラマ『しまうま劇場』のマーケティングやZ世代の消費トレンドを分析する番組『newZnew』などを担当し、2年目にしてNewsPicks New Schoolの講師にも抜擢されるなど、目覚ましい活躍を見せています。「かっこいい動画」に憧れて入社した彼が、いかにして自身の「軸」を見つけ、数々の挑戦を成功させてきたのか。その原動力と、彼が見据える未来に迫ります。

長田 千弘

長田 千弘CHIHIRO OSADANewsPicks Studios Marketing Team

武蔵野大学文学部卒。2023年よりAlphaDriveにて動画制作インターンとしてスタートし、2024年に新卒でユーザベースに入社。NewsPicks Studiosではテク...

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目次

きっかけはYouTube。「かっこいい」に惹かれてユーザベースの世界へ

長田さんがユーザベースと出会ったきっかけを教えてください。

大学2年生のときです。ゼミのスライドをつくらなければならなくて、YouTubeで「スライド デザイン」と検索したのが始まりでした。

そうしたら、NewsPicksの「実践仕事術」という番組で、トヨマネさんがスライド作成術について解説している動画が出てきたんです。それを見て「これ、めっちゃいいな!」と思って。すぐに登録して、有料会員に登録もしました。

第一印象は、とにかく「めっちゃ役に立つな」と。そこから特集記事も読むようになったんですが、ちょうど円安のタイミングで組まれていたドル円相場の記事がすごく面白くて。

さらに他のコンテンツも見ていくと、『THE UPDATE』や『2 Sides』といった動画番組があって、そのクリエイティブが本当にかっこよかったんです。ちょうどインターンを探していた時期だったので、「ここで働きたい!」と思って応募ボタンを押しました。

インターンはNewsPicks Studios(NPS)で?

当時はNPSが募集をしていなかったので、ユーザベースグループ(当時)のAlphaDriveの動画制作チームでインターンすることになりました。僕は大学時代、個人事業主としてYouTubeの運営や動画の企画・編集などをやっていて。ただ、撮影経験はなかったので、かっこいい動画をつくっている会社で、未経験でも撮影インターンができるなんて、最高だと思いました。

もともと「起業したい」「新規事業をやりたい」という思いが強かったので、他にもメガベンチャーを中心に就職活動をしましたが、最終的にユーザベースを選びました。

NewsPicks長田千弘
起業を考えるなら、多くの起業家を輩出している企業も選択肢にあったかと思いますが、最終的にユーザベースを選んだ決め手は何だったのでしょうか?

麻生さん(AlphaDrive CEO 麻生要一)との最終面接が大きかったです。実は学生時代、先ほど話した個人事業で、ありがたいことに結構な金額を稼いでいたんです。

最終面接で「学生時代に稼いだ額の10倍は稼いでみたいです!」という話をしたら、麻生さんが「この会社に入ったら1年で3億稼げるよ」と言ってくれて。ちょうど配信系の新規事業部が立ち上がるタイミングで、僕もそのチームに所属することが決まっていたので、「この会社なら1年で3億の売上をつくれるんだ!」と思って入社を決めました。ただ、その新規事業部、入社することが決まって2ヵ月後になくなってしまったんですけど(苦笑)。

えっ!? てなりますよね。

はい。事業がカーブアウトすることになって。当時の心境は……もう、よくわからなかったですね。「え、どういうこと?」「僕が入社する会社はどこになるの?」って。でも、もともとNewsPicksが好きでしたし、動画もつくりたかったので、「NewsPicksの動画をつくれるなら頑張ろう!」と気持ちを切り替えました。

大きな環境の変化があったんですね。入社前後で、他にギャップを感じたことはありましたか?

想像以上に少数精鋭だったことですね。もっとテレビ局みたいに大勢のスタッフがいるのかと思っていたら、全然違いました。でも、だからこそ1人で高いクオリティのものを作り上げるシステムがすごいなと。

あとは、本当に自由だなと感じました。たとえば、配信チームは野瀬さん(野瀬 弘一/NewsPicks Studios Technical Unitリーダー)の提案で、新スタジオの竣工や社内の配信収録を内製化し社内インフラとなることで、どんどん事業が大きくなっていったんです。それを見て、「個人の力でこんなに会社って変えられるんだ」と衝撃を受けました。自分もいつか、あんなふうになりたいなと思いました。

数字が伸びるのが、一番嬉しい。月間8,000万再生を支える徹底的なインプット

現在はマーケティングチームに所属しているとのことですが、どういった仕事を担当しているんですか?

主に、ショートドラマ『しまうま劇場』や、新しいグルメ系のショートドラマ『しまうま食堂』のコンテンツマーケティング、 Z世代の消費行動を分析する番組『newZnew』の制作です。どうすれば数字を伸ばせるか、戦略を考えて実行するのが主な役割ですね。

自分が考えた戦略がハマって、数字が一気に伸びた時は本当に嬉しいし、やりがいを感じます。もちろん、ファンイベントなどでユーザーの方から直接「面白かったです!」と言っていただけたり、出演してくれた俳優さんたちに喜んでもらえたりするのも嬉しいです。でも、やっぱり僕にとっては、目に見えて成果がわかる「数字」が伸びることが一番のやりがいです。

大学生の時からずっとYouTubeで「いかに数字を伸ばすか」を考えてきたので、その延長線上にある感覚です。今もそれがすごく楽しいですね。

NewsPicks長田千弘
数字を伸ばすために、普段からインプットもされているんですか?

めちゃくちゃしています。YouTubeとTikTok、Instagramは毎日3時間くらい見ていますね(笑)。ただ楽しんで見るだけじゃなくて、「このフレームワークはどうなっているんだろう」「『しまうま劇場』『newZnew』に落とし込むならどうすればいいかな」と考えながら見ています。インプットして、言語化して、分析して、自分の施策に活かす

たとえば、「今こういう人が人気なんだな。じゃあ、次の企画で提案してみようかな」とか。その繰り返しです。そうやって試行錯誤した結果、『しまうま劇場』は月間8,000万回再生、累計では1年間で5億回再生されるまでになりました。

成功の秘訣は「ポジショニング」。競合のいない場所で戦う

『しまうま劇場』がそこまで成功した要因を、どう分析していますか?

一言で言うと「ポジショニング」ですね。

今、ショートドラマの主な視聴者層は10代から20代の女性なんです。だから、多くの人気アカウントは、学園モノやバイト先での恋愛モノといった、その層にウケるコンテンツをつくっています。そこはもう激戦区で。

一方、 『しまうま劇場』を制作するNewsPicksがターゲットにしているのは40代。そうなると、同じ土俵では戦えません。そこで僕たちは、30〜40代向けのコンテンツをつくることにしたんです。

ターゲットをずらしたことで、自動的に競合がいない状態をつくれました。30〜40代を狙ってショートドラマをつくっているアカウントは、今も『しまうま劇場』くらいしかありません。ショートドラマという伸びているフォーマットの中で、競合がいないポジションを取れたことが最大の勝因だと思います。

NewsPicks長田千弘
30〜40代にはどんなテーマが響くと考えたのですか?

ショートドラマで再生数を伸ばすための一つのセオリーに、「負の共感」を誘うというものがあります。日常の嫌なことやストレスを映像化して、「あー、これよくあるわ」と共感してもらうんです。

じゃあ、30〜40代の日常にある「負」は何か。それは家庭のこと、キャリアのことだろうと仮説を立てました。そこで『しまうま劇場』では、家庭内のちょっとした嫌なことをテーマにしたドラマをいくつかテストで出してみたところ、これが一番数字が伸びたんです。

プラットフォームも意識しましたか? TikTokは若い世代が多いイメージですが。

そうですね。なので、『しまうま劇場』が一番伸びたのはYouTubeショートでした。YouTubeショートはユーザーの年齢層がどんどん広がっていて、今では60代の方も見てくれています。プラットフォームごとに視聴者層が違うので、そこを見極めることも重要でしたね。

「軸は何なの?」働き詰めた半年間の葛藤と、見つけた道

今の仕事は本当に楽しそうですが、これまで失敗した経験や、つらかったことはありますか?

めちゃくちゃあります。NPSに異動した当初が一番きつかったですね。周りはすごい人たちばかりで、「このまま普通に働いていても、どうあがいても活躍できる気がしない……」と焦りを感じていました。

その焦りから、どう行動したんですか?

当時の上長から「まずは自分の名前と何ができるかを示さなきゃいけない」とアドバイスをもらって、とにかくできることを全部やろうと決めました。もともとの配信や収録ディレクションの仕事に加えて、YouTubeのサムネイルや番組のキービジュアルのデザイン、そしてマーケティングの仕事。この3つを全部自分でやると手を挙げたんです。

もう、やるしかないと思ったんですよ。でも、3つの業務を掛け持ちするのは本当にキツくて……。でも、がむしゃらに働いている中で、周りからは「で、長田くんの軸は何なの? 決めないとね」と言われ続けるんです。

働き詰めで大変な上に、自分自身とも向き合わなければいけなかったんですね。

今思い返してもキツかったですね……。考える時間なんて、お風呂に入っているときくらいしかなくて。半年くらい、ずっと悩んでいました。結局、自分ひとりでは答えが出せなくて、木嵜さん(木嵜 綾奈/執行役員 NewsPicks Studios エグゼクティブプロデューサー)や野瀬さん、同期など、本当にいろいろな人に相談しました。

NewsPicks長田千弘

相談を重ねる中で、「まずは1本に絞ろう」という結論に至りました。そして、3つの仕事の中で当時最も成果が出ていたのがマーケティングだったんです。「マーケティングで行きます」と決めて。それでようやく、今年(2025年)の9月から正式にマーケティングチームに異動することができました。

悩んだ半年間はつらかったと思いますが、その経験があったからこそ、今がある。

本当にそう思います。あのとき、がむしゃらに挑戦してよかったです!

挑戦したことが、全部プラスに働いた。だから「迷ったら挑戦」する

ユーザベースのThe 7 Valuesの中で、一番好きなものは何ですか?

「迷ったら挑戦する道を選ぶ」ですね。

これまで自分が挑戦してきたことが、全部プラスに働いてきたからです。さっきお話しした、デザインもマーケティングも全部やろうと挑戦したこと。あれは本当につらかったですけど、結果的に自分のやりたいことを見つけるきっかけになりました。挑戦させてくれるこの会社の文化も、すごくいいなと思います。

The 7 Values

その挑戦の結果、今では『しまうま食堂』の制作をほぼ僕に任せてもらえるようになりましたし、最近ではNewsPicksが提供する学びのプラットフォーム「NewsPicks NewSchool」で、ショート動画の講師として登壇する機会もいただきました。

2年目で講師とは、すごいですね!

最年少らしいです(笑)。これも、あのとき「3つやります!」と挑戦したからこそ得られたチャンスだと思っています。挑戦して、本当によかったなと。

挑戦を繰り返す中で、挑戦へのハードルも下がってきたのでは?

確かにそうかもしれません。「挑戦したら良いことだらけだった」という経験があるので、「とりあえずやってみて考えればいいじゃん!」と思えるようになりました。だから、昔に比べて迷う時間は減ったかもしれませんね。

Willは「縦型動画で、社会現象を起こす」

就活をしていた頃は「起業したい」という思いがあったとのことでしたが、その気持ちに変化はありましたか?

今はないですね。『しまうま劇場』、『しまうま食堂』はドラマの知識がゼロの状態から立ち上げた、まさに新規事業です。会社にいながら、社内起業をしているような感覚なんです。売上や数字の責任も持ち、チームをつくっていく。起業でやりたいことが全部できているので、今は独立しようとは思いません。

最後に、長田さんがユーザベースで成し遂げたいWill(意志)を教えてください。

「縦型動画で、社会現象を起こしたい」です。

僕がユーザベースを知ったきっかけが、一本の動画だったように。僕が作る動画が、誰かの行動を変えるキッカケになったら嬉しいです。でも、それだけじゃなくて、もっと大きな、社会が動くような現象を起こしたい。ただ消費されるだけの動画ではなく、動画をきっかけに社会が動く。そんなことができたら最高だなと、本気で思っています!

NewsPicks長田千弘

編集後記

「所属予定だった部署、入社することが決まって2ヵ月後になくなってしまった」「NewSchoolで講師デビューした」「月間8,000万再生を達成」など、出てくるエピソードが強すぎて、「え、それどういうこと?」と質問しまくってしまった長田くんのインタビュー、めちゃくちゃ楽しかったです!

何より、すごく楽しそうに仕事について語る姿が頼もしい! 私は動画の視聴習慣があまり無いんですが、『しまうま劇場』は楽しく見ています。まさにターゲットど真ん中なのかもしれません(笑)。

デザイン・撮影:金子 華子/編集:筒井 智子
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