スピーダで営業活動の「当たり前」を創る──CS本部が目指す世界
ユーザベースは、スピーダ・NewsPicks・Corporateというカンパニーの下に、Domain>Division(2ndライン)>Team(1stライン)という組織構造になっています
小笠原 彩菜(以下「小笠原」):
私たちSales&Marketing Division(以下「SMDiv」)のCSでは「営業活動の当たり前を創る」というビジョンを掲げています。ここでいう「営業活動の当たり前」とは、たとえば「うちの会社ってこういうところをターゲットにしてるからね」と教えられるのは当たり前だし、朝出社したらスピーダ 営業リサーチを開いて、ターゲット企業のニュースや人事異動情報を見るのが当たり前。Tier1(※)が受注できたらチームで宴会するのが当たり前。
Tier:企業規模や利用状況などの属性をもとに、ターゲット企業をセグメント化した指標。Tier1は最重要ターゲットを指す
営業活動をするときに、スピーダ 顧客企業分析やスピーダ 営業リサーチ、スピーダ 経済情報リサーチを用いて営業活動が進んでいくことが「当たり前」の世界観をつくりたいんです。
谷内 康大(以下「谷内」):
僕がユーザベースに転職したキッカケも、前職で営業の仕事がいつの間にか楽しめなくなってきたからなんですよね。もちろん自分の努力不足からなんですが、毎日ルーティンのようにとにかく提案量を稼ぐだけになってしまって……。マネジメントに限らず、現場の営業も”考えて”仕事をしないと、だんだんつまらなくなってしまうと思うんです。
スピーダはスピーダ 営業リサーチに限らず、考えや思考力に対してお客様から価値をもらうサービスだと思っていて。お客様よりも「お客様のお客様」のことを考えて、考え続けること自体を私たちもアップデートしていかないと、価値がなくなっていくと思うんです。
以前、スピーダを活用してアカウントプラン作成とディスカッションシートを作成する支援をさせていただくことがあったんですが、その際にスピーダの操作説明だけで終わらせず、お客様の「目指したい営業の理想」に繋げるワークショップを企画して満足いただけたことがありました。
その時に「谷内さんのKPIって何になるんですか? お返ししたくって」と聞かれたんです。よくよく理由を伺ってみると「プロダクトの利用料だけだと思っていたのに、こんなに壁打ちしてもらえると思っていなかった」と感謝してくださって。自分のCS支援そのものに価値を感じてもらえたのは、嬉しかったし今でもよく覚えています。

小笠原:
現在はスピーダ 顧客企業分析、スピーダ 顧客データハブ(いずれも旧FORCAS)、スピーダ 営業リサーチ(旧FORCAS Sales)、のカスタマーサクセス組織で、ゼネラルマネージャーを務めています。マネジメントしているメンバーは13〜15名。対象顧客となるのは、法人営業や営業企画、あるいはマーケティング部門ですね。
谷内:
私は小笠原さんが管掌しているSales&Marketing Divisionに所属していて、現在は大企業アカウント統括本部が担当する4つの領域のうち、通信業界、SIer、メーカーの3領域のお客様を担当しています。
仕組み化×手厚いサポートで実現する、CS本部の競合優位性
Total Addressable Market:ある市場で獲得できる可能性のある最大の市場規模。
小笠原:
業界全体として、セールスマーケティング領域のDXが進んでいるのでTAMが広がっているんです。ユーザベースの創業事業であるスピーダ 経済情報リサーチは、経営企画や投資家向けのサービスとしてスタートしました。
経営企画部門は多くて1社に10名ほどですが、セールスマーケティング領域ではユーザーとなる対象が営業部門やマーケティング部門のため、経営企画部門に比べて数倍の人数がいます。プロダクトの提供範囲が大きく広がったことで、TAMも広がったわけです。
スピーダ 営業リサーチは、マネージャー陣だけでなく部門内の営業メンバーにも使っていただくことが多いので、マーケティングより法人営業のTAMが大きいですね。
谷内:
私たちを選んでいただいている理由は、お客様の解決したい課題に合わせたオンボーディングプランをプロジェクトとして立てている点と、とにかくお客様の課題起点でUIを設計している点が大きいと考えています。UI設計に関しては、ユーザー会でプロダクトチームが直接お客様の課題をヒアリングするなど、顧客起点から始めることを徹底しています。
オンボーディングに関してお客様の課題としてよく伺うのが、サービスを導入したものの、現場の実課題に合わせて活用しきれていないという点です。私たちは予めお客様の課題をしっかりヒアリングし、それを解決するためのプランを立て、双方同意のうえで活用支援プロジェクトを進めるので、より実課題に即したサポートができているのではないかと。
小笠原:
私たちの強みは、手厚いサポートを無償で提供している点だと考えています。逆に世の中には営業・マーケティング領域のコンサルタントがたくさんいるので、お金を払って手厚いサポートを受けたいのであれば、そちらに流れると思いますね。そもそも私たちのような規模感・仕組みを整えたCS組織をこれから組成するのは、最近の人材不足の観点から見てもリスクが高いんです。
仮に他社が同じようなCS組織をつくりコンサル力をつけていこうと頑張っても、我々自身も今よりもっと成長するので、その差は埋まらないのではと自負しています。

小笠原:
型化できるかどうかを基準にしています。わかりやすいのがインサイドセールス(以下「IS」)のコール見学会ですね。「電話で何を話したらいいかわからない」という各社のISに共通する悩みに対して、型化した解を提供できるので、1対多の形でサポートします。
一方、個別にサポートするのは、型化できない悩みを抱えたお客様です。たとえば「自社の便益をうまく言語化できない」「ターゲットは決まったが、予算やそれまでの施策との相性を鑑みて、どの施策を選択すればいいかわからない」といった個社特有の悩みを抱えている方々ですね。
こうした1対1のハイタッチなサポートが必要なケースも、一定期間を経てユースケースが型化できそうなものをグルーピングして、最終的に型化できそうなものがあればしていきます。
谷内:
どの案件をグルーピングして型化していくかは、毎四半期ごとに実施している振り返り合宿(オフラインの長時間ミーティング)で決めていますね。
私の担当する大手企業のお客様だと、最初はどうしてもカスタマイズが必要になることがほとんどですが、業界のトレンドに沿って組織や戦略が似てくることも多いんです。まずはお客様と個別で取り組み、その内容を他社にも活用できるようにしていくサイクルが、チーム内で自然とできています。
THE MODEL(※)を超えた連携──マーケティング部門との協働体制
THE MODEL:SaaS企業に最適化された営業組織モデル。セールスフォース社が実践していた営業手法をもとに、福田康隆氏が体系化したもの。
小笠原:
まず、SMDivがお客様に提供するべきメニューと、CS外でお客様に提供するメニューがあるとします。基本的にCS内で完結するメニューは、オンボーディングプログラム内で学べるので、まずはNewJoinerには体系的に法人営業・マーケティング以外の知識を学んでもらいます。
それ以外では、たとえばお客様から「マーケティングのノウハウを知りたい」とご相談をいただいた際に、弊社のマーケターをお客様にお繋ぎして、弊社マーケターがお客様に直接取り組みを紹介する場を設けます。この時にNewJoinerも同席させてもらって、一緒にノウハウを学ぶことで足りない知識を補います。
お客様のオンボーディングが進んで、問い合わせが「セミナーの登壇者をどうアサインすればいいか」「セミナー配信するときに気をつけることは何か」「1回のセミナーでどれくらいリードが入ってくるのか」といったTipsのような内容になってきたら、また、マーケティングチームにお願いしてお客様にレクチャーする場に同席することを繰り返して、自分で話せる範囲を増やしていくんです。
小笠原:
NewJoinerは、自分では対処しきれないマーケティング関連の質問をお客様にされた場合、slack内のチャネルで「マーケビジットお願いします」と投稿します。そうすると私に通知が来るので、質問内容と依頼理由から判断して私からマーケターにつないでいます。

谷内:
その打ち合わせで接点を持つことができたお客様に、マーケティング部門が企画する弊社主催セミナーへの登壇を打診させていただくこともあるので、弊社のマーケターにとってもよい機会なんですよね。 実際に弊社のマーケターに相談をする中で、「そのままこの話をうちのセミナーで話してほしいな」となって登壇に至ったケースもあります。
大企業でプロジェクトを推進し社内変革に取り組むことは、私たちの想像以上にステークホルダーが多く、乗り越える壁も高いものばかりなんですよね。そういったある種の変革意識を持って戦っているお客様に、ありのままを語っていただくことそのものがコンテンツになるんです。
小笠原:
THE MODELだとCSとマーケティングは一番遠い位置にあるので、普通は連携が難しいんです。でも私たちは、CS内で対応しきれないものは即座にマーケティング部門に回答してもらう連携ルートが確立している。これは他社と比べても特徴的で、大きな優位性ではないかと思っています。
同様に、インサイドセールスや法人営業のTipsについても、お客様の課題やフェーズに合わせて、CSだけでなく現場感があるISマネージャーや営業マネージャーに直接出てきてもらう機会を設け、お客様のご相談にリアルに応えられる仕組みを作っています。
Salesforceで数値管理を徹底「項目管理の理想と現実を知ってほしい」
小笠原:
ユーザベースはCSに限らずSalesforce活用率が高いですね。特にSMDivでは、私たちのサービス自体がSalesforceと連携できることもあって、テクニカルサポートチームと連携してCS活動の中で追いたい指標をSalesforce上に項目として都度つくってもらっています。
テクニカルサポートのメンバーの技術力の高さのおかげで、活用率が高く見えているのではと思います。
他社でも数値管理をしているところはありますが、SalesforceではなくCSツールを入れている組織も多いですね。
Salesforceはデフォルトで与えられているオブジェクトの基本が商談や取引先なんですが、私たちはカスタムでCSだけが使うオブジェクトをつくれます。なので、CSツールを入れなくてもSalesforceだけで完結できるんです。これはSalesforceに詳しいテクニカルサポートメンバーのおかげですね。
小笠原:
そうなんです。入力項目を使ってオペレーションを徹底させることの難しさを、メンバーに知ってほしいというのもありますね。
お客様の課題として、たとえば「営業が営業進捗をSalesforceに入力してくれない」とご相談いただいた際に、CSは「営業が入力しやすい項目にSalesforceを変えましょう」みたいな提案をしがちなんですね。
提案するのは簡単ですが、実際のお客様のオペレーションは、まずSalesforceの管理者にアプローチして、項目をつくってもらい、その後全体にオペレーションを変更したことを周知して、入力の徹底を再度お願いしていく必要があります。
こうした一連のプロセスを自分たちも社内で経験すれば、それをお客様に実践していただくのがいかに大変なことかがわかりますよね。お客様によりよい、よりリアルな提案をするためにも、実体験として大変さを感じてほしいんです。
谷内:
そうですね。お客様の中には、社内でSalesforceを導入していることすら知らない営業担当の方もいるので、項目管理は本当に大変だと思います。理想論だけでなく現場の実態も知っていれば、お客様から味方になってもらいやすいんですよね。

谷内:
私はCSを担当する前は営業とISを両方経験したんですが、その時からSalesforceを活用した商談やリード管理を徹底する文化を経験できていることも大きいと考えています。
たとえば、「この失注商談を掘り起こす時期と理由の入力をしておいたことで、お客様が再検討するタイミングピッタリに再度商談して受注ができた」といった成功経験があるんです。こういった実体験をお話しすることで「そういうメリットを伝えると営業もやってくれそうですね」とお客様から共感してもらいやすいと感じています。
横断組織への進化がもたらす、新たな可能性と挑戦
小笠原:
CSという立場上、解約率を下げるというミッションに関してはブレずに取り組んで行かなければいけないと思っています。
中でもスピーダ 顧客企業分析は、プロダクトをリリースして8年ほど経て一定の勝ち筋は見えてきています。一方のスピーダ 営業リサーチはリリースから4年ほど経過して、インサイドセールス部門に対するPMF(※)はできてきています。
Product Market Fit:顧客のニーズや課題を満足させる製品やサービスが、適切な市場で受け入れられている状態を指す
ただし、TAMが最も大きいフィールドセールスに向けては、これから拡販を開始します。その中で、CSのリソースが足りていないという問題があって。今は解約率や解約理由についてはある程度追えていますが、継続理由までは手が回っていない状態です。
この分野に関しては伸びしろがたくさんあるので、今後しっかり取り組んで行きたいですね。
小笠原:
そうですね。2025年1月からCSはカスタマーサクセス本部として横断組織になったので、隣の組織との融合に注力していかなければいけないですね。
これまでは法人営業・マーケティングのお客様を担当していましたが、スピーダ 経済情報リサーチやスピーダ スタートアップ情報リサーチなどの情報もCSとして取り扱えるようになりました。取り扱う情報が大幅に拡大するのと同時に、組織として融合していくにはどうしたらいいか? という大きな課題もあります。
あとは、SMDivが扱っているスピーダ 営業リサーチでは出せない情報を求められ、そのデータがスピーダ 経済情報リサーチで出せる場合は、実際にスピーダ 経済情報リサーチを提案するようにしています。スピーダの全プロダクトを取り扱えるCSを育成しているところですが、立ち上がったばかりで、どんなオンボーディングプログラムがよいかも検証をする必要があります。この辺りの融合も進めていかないといけませんね。
小笠原:
お互いにプロダクトを理解して、お客様のニーズを整理するのはもちろんですが、それぞれの組織でCSが歩んできた歴史にも差異があります。私たちは小規模組織だったためにCSの型化がうまくいきましたが、スピーダ 経済情報リサーチ側は私たちの3倍の規模の組織なので、同じことが適用できるか。お互いにどう融合するかは本当に大きな課題ですね。
でも同時に、これは大きなチャンスでもあります。より幅広いソリューションを提供できるようになることで、お客様の営業活動をトータルでサポートできる。そんな未来にワクワクしています!

編集後記
実は小笠原には、旧FORCAS時代にもインタビューしたことがあります。その後、スピーダのプロダクト統合があり、記事としては出せませんでしたが、当時よりさらに進化したCSの体制を見て、ぜひ話を聞きたい! と依頼したのが今回の記事です。
小笠原も谷内も、よく一緒に飲みに行くメンバーですが、今回のインタビューで違った一面を知ることができ、個人的にもよい機会になりました!