リーダーは「半分イヤで半分チャレンジしたかった」
ユーザベースの「異能は才能」というValueが好きで入社を決めました。私は「強みも弱みも含めていろいろな才能を認め、受け入れる」という解釈をしています。「異能は才能」というValueがあるおかげで、怖がらずに弱みをオープンに話せるし、だからこそみんなが素でいられる。そういう雰囲気がいいなと思いました。
キャリアプランはまったくありませんでした。むしろ、マネジメントはやりたくないと思っていたくらいで……。なぜなら、前職で大失敗した経験があったから。入社して初めてリーダーを打診されたとき、断ったこともあったほどです。
それでもリーダーを打診してもらえたのは、プレイヤーとして結果を出していたのと、当時は人数が少なかったからだと思います。気持ちとしては、半分が「やりたくない」、もう半分が「もう1度チャレンジしたい」。最終的に「チャレンジしたい」が勝って、リーダーを引き受けました。
実はそんなに難しくないですよ。ただ、結果の出し方は人によってそれぞれで「営業数字として結果がでる」だけが良いリーダーではないと思います。
「営業数字として結果が出せる」以外のキャリアの道をつくってあげて、メンバーの成長を促す。たとえば営業として結果が出なくても、マネジメントに向いている人もいます。他にもプロジェクト推進が得意な人、育成が得意な人など、人によって得意なことが違うので、それぞれに合った役割を任せる。それが結果的に組織や事業の成長につながる。そういう道筋をつくれる人が良いリーダーなんだと思います。
「定量化と具体化をすごく大事にする人」ですかね。確かに分析が好きなので、たとえば受注率を上げたいときに、どこにボトルネックがあるか、すべてデータ化して指標を絞って実行に移すようにしているんですよね。一方で具体化も大事なので、そのデータが合ってるのか具体的な商談内容を見たり、顧客の事業内容を何百件でも見にいき、手触り感のある施策にしたりすることを大事にしています。

あとよく言われるのは「頑固」です(笑)。「自分がこの課題に対して一番考えた自負がある」と思っているときに頑固と言われる気がします。
ただ、自分の意見を通したいわけではなく、一番成功確率の高いことをしたい。もちろん、もっと良い考えやアイディアがあれば、すぐに意見を変えます。でもその成功確率を高めるために一番考えている自負があるから考えが変わりにくい。だから頑固と言われるのかもしれません。
もうひとつ、360度フィードバックで言われてすごくうれしかったのは、「海野さん、逃げないよね」です。
私のこれまでを振り返ると、大事なところで逃げてしまったという自覚があるんです。それこそ前職でマネジメントに失敗したときもそうなんですが、学生時代も受験勉強をやり切れずに志望校に合格できなかったり、部活でも手を抜いてしまったり。
成功体験の記憶というよりも、そういう記憶が鮮明に残りやすく、自分で自分のことを「逃げてしまう人間」だと思っていたんです。ユーザベースに入社したとき、「今度こそ逃げないぞ」と意識してここまできたので、「どんなに大きい課題や大変な状況があっても、逃げないよね」と言われたことは本当に嬉しかったですね。
理想を追いかける情熱こそがリーダーの条件
成し遂げたい理想やビジョンがあって、それを先頭で引っ張る人がリーダーだと思います。理想や夢を追いかけることに1番情熱を燃やしている人、というイメージですね。
組織目標と個人の目標を比較したら、私は組織の目標が大事だと思っています。自分がメンバーの立場だったとしても、私自身の成長よりもユーザベースが再上場することのほうが圧倒的に重要だと思いますね。なので、基本的には組織が目標を達成するためにはどうすればいいかを優先に考えます。
とはいえ、個人の成長があるから組織が成長します。個人の成長を促すときに意識しているのは「バッファ」をつくることだと思っています。
長くリーダーを務めていると、3ヵ月先、1年先とだんだん先まで見えるよう意識していきます。思考の時間軸が長く持てるようになるんですね。そうすると、先回りして「この辺りで失敗しそうだから、バッファを用意しておこうかな」と考えられるようになる。バッファがあることで、失敗した本人に考えてもらう時間を確保できます。
それができないと、失敗を省みることもない目標達成するだけの組織になってしまって、メンバーもリーダーもキツくなるんですよね。

先回りしてバッファをつくる、真のリーダーシップ
1stラインリーダー(※)が成長してくれたことで、未来への投資がたくさんできたことですね。当たり前ですがリーダーが成長すると、私ができないことも実現でき、組織としてやれることが増えるのだと実感しました。
たとえば、新しいプランをつくってくれたことで、今まで価値を届けられなかったお客様に届けられる体制ができたり、新しいリーダーを育ててくれたことで新任リーダーを増やす事ができたり。育成の仕組化を進めてくれたことで、その仕組みが会社全体へと波及していくことで、より大きな影響を生み出してくれました。
ユーザベースは、スピーダ・NewsPicks・Corporateというカンパニーの下に、Domain>Division(2ndライン)>Team(1stライン)という組織構造になっています
相手によってサポートの仕方を変えています。たとえば、リーダーになりたての人にはすぐに答えを教えることが多いですね。なぜなら、リーダーになりたての頃は単純に知識がないことが多いので、問題について考えること自体が難しいからです。
一方シニアリーダーには、自分で考えて答えを出してもらうようにしています。その問題に対して的確なアドバイスをもらえそうな人につないだり、考え方を伝えたりして、自分の言葉で答えを言語化できるようにサポートしますね。
そうだと嬉しいです。「このリーダーはこうするとうまくいきそうだ」という勘所はあまり外したことがないかもしれません。
リーダーで大切なのは、元気・気合い・根性です(笑)。実はこれ、ものすごく大事なんですよ。任せられた以上、最後まで逃げ出さず、責任感を持って取り組めるか。元気に声を出して、チームの士気を高められるか。結局は人間性だと思います。
この場合の「元気」は、組織をポジティブにできるかどうか? という意味です。もの静かなタイプのリーダーでも、うちに秘めた情熱がものすごい人もいますよね。その情熱で組織を前向きにできるかどうか。メンバーが失敗しても「大丈夫だよ」と声をかける。うまくいったときハイタッチできるのもポジティブ。それらを含めて「元気」です。
挫折から学んだ「頼ることの大切さ」
CROに就任したんですが、結果が出せず役割を降りたことがあります。当時は成果が出せずにパニックゾーンに入っていたし、周りから見ても「あいつ何やってんだ?」というふうに見えていたと思いますね。
うまくいかなかった原因は、結果が出ていないとき周りを信じて頼れなかったことだと振り返っています。「困っています」と声を挙げられなかった。むしろ、周囲のアドバイスが「嫌だ」と感じていました。

当時の私の考え方ではさすがにまいってしまって、会社を1週間休みました。でも1週間でリカバリーできるわけもなく……。それでも役員を降りず、もう一度頑張ってみようと思って復帰したんです。
失敗しても投げ出さず、最前線に残り続けている人たちを見てきたからですね。現在執行役員の山中さん(山中 祐輝)やスピーダCPOの西川さん(西川 翔陽)や粟野さん(粟野 勝貴/スピーダ事業 大企業アカウント統括本部所属)も、1度失敗して役割を降りた過去があります。
でも、そこから這い上がって今でも最前線を走っている。それがかっこいいなと思いました。それと先ほど話した通り、入社時に「もう逃げないぞ」と決めていたので、その思いが強かったのもありますね。
ただ、その翌年の体制変更でCROを降りることにしました。役員を降りたことで仕事の幅が狭くなって、徐々にパニックゾーンからは抜けられました。
そのときの経験を経て、自分ができないことを認められるようになったし、周りに頼れるようになりました。大きな失敗を経験することで、いい意味でプライドがなくなりましたね。
でも、ユーザベースの良いところは、失敗しても何度でもチャンスをくれること。1度役員を降りても、その1年後に川口さん(川口 荘史/上席執行役員 エキスパート事業統括)から多くのことを学ばせてもらい、再度役員を任せてもらえてすごく感謝をしています。だからこそ、メンバーにはどんどんチャレンジして失敗をしてほしいと思います。その方が成長できるし、何度でもチャンスがあるからチャレンジしないと損です。
「周りに助けられる=お前はダメだと言われている」と感じる人ってたくさんいると思うんですよ。私も「ダメだと言われてるのではない」と認めるまでは時間がかかりました。
「私も同じ失敗したよ」と伝えます。私がパニックゾーン状態だった当時、佐久間さん(佐久間 衡/元ユーザベースCo-CEO)と1on1をして救われたのが「俺のほうがもっと失敗してるよ」という言葉だったんです。あれで安心したんですよね。
それでも本人が納得いかないようなら、一旦役割の範囲を狭めます。私も実際それで救われたので、同じことをしますね。
ユーザベース成長のカギは「声を出す。量をやる。スピードを意識する」
「声を出す組織」にしたいですね。
社会人になってからサッカーにハマって、最近は週2回ほど地元の人たちとサッカーをしているんです。平均年齢は37〜38歳くらいで未経験者もいるチーム。そんなチームがこのあいだ大会に出場して、大学生のチームに勝ったんですよ。
相手チームのほうが若い。体力もあって走れる。スピード感もあり上手いんです。そんなチームになぜ勝てたかというと、声を出したからだと思っています。「声を出す」というのは指示をすることではなく、良いプレーはもちろん、ミスをしてもポジティブな声を出したり、素晴らしいプレーやゴールを決めたらハイタッチをしにいったりすることです。そうすると、みんな自信をもってプレーができるし、「あいつも頑張ってるから、俺もここ頑張る」といったポジティブな連鎖が生まれるんです。
同じようなことをバレーボール元日本代表の方も言っていて。バレーボール日本代表では一時期、試合中のハイタッチを「ムダだから」という理由で禁止したことがあったそうなんです。そうしたら、勝てなくなってしまった。そこでハイタッチを解禁したら、また勝てるようになったみたいです。ハイタッチという行為に何の意味があるかわからないけど、声を出すって、それだけ重要なんですね。
これはビジネスにも言えることだと思っていて。ユーザベースには十分な戦略もあるし、メンバーも優秀です。ここからさらに成長するためには、声を出すこと。

声を出すといっても、物理的に声を発しなくてもよくて、たとえばSlackでコメントを書く。それに対してスタンプを押す。これだけで、勇気をもらえる人がいるわけです。スタンプを押すことだって、十分「ハイタッチ」の意味がある。これは本当に大事なことだと思いますね。
手前味噌ですが、ユーザベースは非常にいいプロダクトをつくっています。何度触ってみてもいいものだと思いますし、お客様からもそうした声をたくさんいただいています。いいプロダクトがある。素晴らしいお客様がいる。メンバーのスキルも高い。すべて揃っているんですよね。
ユーザベースは少しスマートにやろうとする印象を持たれますが、だからこそ声を出す。量をやる。スピードを意識する。これができればもっと成長できると思うんです。
また、新しくリーダーを務めることになったメンバーが増えたので、彼らの成長も楽しみですね。一緒に声を出して成長していけたら嬉しいなと思います。
今年も変わらず、たくさんのお客様の意思決定にかかわる、素晴らしいプロダクトを扱っているという自信を持って、地に足をつけて確実に前進していきたいです。

編集後記
このシリーズでこれまで出てこなかった「元気・気合い・根性」というキーワードが新鮮でした(笑)。でも意図を聞いて納得です。海外の研究で「Playfulness」という概念がありますが、うんちゃん(海野のニックネーム)が話してくれたのは、まさにその概念の中にある「他社指向性」、要は他人に対する興味に近いのかなと。
年々社員数も増えてきたユーザベース。私も積極的に声を出していきたいと改めて思いました!