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コミュニケーションを諦めるな。自分の弱みを認知したうえで、支えてくれる人たちがいた—FORCAS事業 Product Management チームリーダー 嶋田真弓

コミュニケーションを諦めるな。自分の弱みを認知したうえで、支えてくれる人たちがいた—FORCAS事業 Product Management チームリーダー 嶋田真弓

「私にとっての壁は、コミュニケーションでした」。FORCAS事業 Product Management チームリーダー 嶋田真弓は、ユーザベースに入社した当時のことをこう振り返ります。ゴールのイメージを共有できず、周りとぶつかってばかりいたという嶋田。壁を乗り越えられたのは、弱みを知ったうえでなお「コミュニケーションを諦めるな」とサポートしてくれたメンバーの存在でした。

嶋田 真弓

嶋田 真弓MAYUMI SHIMADAFORCAS 事業 プロダクトマネージャー

SCSK-SWで地図上のパノラマ写真作成などのプロジェクトに関わった後、2014年7月にfreee入社。同社のMarketo導入や、個人事業主や法人向けのメールマーケティング...

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目次

就職も転職も、軸になったのは「人の役に立ちたい」想い

嶋田真弓 キャリアの変遷
まずこれまでのキャリアを教えてください。

新卒でCSKグループの子会社であるSCSKサービスウェア(SCSK-SW)に入社して、10年以上働いていました。

SCSKはBPO(Bussiness Process Outsourcing)の会社です。BPOは、レストランでいえば、自分たちが厨房のような大切な仕事に集中するために、経理など厨房以外の仕事を外部委託することをいいます。

就職活動をしていたとき、私は自分が机に座ってPCで仕事をするイメージがまったく持てなかったんですが、「BPOって誰かの役に立つんだよ」と書かれたパンフレットを見て、「なるほど。誰かの役に立つ仕事ならイメージがつく」と思って入社を決めたんです。

そこで地図上のパノラマ写真作成のプロジェクトなど、外注のプロジェクトをいくつか担当していたんですが、30歳くらいのときに初めての転職で、会計ソフトのfreeeにSCSK-SW時代でお世話になった方の紹介で入社しました。

freeeではSalesforceとMarketoの導入立ち上げを担当したんですが、当時日本でMarketoを導入したのはfreeeが1、2番目。国内にコミュニティがなくて、サポートも半分が英語。サポートチームは海外が主軸で、担当の方もネイティブの日本語を話す方はいらっしゃいませんでした。

それで、Sansanやビズリーチのような最先端のマーケターが集まって渋谷で開催されていた、「渋ケト(渋谷でMarketoを使っているユーザーコミュニティ)」に入れてもらったんです。
 
そこで「ユーザーコミュニティってすごいんだ」ということに気づいて、のちに「SFKETO(セフケト:SalesforceとMarketo両方を使っているユーザーコミュニティ)」というユーザー会を立ち上げることになったんですが、これがおもしろくて。

その後、当時Sansanの社員だった瀬木さん(瀬木 桃子/FORCAS事業 執行役員 CCO(Chief Customer Officer))に「もう1個コミュニティを立ち上げてみない?」と誘われて関わったのが、「FEMIKETO(フェミケト:女性のMarketoユーザーコミュニティ)」でした。

FORCAS事業 PdM 嶋田真弓

渋ケトもSFKETOもそうだったんですが、当時のMarketoユーザーはB2Bマーケターの男性たちが主軸だったんですよ。女性のMarketoユーザーは、たとえばマーケティング事業部長みたいな男性がいて、その右腕として実務を請け負うような役割の人が多くて。FEMIKETOは、そうした人ならではの悩みってあるよね、という方向から立ち上げたんです。

FEMIKETOを立ち上げたあたりで、Marketo社員からの推薦でMarketoチャンピオンに選ばれました。当時のMarketoチャンピオンは同社の社員からの推薦があった人が表彰してもらえるんですが、当時はその中から筆記試験と実技試験をして、勝ち抜いた人がTop of Topとして、サンフランシスコで開催されるMarketing Nation Summitというイベントに連れて行ってもらえたんです。すごく貴重な経験をさせてもらいました。

ユーザベースに入社したのは2018年です。すでにFORCAS(現ユーザベース)に転職していた瀬木さんから「新しいことをやるのに人手が足りないから助けてよ」と言われて、「よし、わかった!」と入社を決めました。私の自分の仕事選びの軸は、「人の役に立ちたい」なのかもしれないですね。

エンジニアと近い距離で仕事できる楽しさ

現在の仕事内容について教えてください。

FORCASにはカスタマーサクセスとして入社して、現在はPdM(Product Manager)をしています。ですが、現在はまだPdMというよりもPMM(Product  Marketing Manager)の延長線上で、「プロダクトがリリースされるよ」「そのプロダクトはこういうコンセプトで、こういう仕様だよ」といったプロダクトの価値情報を社内外に届ける役割をしています。

具体的には、ユーザー向けにヘルプページをつくったり、プロトタイプの提案資料をつくったり。あとはカスタマーサクセス(CS)がカスタマイズする資料の土台づくりや、仕様書をつくるなどしています。
 
今後は引き続き社内外にプロダクトの価値を届けることをしつつ、PdMとして小規模・中規模の実際の開発をリードする役割が大きくなっていく予定です。

PdMとしてプロダクトの開発者と話すのは、CSから来た人にとってはハードルが高そうですが、違和感はありませんか?

FORCASは特別な環境だと思います。これまで何社か経験してきて、エンジニアの人たちと共通言語で話すことは難しいと感じることが少なからずあったんですが、FORCASやユーザベースのエンジニアメンバーはとても優しいんですよ。こちらがわかるように説明してくれるんです。みんなお客様のほうを向いているので、話しにくいと感じることはまずありません。

CSからの異動という点は、CSがキャッチしたお客様からのご要望やフィードバックが製品開発に活かされることが多いので、FORCASではCSが開発をリードすることは珍しくありません。
 
たとえば技術サポートなどもそうですが、お客様から「こんな挙動があったんだけど」と問い合わせがあったり、「こういう製品が欲しい」と要望をいただいたときに、自分が思う仮説で解決できそうかエンジニアさんと一緒に調査することもあります。お客様を起点に、エンジニア、アナリスト、デザイナーなどの関係者と、よりよいプロダクトをつくるための議論をリードするためには、現場(CS)の知識や経験が活きていると感じます。

FORCAS事業 PdM 嶋田真弓

FORCASに入社してから、エンジニアと近い距離で仕事できることがすごく楽しいんです。エンジニアのみんなは自分にないものを持っていて、とにかくすごいなと。

これまでは、エンジニアがいわゆる「ゾーン」に入ってコードを書いているときは邪魔してはいけないと思っていました。たとえばSlackとかで@channel(チャンネルにいる全員に通知)や@here(チャンネルにいるオンラインのメンバー全員に通知)をエンジニアさんにぶつけるなんて、障害発生クラスのえらいことなんじゃないかと思っていたんですよ(笑)。

でもFORCASに入ったときに、CSとして必死に業務をキャッチアップしていたら、エンジニアさんが3人来て「嶋田さん、次の開発のこれなんですけど、ちょっと相談してもいいですか?」と言われて。それまではそんな風にエンジニアから相談をされた経験がありませんでした。

「お客様はこうやって使うと思います」と伝えたら、「わかりました。僕たちあそこに座っているんで、いつでも話しかけてきてください」と言われたんですよ。そうやってエンジニアさんと一緒に何かをつくる経験がものすごく楽しいんです。

よくあるのがTech(エンジニア)とCS vs. 佐久間さん(佐久間 衡/ユーザベースCo-CEO)という構図になって、みんなで佐久間さんに必死に説明して、でも佐久間さんは大局を見ているので「そうじゃないんだ」と言う──こうしたやり取りが本当に楽しいですね。

ゴールのイメージが共有できず、コミュニケーションが壁に

嶋田さんが仕事で忘れられないエピソードを聞かせてください。

私、転職のたびに苦労するんです。freeeの時もFORCASのときも、知恵熱で1週間寝込んで

特にFORCASには、ユーザベースのカルチャーがよくわからずに入社したので、コミュニケーションがものすごく壁になりました。みんなと一緒に何かをやりたい気持ちはあるんですが、私は破壊的にステークホルダーコミュニケーションが苦手で……。いろいろな人とぶつかってきました。

たとえば、人に理解してもらうためには「自分がやりたいのはこういうことです」というゴールを共有して、それを説明し、納得してもらってからプロジェクトを進めるというプロセスが必要だと思うんですが、私にはこれが足りていなくて。

「FORCASに入ったからには共創を楽しむって当たり前のことでしょ?」「みんなそう思ってるはずでしょ?」という気持ちで、そもそもそのゴールはみんな持っていると思ってしまっている。しかも、ユーザベースではオープンコミュニケーションが良しとされているからと、「なんで開発要望出さないんですか?」みたいにどんどん想いをぶつけてしまっていたんです。

過去を振り返ってみて特に印象に残っているのが、今村さん(今村 和広/元FORCAS事業執行役員 ※)でした。私は直球で言ってくれたほうが内容を汲み取りやすいので嬉しいんですが、 今村さんはどちらかというと人を傷つけないようなコミュニケーションを取るんですよ。私としてはオブラートに包まれている感覚で、途端によくわからなくなってしまって。

現在はフリーランスとして、ユーザベースを含めた複数の企業のビジネスに携わる

あるとき、田口さん(田口 槙吾/FORCAS事業CEO)に相談したところ、「大丈夫。話せば絶対に分かり合えるから」と誘われて、佐久間さん、今村さんとでラーメン屋さんに行ったんです。そのとき、絶対にその場の感情だけで話さないようにしなくちゃと思って。「私、今村さんに言いたいことを紙に書いてきました」と言って、私が言いたいことが書かれた紙を1枚ずつ、ラーメン屋さんのテーブルに並べていったんですよ。そうしたら佐久間さんがそれをグルーピングしだして(笑)。そこで伝えたことで今村さんとガッツリわかり合えました。

自分が目指すゴールをうまく言語化できなかったり、ステークホルダーの立場を理解して必要なコミュニケーションを取ることが得意でなかったりするので、当時は「なぜこの人とぶつかるんだろう?」というのがわからずに苦労しましたね。

FORCAS事業 PdM 嶋田真弓

私は360度フィードバック(※)のシステムがとても好きなんですよ。この制度でフィードバックをたくさんもらったことで自己理解や内省が高まって、最近リーダー職に挑戦することにしたんです。

ユーザベースでは、直属の上長だけでなく、同じチームやプロジェクトで一緒に仕事をしたメンバーからもフィードバックし合い、複数視点から評価を行います

FORCASはリーダーになると、執行役員との面談があります。そこで田口さん(田口 拓也 / FORCAS事業執行役員 エンタープライズ担当)が、「嶋田はコミュニケーションが苦手だと思うけど、その辺は大丈夫なの?」と言ってくれて。私がコミュニケーションが苦手だと知ってくれていて、それをオープンに言ってくれる人がいることはありがたい話だなと思いました。

オープンコミュニケーションで自分をさらけ出してぶつかってしまうのは、お客様に中途半端なプロダクトを出したくない、FORCASの品質が悪く見えてしまうのがイヤだという気持ちの表れなんだと思います。誰かにフィードバックするのを諦めたら、それが世に出てしまうかもしれない。それを止めたい。でも以前はゴールをみんなに共有しないまま、ただ辛辣なフィードバックを振りかざしてしまっていました。

この話は、自分がコミュニケーションが得意になったという話ではなくて、みんなに自分を理解してもらえて、自分自身の弱みを自己認知し、周りの人たちにサポートしてもらえるから頑張れる、という話ですね。

コミュニケーションが得意になったわけではないとのことですが、そうした苦労をどう乗り越えたんですか?

FORCASには背中を見せてくれる人がいっぱいいるんです。特に田口(槙吾)さんは、マネージャーとして、「コミュニケーションを諦めるな」と言い続けてくれました。それだけでなく、「諦めないってこういうことなんだ」というのを実践してくれる。

それを繰り返すことで、いつのまにか補助輪が外れたように、田口さんがいなくても自然と自分でできるようになっていったんです。具体的に行動で示してもらうことで、「こうすればいいんだ」という引き出しが自分の中にできたんだと思います。

「渦中をなくす」のではなく、渦中があることを前提に「友を助ける」のがユーザベースらしさ

嶋田さんがThe 7 Valuesの中で一番好きなバリューは?

渦中の友を助ける」ですね。就職や転職の軸になった「役に立ちたい」という想いにつながるのかもしれませんが、自分が「えいっ」と一歩踏み出すときって、誰かを助けてあげたいという一心なんです。だから「渦中の友を助ける」ってものすごくいいなと思っていて。

「渦中をなくす」のではなくて、渦中があることを前提としているところがスタートアップらしくていいですよね。渦中の友を助けるとか、一緒に乗り越えるというニュアンスがすごく好きです。

渦中の友を助ける
「人の役に立つこと」を軸においている嶋田さんが、逆に「自分が助けられたな」と思ったエピソードはありますか?

FORCASに入って自分の限界を感じることが何度もありました。「これはもう自分ひとりではどうにもできない」と感じたのはFORCASのユーザー会でしたね。

ユーザー会は3ヶ月くらい前から準備をするんですけど、田口さんがNewJoiner(新しく入社したメンバー)に共創を楽しんでほしいから、たとえば入り口で配布物を渡すとか、名簿をつくるとか、全員に"自分ごと感"をもってもらえるように、何か役割をアサインしてくれと。それで自分なりに考えたアサイン表をつくったんですが、今度はそれを見たJJ(酒居 潤平/現ユーザベース 執行役員CMO 兼 NewsPicks Stage.事業責任者)からは、「品質が大切だから経験のあるシニアメンバーを中心にアサインした方がいいのでは?」とアドバイスをもらったんですよ。

そんなことが続いて、初めてのオフラインとオンラインのハイブリッド開催だったこともあり、何をしていいかわからなくなってしまって。JJが求めるクオリティもわかるし、共感はすると。ただ、自分にはそのギャップが埋められない……そこで「誰か助けて!」と言ったら、周りがすぐ助けてくれたんです。

ものすごく大変でしたが、ユーザー会が終わったあと、同じ釜の飯を食った仲ではないですが、みんなでひと息つく感じは嬉しかったですね。

恐らくユーザベースの人たちはみんな何かしらの「渦中」を経験していると思うんですよ。みんな渦中にいて忙しいんですが、「私、渦中オブ渦中です!」と手を挙げるとみんなが集まってきてくれます

FORCAS事業 PdM 嶋田真弓

PdMとしてFORCASのプロダクト開発のありようを言語化したい

最後に、今後挑戦したいことを教えてください。

まずはPdMとして、何かプロダクト開発をリードすることです。PdMはユーザベース全体ではものすごくクライテリア(タイトルや評価)が高い人で、ほとんどがエンジニアリング経験者だと思うんです。私はその人たちと比べて、今の自分に何が足りないかもわかりませんし、やり方もわからない。とりあえずは一歩ずつ進むことから挑戦していきたいと思っています。

まずは小さな開発に挑戦したいのと、それと並行して、年末年始(2022年末〜2023年頭)の休みを使ってユーザベース内で行われているエンジニア関連の研修を受けました。研修を通じて「何がわからないか」が見え始めてきたので、それを1つひとつ潰していきたいですね。
 
知識を身につけて、FORCASのプロダクト開発はこういうものなんだ、と自分なりに言語化できたらと考えています。

FORCASでは、デザイナーとPdMが佐久間さんと週1回デザインや仕様を相談する場があります。今は聞き手として参加して、他のPdMがどんな開発をリードしているのかは見ているんですが、その裏側で彼らがエンジニアとどんなことをしているのか、具体的なところはまだ想像がついていません。直近はそこをキャッチアップしながら、一歩ずつ成長し、FORCASのプロダクト開発を支えていきたいと思います。

編集後記

嶋田さんとは、4年ほど前にカスタマーサクセス立ち上げ記事でインタビューさせてもらって以来のインタビューでした。ユーザベースに入社したばかりで、「Marketoチャンピオン? なんかスゴそう……!」みたいな知識レベルの私に対して、懇切丁寧に答えてくれたのを覚えています。

FORCASが大切にしている「ユーザーとの共創」、お客様のことを一番に考える姿勢は当時から変わらない嶋田さんが、PdMとしてどんなプロダクト開発に携わっていくのか、今からとても楽しみです!

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執筆:宮原 智子 / 撮影:渡邊 大智 / 編集:筒井 智子
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