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仕事が大好きだからちゃんと休む。17時半以降はパソコンを開きません──FORCAS事業 執行役員 CCO瀬木桃子

仕事が大好きだからちゃんと休む。17時半以降はパソコンを開きません──FORCAS事業 執行役員 CCO瀬木桃子

ユーザベースはDiversity & Inclusion(以下、D&I)の推進を加速するためのコミットメントを発表しました。それに共感したメンバー発で生まれたのが、「Diversity Empowerment Community」。女性管理職比率が27%と、全従業員における女性比率43%にまだまだ乖離があるユーザベースには、Gender問わず「本当はリーダーになりたい、でも一歩踏み出せない」というメンバーが少なからずいることがわかってきました。 

そこで、ユーザベースの多様なリーダーに光を当てる新企画、「Diversity Empowermentシリーズ」をスタート。社内外で迷っている人を「このスタイルならできるかも!」とそっとエンパワーします。10+αの質問から、新たなリーダー像を探っていきます! 

第4弾は、FORCAS事業 執行役員 CCO(Chief Customer Officer)瀬木桃子です。「火曜日の午前中は家事に充てる!」と宣言し、地方在住・フルリモートで子育てしながら執行役員を務める日々について聞きました。

瀬木 桃子

瀬木 桃子MOMOKO SEGIFORCAS事業 執行役員 CCO(Chief Customer Officer)

新卒で商社系IT子会社に入社。エンジニアとして経験を積んだのち、2015年、Sansanに入社。インサイドセールスを経...

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目次

1. はじめてリーダーを打診されたとき、どう思った?

はじめてリーダーになったのは、FORCASでCCS(セントラルカスタマーサクセス)チームを立ち上げたときです。私ひとりのチームにどんどんメンバーが入ってきて、自然とリーダーになっていきました。

その頃はあれもこれも全部自分でやっちゃって、自分のリソースは逼迫するし、メンバーの経験が積み上がらないから彼らが成長しない。そんな状況に陥りました。

そのときは、あえてメンバーに任せる、失敗することも込みでタスクを預けてみる、メンバーが難しい状況に直面したら一緒に解決策を考える。そういうやり方に変えて乗り越えました。 

執行役員にならないかと言われたのは、産育休から復帰してしばらくした頃です。FORCAS事業CEOの田口さん(田口 槙吾)に「いや、ちょっと無理かもしれません」って言いました。

それからも何回か打診されたんですけど、何回も断りました。「私、執行役員みたいな肩書が欲しくてユーザベースに入ったわけじゃないし、執行役員にならなくてもこれまで通りにコミットするので安心してください」って(笑)。 

すると田口さんから、

いやそうじゃなくて、60人を超える規模なのにユーザベースグループの中で役員が僕ひとりだけなのって、FORCASだけじゃん。これから先、FORCASを僕ひとりだけで見ていくのは無理だから助けてもらえないかな。多様性を持つFORCASをチーム経営していく上で、瀬木さんと一緒にチャレンジしたいことがたくさんあるから。 スキル面もエグゼキューション(実行力)でも、瀬木さんだからこそお願いしたい。チームの多様なメンバーと瀬木さんらしいコミュニケーションで、プロダクトをスケールさせてほしい。

って言われました。

それでも執行役員を引き受ける決断をするまでは、本当に悩みました。

役員をやりたくなかったわけではありません。責任を全うできるのか、コミットしきれるのか、自信がなかったし不安でした。子どもが2歳になったばかりだったし、打診されるちょうど1週間ほど前に子どもが体調を崩し、それが私にうつって3日ほど休んでしまったんです。

子どもが小さいうちは、こんな風に突発的に休まなきゃいけないことがきっと何回もある。メンバーに迷惑かけたらどうしよう、役員なのにできないって思われたらどうしよう、そういうことばかり考えていました。

子どもがいることを言い訳に、逃げ腰になっていたんですね。

そこでCPO/CAOの松井さん(松井 しのぶ)に相談したところ「自分をロールモデルだと捉えて、2歳の子どもがいるワーママが執行役員になったらどうなるか、客観的に捉えてみてもいいんじゃない? 瀬木ちゃんが役員に就任すること自体が誰かのためになると思うよ」と言われたんです。

「確かにそうだな」と思いました。

それに、もし仮にこの役割を全うしきれなかったとしても、「トライしてみたけれど、こういう背景でうまくできませんでした」と言えればそれでいいと思ったんですよね。ユーザベースなら、失敗してもきっともう1回トライできるはず。

そう捉えることができて、ようやく「じゃあやってみます」と言えました。

2. ユーザベースで実際にリーダーをやってみてどう?

執行役員になって変わったのは、自分がリーダーとしてがんばるのではなく「新たなリーダーを育てて、組織をスケールさせる」のが仕事だと気づいたことです。執行役員になったことで、階層が1つ増えたんですね。私はDivisionリーダーで、そこに紐付くCCSチームのリーダーがいて、さらにそこに紐付いた現場メンバーがいます。

どうしても新しいリーダーが生まれたら、「じゃあ、あとはよろしく!」って全部任せてしまいがちじゃないですか。

でも過去のFORCASでは、新任リーダーにいきなり全部任せて、チームがうまく立ち上がらなかったことがありました。当時の役員と期待値が擦り合っていなくて、「私たち、どこまでやればいいんですか」って、新任リーダーが戸惑うこともあったんです。

だから今は新任のCCSチームリーダーと、毎日15分でもいいから1on1を入れてtoo muchなくらいコミュニケーションしています。CCSチームリーダーがその日、その場で感じた不安や疑問をすぐ解消してもらって、次の日にはすぐ実践するというペースです。

CCSチームリーダーに成長してもらい、チームを成功させ、その結果事業にインパクトを出す。そのためにはどうするか、日々考えています。これはFORCASの他のリーダーは、それほど実践していないやり方かもしれませんね。

3. 何を大事にしているの? 仕事だけでなく、人生でも。

やっぱり家族が大事なんですよね……すごく。仕事は当然責任をもってやるし、できる範囲でめちゃくちゃ貢献するけれど、それによって「自分や家族が幸せじゃない状態になる」のは嫌です。

個人によって幸せの定義は違うと思いますが、私の場合は、まず私や家族が幸せであることを大事にしています。

4. ワークライフバランスについて、どう考え、実践している?

仕事は好きですし仕事脳なタイプですが、子どもが生まれてからは仕事とプライベートをパキッと分けています。

8:30ぐらいから仕事をはじめて17:30には切り上げ、夜は一切パソコンを開きません。その日終わらなかったタスクは次の日にスライドさせて、翌朝に済ませます。あ、夜にパソコンは開きませんが、ベッドでごろごろしているときにスマホでSlackの返信をすることはありますね。

毎週火曜日の午前は「何も予定を入れないで」とスケジュールをブロックし、ご飯や離乳食を作り置きするなど家事に充てています。

もともと、生活をちゃんと整えておかないと、うまく回らなくなるタイプなんですよ。睡眠や食事をおろそかにして無理して働くと、すぐに体調を崩しちゃう。コンビニのご飯が1週間続くと体調を崩すし、飲み会は週1回までしか難しい。

スタートアップ企業の役員らしからぬ体力なんですけど、これは子どものときからそうなので仕方がない。そういう体質みたいです。

今は子どもの夜泣きで起こされたり、早朝に起きなきゃいけなかったりとコントロールできないことが多いからこそ、休む時間、ご飯を食べる時間、お風呂に入る時間を意識的につくって、平均的なパフォーマンスを担保できるよう調整しています。

担当業務については、抱えすぎないように上長と調整しておくとか、目標を「ストレッチゴールではあるけれど、気合いでやるくらい高すぎる設定にはしない」といった工夫をしています。

5. うまくいかなかったとき、どうした?

育休から復帰したばかりのとき、仕事がすごく楽しくてめっちゃ働いちゃったんですよ。日中仕事をしているのに、子どもを寝かしつけてからまた働くみたいなことをやっていたんです。子どもの夜泣きもあったのに。

そうしたら、案の定体調を崩してしまいました。回復するにも時間がかかって、1~2週間引きずりました。その間子どものお世話はあるし、家事もやらなきゃいけない。もちろん仕事もしたい……。

そんなジレンマを抱えながら、総合的にパフォーマンスが大きく落ちてしまいました。

そこで「仕事をしたいから休む!」と切り替えたんです。みんなにはSlackで宣言しました。「ごめん、私はちゃんと睡眠をとってご飯を食べないと体調を崩すタイプだから、火曜日の午前は家事と離乳食作りに充てます」と。

おかげで子どもが保育園に行っている間にじっくり考えたり、家事をしたりする時間を取れるようになり、安定的なパフォーマンスを出せるようになりました。

Slackのスクショ

Slackのスクリーンショット

6. メンバーと話すときに意識していること

相手のタイプや特性に合わせてコミュニケーションすることを意識しています。話を聞いてほしいタイプなのか、とにかくアドバイスが欲しいタイプなのか。リーダーと一緒に決めたいのか、まずは自分で考えてみたいのか。それによって会話の仕方も、仕事の進め方も変えています。

できるだけ情報格差もなくしたい。たとえばリーダーミーティングの中で出てきた話も、差し支えないことなら翌日の朝会ですぐ共有します。自分の持っている情報をメンバーの業務に生かしてほしいと思っています。

7. 1on1のときに気をつけていることは?

大前提として、1on1はメンバーのための時間です。ともすると、1on1って 忙しいリーダーがタスクを確認するための時間になったり、業務の話だけになったりしがちです。

でも本来、メンバーのキャリアにとって非常に大切な時間ですよね。メンバーには「今一番使いたいことに使ってね、そのためにアジェンダ考えてきてね」とお願いしています。業務の話に偏ってしまいがちなときは、私の方からあえてキャリアの話を振ることもあります。

それを踏まえた上で、オープンクエスチョンからはじめます。「最近、どう?」って。

8. メンバーと意見が対立したとき、どうしているか?

対立が起こるケースのほとんどは、お互いの景色が擦り合っていないことが原因だと思っています。それはコミュニケーションが不足していることもありますし、相手の仕事に対する真の理解が足りていないからということもあります。

私は今、CCSチームからは離れ、執行役員と兼務でプロダクトマネージャーもやっています。この仕事は相手の景色を理解するのがめちゃくちゃ大事なんです。

開発してくれるのはエンジニアだし、UI/UXを考えてくれるのはデザイナーだし、顧客との調整をするのはCSです。マーケターやインサイドセールスには機能リリースに合わせて新たに営業してもらわなきゃいけません。周りにお願いして、やってもらわなきゃいけないことばかりなんです。

だからそれぞれに直接話を聞きにいって「なぜそう考えるんですか?」と景色を共有してもらうことを大切にしてきました。 もちろん私の景色や意見をちゃんと伝えることも大切にしています。

そんな風に情報を合わせる、目線を合わせることで対立を解消しています。

9. ユーザベースのD&Iについてどう思う?

ユーザベースの役員ってすごくハードワークなイメージがあると思うんです。そう感じているメンバーもいるんじゃないでしょうか。

だから役員に打診されたとき「以前は夜に即レスするとか、休日に働くとか自由にできていたけれど、今はどうしてもできないです」って伝えました。

働く時間が多いからダメとか、少ないからいいということではありません。フルフレックスだから、夜でも朝でも、休日でも平日でも好きに働けば良いと思っています。

でも、ハードじゃない働き方をしている人が申し訳ないと思ったり、気を遣ったりするのは違うんじゃないでしょうか。ジェンダー問わず、みんないろいろなライフイベントがありますよね。その中で、仕事上では見せていないけれど、裏では家族に負担を強いてしまっている人がいたら、私は悲しい。

たとえば19~20時のチームミーティングが組まれることがあって。フルフレックスだから間違っているわけではないし、「ダメなら言えばいいじゃん」って思う人もいるかもしれません。でも他のメンバーが「あ、全然いいですよ!」って快くOKしていたら、言いにくいですよね。で、がんばって裏で調整しちゃう。

ユーザベースのハードワークに合わせるために、パートナーや子どもなど家族との関係を悪くしてしまっているメンバーは実際いるんじゃないかな。そういうところは変えていきたいと思っています。

10. D&Iを実践するメリットは?

スタートアップ企業の中でもユーザベースは先頭に立って、D&Iを実行し発信まで落とし込めると私は思っています。事実こうやってD&Iのプロジェクトが発足して、すごいスピードでさまざまなアクションが行われていますよね。それはユーザベースだからできることであり、良いことだと思っています。

ダイバーシティという言葉はかなり前からあると思いますが、それをアクションまで落とし込めている企業は少ないと思います。ブランディングのためでも、見せかけだけでもない、本当に実行することで多様なメンバーが活躍できる土台ができるのではないでしょうか。

<私にとってのD&I>

「家族アルバムみてね」というスマホアプリです。写真や動画をアプリにアップロードしておけば、遠方に住んでいる両親にも子どもの成長をリアルタイムに伝えることができます。過去の写真も日付ごとにきれいに整理されるので、気づくとずっと眺めています。

父の日や母の日には、その中から写真をセレクトして紙のアルバムとしてギフトと一緒に贈れるので、重宝しています。これからも家族を大切にしながら、仕事を楽しんでいきたいですね!

「みてね」のスクショ
執筆:石川 香苗 / 編集:筒井 智子
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