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必要なデータをより早く。全メンバーが身につけたいデータ分析のスキルと知識──SQLを独学で学んだ新卒1年⽬メンバーが社内向け講座を開催

必要なデータをより早く。全メンバーが身につけたいデータ分析のスキルと知識──SQLを独学で学んだ新卒1年⽬メンバーが社内向け講座を開催

ビジネスの意思決定に「データ分析」が必要だという認識は今や常識となりました。しかし、データベースにアクセスするためのスキルや権限を持つ人が限られていると、データを見るために手間や時間がかかり、効率的にデータ分析が行えません。誰もがエンジニアリングを楽しめる環境づくりを目指すユーザベースでは、生産性高くデータ分析を行う、エンジニアではない職種のメンバー向けのSQL講座を開催しました。

平野 佑樹

平野 佑樹YUKI HIRANONewsPicks Marketing 担当

大阪生まれ。同志社大学に進学し、京都市左京区の下町シェアハウスで学生時代を過ごす。
1年間NewsPicksでのインターン経験を経て、2022年新卒入社。インターンでは...

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芦田 萌

芦田 萌MOE ASHIDAMIMIR Product Manager

高知県生まれのはちきん。早稲田大学卒業後、ITベンチャーを複数社経験し、サービスグロースや新規事業立ち上げに従事。

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目次

なぜエンジニアではない職種のメンバーも、データ分析のスキルが求められているのか?

たとえばNewsPicksでは、どんなユーザーがどの記事を読んだか、どんな操作をしたかなど、さまざまな行動データが記録されています。そのデータはデータベースに格納されていて、ビジネスの改善点を探ったり、新たなサービスを生み出したりするための情報源となります。

そんなデータをデータベースから抽出するために使われる言語がSQLです。一般的には分析方法を考える担当者(エンジニアではない職種のメンバー)は、SQLを使えるエンジニアにデータの抽出を依頼し、さらにエンジニアがデータベース管理者に依頼して、データを抽出することになります。

もし担当者がSQLを扱うことができて、データベースから抽出できる権限もあれば、気になるデータを瞬時に抽出できます。また、SQLやデータベースに関する知識があるだけでもエンジニアとのコミュニケーションを円滑にすることができます。生産性が向上できるというわけです。

ユーザベースが取り組む、「Play Engineering」プロジェクトとは?

ユーザベースでは、2008年の創業当時から、人とテクノロジーの力を掛け合わせ、経済情報インフラを創造してきました。

ユーザベースが策定する7つのマテリアリティ(重要課題)のひとつに、「テクノロジードリブンな新しい企業モデルをつくる」を掲げています。テクノロジーカンパニーとして、ビジネスパーソンを労働集約的な作業から解放し、創造性が高い働き方に変えていくことは、私たち自身が体現し続けたいことのひとつです。

そのような想いから、ユーザベースは「誰もがエンジニアリングを楽しめる世界」を目指す「Play Engineering」プロジェクトを2022年4月に開始しました。

エンジニアはもちろん、エンジニアではない多様な職種のメンバーたちが、これまで以上にエンジニアリング力を活用し、それぞれが挑戦したいことに楽しく取り組める環境をつくることを目指しています。

なぜならエンジニアリングには、みんなが「やりたいことへ挑戦できる」余白を生み出す力があるからです。

つまりエンジニアリングをさらに活かせば、働くことがもっと楽しくなるはず。「Play Engineering」はそのための支援制度・仕組みづくりを行おうというものです。

練習問題は社内のデータを活用。実務にすぐ応用可能なSQL講座

Play Engineeringプロジェクトの一環として、2022年7月から9月にかけてSQL講座が開催されました。

SQL講座では、必須の構文である「SELECT A FROM B」構文から、レコードをグループ化する「group by」、四則演算をさせる演算子、文字列検索を可能にする「where like」や「where in」、条件分岐させる「case when」など、リアルな現場では必ずと言っていいほど使用される「with句」など、実務にすぐに生かせる関数を学習します。

講座はオンラインのハンズオン形式。参加者は講座の時間で練習問題にチャレンジ。NewsPicksが持つ実際のデータを利用した、すぐにでも業務で応用できそうな問題ばかりが用意されました。

参加者が練習問題に取り組む中で、エラーが発生するなど疑問点や質問があるときはすぐに講師に尋ねることができます。質問者の画面を共有しながらエラーを解消、解説することで、他の受講者も理解を深めることができました。

講義資料の一部抜粋

講義資料の一部抜粋

講義資料の一部抜粋

講義資料の一部抜粋

講師は新卒1年目。SQLを学ぶことを通じ、エンジニアメンバーとのコミュニケーション促進へ。

講師を務めたのは平野佑樹。2021年3月に大学3年次にインターン入社し、2022年4月にNewsPicksに新卒入社したばかりです。
 
現在はNewsPicksの学生向けプロジェクトでマーケティングを担当しています。つまり平野は文系でビジネスサイドのメンバーとして入社。SQLの学習はインターンとして入社するタイミングで、独学で始めたといいます。
 
平野がSQL講座を開催するのは、実は3度目。最初は同じチームの2名のために開催しました。きっかけは、SQLに苦心しているメンバーに「教えましょうか?」と声をかけたことでした。「渦中の友を助ける」というユーザベースが掲げるThe 7 Valuesのひとつを実行したわけです。
 
その後、対象をNewsPicks全体に広げて2回目を開催。平野が社内のSlack上で、SQLに関連するコメントが多いことに気づいたためでした。SQLを知りたい・学びたいと考えている人がユーザベース内に多かったのです。
 
平野がSQL講座を開催したのは、他にも理由があったといいます。

業務において前提となる基礎知識がないと、メンバー間での情報伝達の食い違いが起きたり、追加の説明が必要になったりします。実は僕もミーティングでエンジニアメンバー同士の会話をわかっているふりをして聞き流し、あとで他のメンバーにこっそり確認した経験があります。この経験があったからこそ、ユーザベースメンバーにエンジニアメンバーとのコミュニケーションを促進する知識として、SQLを学んでほしいと思いました。(平野)
講師を担当した平野

NewsPicksメンバー向けの2回目の講座が開催されることになった頃、役員を交えた懇親会が行われ、平野も出席。その会にはCo-CEO/CTOの稲垣裕介も参加し、何気ない会話から平野がNewsPicks内でSQL講座を開催することが稲垣の耳に入りました。
 
稲垣はその場で「全社向けにも開催してほしい」と平野にリクエスト。「Play Engineering」プロジェクトが発表される以前のことでした。
 
そして全社向けに3回目のSQL講座を開催することになりました。過去2回の講座からさらにブラッシュアップ。特に改善を図ったのは、講座をインタラクティブな内容に進化させることでした。

他の言語もそうですが、SQLも書いていると必ずといっていいほどエラーが起きます。僕はオンライン学習でSQLを学んだので、その場で質問ができず、エラーをすぐには解消できませんでした。また、オンライン学習で使うデータはリアル感に欠けるものが多い。これは実務に応用しづらいなと感じましたね。実際に業務で使うようなリアルなデータや事例を用いたハンズオン講座なら、初心者がつまずきがちなエラーをその場で解消できるし、業務への応用もしやすいはず。過去2回よりも練習問題を多くして、さらにインタラクティブにすることを意識しました(平野)

講義の参加者からは、開催中も終了後もSlack上で平野宛にコメントや質問・相談が届いているそうです。

一方で、全7回に渡る講座では脱落する人も発生。

SQLは直感で理解しづらい部分もあるため、難しいと感じる人がいるんだと思います。また、業務への活用方法が見出せないことで、離脱につながった人もいたようです。次回以降は、参加者の業務内容を踏まえて講座の内容を考え、内容についてきてくれているか確認しながら進めたいですね(平野)

と平野は次回以降の開催にも意欲的です。

7回の講義からしばらくして、すでに実務でSQLを活用している参加者が、講座内容をどのように活用しているかを発表するアウトプット共有会が開かれました。また受講した成果として、「データベースの構造が理解できて、エンジニアとのコミュニケーションがより円滑になった」「調査したいデータがある時に、誰かに依頼する必要なく見られる」など、すでに業務改善につながっていると感じた参加者もいたようです。

SQL講座を受講して、どのようなスキルが身についた?

今回のSQL講座を受講し、実際の業務においてもSQLを活用するようになったMIMIRの芦田萌に話を聞きました。

状況把握にとどまらず、仮説の検証や最適なソリューションの模索、施策の優先度付けなど、さまざまな場面においてデータによる考察は必要となってくると思います。 ただ、その都度エンジニアメンバーにデータ抽出をお願いするのは申し訳なさもあり、またその遠慮によって知りたいデータがあるのに躊躇してしまい、改善の機会を見送ってしまうなど、気軽にデータを見れないフラストレーションは、多くのビジネスサイドの方々が抱えている悩みかなと思っています。(芦田)
芦田

受講前にはそういった悩みもあった芦田ですが、講座を経てストレスフリーかつ迅速に気になったデータに触れられるようになったそうです。また、データベースを理解しておくことによって、エンジニアメンバーとのコミュニケーションの質も向上したと実感したとのこと。

自分自身がSQLスキルを習得できたことにより、業務の幅が広がるのは純粋にとても楽しく嬉しいものだなと改めて感じました。ビジネスに関連するスキルはさまざまあると思いますが、その中でもSQLはできることの範囲を大幅に広げてくれるのでとても有意義だと思います。(芦田)

このように、受講者にとってエンジニアリングスキルを身につけることにより、エンジニアとのコミュニケーション促進だけでなく、自分自身の業務範囲の幅を広げることにもつながっているようです。

SQLを実務で活用する中での課題は?

芦田によると、今回の講座受講によって基本的なデータ抽出はすぐにできるようになったものの、実際のデータを元に理想のアウトプットイメージに辿り着くには、より高いSQLスキルが必要だと感じているそうです。彼女自身、より高度なスキルを身につけるための努力も怠りません。

より高度なスキルを身につけるために、たとえば知っている構文のバリエーションを増やしたり、サブクエリを複数書いたりするなど、日々業務で実践しながら勉強を続けています。また実務においては、ある課題を検証しようとする際に、データベースにあるどの項目を利用して、どういう抽出をすれば目的が達成されるのかという、データ抽出の前段階での設計がとても重要だということにも気づきました。(芦田)

実際に担当しているサービスにおいて、経験を積むのが一番の近道だと芦田は語ります。

今後のPlay Engineering プロジェクト

SQLスキルだけにとどまらず、Play Engineering プロジェクトでは、エンジニアリングを学習していくメンバーの挑戦をサポートしていくために、DMM WEBCAMP(株式会社インフラトップ)とパートナー提携を結ぶことを決定しました。

本カリキュラムを通じて、ユーザベースのエンジニアを含めたメンバー同士のコミュニティを形成し、ユーザベースのエンジニアも学習サポート要員として加わります。今後もユーザベースでは、全社におけるエンジニアリング力のさらなる底上げを目指します。

執筆:野崎 さおり / デザイン:小田 稔郎 / 撮影:近藤 里衣 / 編集:近藤 里衣・筒井 智子
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