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家族と過ごすように仲間と過ごす。家に帰るように職場に帰る── MIMIR CS Biz Teamリーダー 山本傑

家族と過ごすように仲間と過ごす。家に帰るように職場に帰る── MIMIR CS Biz Teamリーダー 山本傑

ユーザベースの多様なリーダーに光を当てる企画、「Diversity Empowermentシリーズ」、第13弾は、MIMIR CS Biz Teamの山本傑です。

4人の子どもを持つ山本は、平日は単身赴任し休日のみ家族と過ごすという働き方をしていた時期がありますが、今は食事やお風呂、宿題、睡眠といった「一緒にできること」は一緒にやるようにしていると語ります。

そんな山本にとってユーザベースメンバーは家族同然。普段どんなことに気をつけてメンバーとコミュニケーションを取っているのか、困ったときに召喚する「自分の中にいる獣」とは? など、独自のメソッドを交えながら話してくれました。

山本 傑

山本 傑SUGURU YAMAMOTOMIMIR CS Biz Team

#1984年生まれ #6人家族(妻/息子1人/娘3人) #京都在住(滋賀県出身)

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目次

1. はじめてリーダーを打診されたとき、どう思った?

初めてリーダーになったのは、前職で新卒5年目くらいのときでした。「リーダーの仕事をしている人がリーダーになるのであって、リーダーになってリーダーの仕事をするわけではない」と教わっていたこともあり、リーダーをやる前と後の境目があいまいなんですよね。実際、心境の変化もほとんどなかったように思います。

2. ユーザベースで実際にリーダーをやってみてどう?

前職との違いはあまりないけど、初めてリーダーをやってからの10年間では、「細かさ」が変わったと思います。

昔はやる事もタイムスケジュールも、とにかく細かく管理してました。「計画通り遂行する」ことを第一に目指していたので、チーム内の全てのタスクをガントチャートで一元管理していました。

対して、今は目指す大まかな方向性──90度の幅までは私が責任を持って示し、その後の手法などは仲間に頼っています。自分から進捗を確認することもしていません。理由は、丸くなったとか、仲間の意見を尊重できるようなったとかそういうことではなく、その方が「本来の僕らしさ」だし、「計画(想定)を超える」ことにもつながると理解しているからです。

実際に仲間に頼ったことで計画(想定)を超えた経験がたくさんあって、そのうちの1つがMIMIRのカスタマーサクセス(以下「CS」)が提供している有償のサポートサービスです。

現在MIMIRのCSではいくつかの有償サービスが機能していますが、僕からメンバーに伝えたのは「有償のサポートサービスをつくりたい」ということだけ。まさに「90度の方向性」だけです。結果、計画(想定)よりも「早く」、そして「多く」のサービスが誕生し、今に至っています。

リーダー(自分らしさ)として気をつけているのは、「計画に人を付けない」ということ。計画って作り込めば作り込むほど「この計画を遂行するためにピッタリな人を採用したい。計画通りに進められる人が優秀だ」ってなるじゃないですか。

でも、それだと計画やそれを遂行することが目的になり、人が手段になっちゃう。結果、イノベーションの芽を摘むことになりかねないと思うんです。「ビジネスなんだからそれが当たり前」と考える向きもあるとは思いますが、僕はそれが嫌なんです。

3. 何を大事にしているの? 仕事だけでなく、人生でも。

悩む時間というか模索する期間を大事にしています。うまく言えないんだけど……しんどくなって、仕方なしに答えを出す、ってことをしないという意味です。

答えが出なくて悩んでいるときって、早く楽になりたくて答えを出したい、決めたいってなりますよね。そういうときに、耐える(笑)。逃げないで、立ち止まる。そして模索し続ける。それはすごく意識してますね。

先ほどの計画と人の話とも似てるんですけど、計画に人をつけるのか? 人に計画をつけるのか? って、究極的にはどちらか一方だけでは語れないんですよ。「ほどほど」というのが答えなわけで。

「今回は計画に人をつけすぎたかな」とか「人に寄せすぎてビジネスとしては間違いだったかな」とかって日々悩むんだけど、だからといって悩むことに疲れてどちらかに決めてしまったら、ジャッジが偏るかもしれない。だから僕は真ん中あたり、ほどほどのところを陣取るっていうか、そこにとどまっていることが大事だと思います。

実際、ほとんどの出来事を見ていても、白も黒もないって思うので、「答えを出す」っていうこと自体、間違いなんじゃないかな。「どっちって言えないじゃん」みたいな。「決めちゃいたい症候群」は、よくないなって。

近江商人で有名な僕の地元滋賀県には、昔から「三方良し」という考え方があるんです。ステークホルダー全員がHappyという意味ですね。幼い頃からそういう考え方が身近にある環境で育ってきたので、「偏るのはよくない」って考えが身についているんだと思います。

4. ワークライフバランスについて、どう考え、実践している?

大事にしているのは「70歳までに整える」ということ。今日1日のワークライフバランスとか、今週、今年のワークライフバランスとかは正直どうでもよくて、「70歳まで」という長いスパンの中で整えたいと思ってます。

今はコロナになって家族と一緒に住んでいるけど、SPEEDA JAPANでマネージャーをやっていた頃は、平日は単身赴任で東京で仕事して、休日だけ自宅に帰るという生活でした。ワークライフバランスどころか、ワークしかしてないみたいな。それでも、たとえば30代は仕事ばかりだったけど、60代では何もしていない、みたいなことになるかもしれないし。

とはいえ、私にも愛する家族がいるので目の前の今、何もしていないわけではないです(笑)。具体的にやっていることとしては、うちは子どもが4人いるので、効率よく時間を使うための工夫をしています。

たとえば、食事やお風呂、宿題、睡眠といった「一緒にできること」は一緒にやるようにしています。お風呂に入るときは1人で入らず子どもと入る。ご飯も、できる限り一緒に食べる。書斎には子どもたちの学習机が並んでいて、僕が仕事している隣で宿題をしています。寝るときは、私が後からになりますが、愛娘と一緒に並んで寝ます。

習い事も一緒です。健康のためにずっとキックボクシングをやってるんですが、息子も娘も同じジムに通っているので一緒にトレーニングできる。「自分がどっちにしろすること」を、一緒にやっている感じです。夜遅くまで仕事してお腹がすいたときも、息子と一緒にラーメン食べに出かけちゃうこともあります。これはあまり良くないか(笑)。

ちなみに、「家族全員一緒」だとコミュニケーションの質が薄れてしまう気がするので、この「一緒に」メソッドは1on1が基本です。子どもだけではなく妻も含めて「2人だけで過ごす時間」は強く意識して大切にしています。

5. うまくいかなかったとき、どうした?

失礼な話なんですが、仕事していて「この人すごいな」って感じた相手のことを、僕は人間ではなく「獣」の一種と捉えているんですね(笑)。

ここからはちょっとゲーム的な話になるんですが、召喚獣ってわかります? 魔法使いとかが地面に魔法陣を書いて呼び出すアレです。

たとえば太田さん(太田 智之/Corporate Business Development Divisionリーダー)は僕にとってレベチな(レベルが違う)人だから、人として見ていません。あれは獣(笑)。僕の頭の中には「召喚獣オオタ-サン」としてストックされているので、脳内でオオタ-サンを召喚して、そこで勝手に相談し、勝手に答えを授かっているんです。

困りごとと獣の間には相性があるので、その都度呼び出す獣を変えることも重要です。オオタ-サンを召喚するのは、やるべきことはわかってるけど踏ん切りがつかないとき。現実世界の太田さんは鋼のメンタルで正論を言ってくるので、最終的に「そうですよね」ってなって終わりたいときにもってこいなので召喚します(笑)。

脳内でオオタ-サンから「こうしている間にも1分1秒過ぎていくわけやん。でも明日の11時までに終わらせないといけないんだよね? なら今すぐやろか!」って言われて、「そうですよね」って腹落ちできます。……コレ、伝わってます(笑)?

別では、自分の中にある選択肢にしっくりくる解決策が見当たらないとき。そんなときにオススメなのは「召喚獣カワグチ-サン」です(笑)。自分が持ち合わせていない選択肢を出してくれるんですよ。あ、でも川口さん(川口 荘史/MIMIR 代表取締役)の場合はリアルで召喚しちゃっていますね。リアル川口さんは、めっちゃ僕の愚痴も聞いてくれます(苦笑)。

6. メンバーと話すときに意識していること

特に意識していることはないです。これも計画に人を付けない話と似ていて、計画や目的ありきで人と話すのがあまり好きじゃないんです。「何か話さなきゃ」も違うし、「○○のために話さなきゃ」というのも嫌。

プライベートで、パートナーに「今日(話すこと)なんかある?」なんて、絶対言わないでしょ? 何かあるから話すんじゃなくて、何もないけど話したいんです。

ちなみに会ってないときは、頼まれてもないのに勝手に仲間のキャリアを考えて妄想しています(笑)。僕、「本人よりも本人の明るい未来が見えている人」でありたいんですよ。お節介なので(笑)。

キャリアについて相談を受けたときは、その妄想を軸に話しています。ただ、ドラマとかで観る「息子を将来医者にしたい!」というような勝手なキャリアではなく、あくまでも普段のコミュニケーションから感じ取るその人の「ステキなポイント」をもとに明るい未来を妄想するわけです。もちろん人は短期間で変わるので、過去のイメージがバイアスになってしまわないよう、常にメンバーのことを見て、情報をアップデートしています。

7. 1on1のときに気をつけていることは?

僕のカレンダーを見てもらうと分かるんですが、「1on1」じゃなくて「お茶」って入れているんですよ。しかも毎週、みんなと(笑)。「ごめん、ちょっとうどんすすりながらだけどいい?」とか、「こないだ言っていたランドセル、結局どこのを買ったんですか?」みたいなことを話す時間です。

メンバーとはミーティングで仕事の話をしているし、日頃から仕事の進捗報告をしてくれているので、1on1をして改まって話すようなことは、ほとんどストックされていないんですね。Slackでニュアンスが伝わりにくいときに「明日のお茶で話しましょう」みたいなことはもちろんあるけど。だから僕にとって1on1は「楽しみにしている、仲間との休み時間」です。

8. メンバーと意見が対立したとき、どうしているか?

上手く解決しようと、事前に考えたり準備したりしないで話すようにしています。僕だってそんなに立派な人間じゃないから、感情論も言っちゃうし、途中で意見が変わることだってある。でも準備してきた賢い言葉より、その場の言葉を大事にしたいと思うんです。

ミーティングの終了時間になってもまだお互い納得がいってなければ、別の対話時間をすぐに設定します。「この時間で終わらせよう、解決しよう」なんてことは絶対にしません。時間内に終わらせるのが目的ではなく、お互いが納得できることが大事です。

もしパートナーと喧嘩したとき、「22:00には寝たいから、それまでに仲直りしよう」なんて人、いないですよね。翌朝も喧嘩した雰囲気のまま起きるじゃないですか。僕にとって仲間は家族みたいなもの。だから信頼関係でつながっているし、焦らなくても大丈夫

職場は僕にとっての家みたいなものだから、家に帰ってきてまで、そんな賢いコミュニケーションを取りたくないんですよ。

9. ユーザベースのD&Iについてどう思う? 傑さんにとってのD&Iは?

ユーザベースが改めてD&Iを掲げているのはいいことだと思っています。ただ僕の場合は、ユーザベース入社当時からD&Iレベルの高い環境で働かせてもらっている感覚があるから、新しく掲げたっていうよりは、言語化した、っていう捉え方のほうが近いかな。

僕自身、もしユーザベースではなく他の会社に行っていたとしたら、たぶんうまくやっていけないんじゃないかなって思うんです(笑)。先ほど話したリーダーとして意識していることも、ユーザベースのみんななら「それはそれでいいじゃん!」って言ってくれると思うけど、他の会社なら「そんなのダメ」って一蹴されて終わりな気がします(苦笑)。

10. D&Iに取り組むメリットは?

メリット……何でしょうね。自分らしくやれる、っていうことが言いたいんだけど……自分らしくやれると何がいいんですか、って聞かれそうですね。何だろう……楽しいから(笑)? メリットはちょっとわからないんですが、やっぱりD&Iを通じて「自分が存在している意義」を感じられる感覚が、少なくとも自分にはありますね。

比較されがちなスキルや実績とかそういうものではなく、ただ、自分という人間の「らしさや癖」を気に入ってもらえて、誰かが必要としてくれたときって、嬉しさだけじゃなくて、安心感というか、無償の愛を感じますよね。

そういった瞬間に多く出会えたら幸せな人生だと思うんですけど、その土壌はD&Iを大切にしていく中で今以上に出来上がっていくんだと思うし、それはステキなことだと思います。

それに「らしさや癖」が集まり発揮される土壌は、ユーザベースが「計画(想定)を超えていく」ことにも結果的につながっていくんだと思います。あ、メリットが出ましたね(笑)。

<私にとってのD&I>

『世界がもし100人の村だったら』書影

世界がもし100人の村だったら

自分とは境遇や思想の異なる人が、自分が考えているより身近な存在であると再認識できる本。こういう感覚はすごく大事だと思う。D&Iが「これから大切」なのではなく「今、すでに大切」なのだなと実感できます。

執筆:見廣 健太郎 / 編集:筒井 智子
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