ミドルエイジ以降もサステナブルな働き方が可能な環境を目指して
DEIB Committee分科会「Oliveto(オリベート)」は、ミドルエイジ以降もサステナブルな働き方が可能な環境づくりに取り組んでいるコミュニティです。Olivetoは、イタリア語で「オリーブ園」を意味します。
Olivetoは、オリーブとミドルエイジのあいだに、大きく3つの共通項があると考えています。
1つ目は、「影の立役者」であること。ヘアケア、スキンケアなどオリーブの影の立役者としての役割は、ミドルエイジに通ずるものがあると考えています。
2つ目は、オリーブは時間をかけて苦味が甘味に変わっていく点。
3つ目は、Oliveという単語の「O(オー)」を「0(ゼロ)」に見立てると、「0-live」となり、「源を生きる」=「リセットをする」という意味に置き換えられることを発見しました。ミドルエイジは心と体に変化が起こります。それに伴い、自分の生き方を「リセット」して考え直し、新たな自分を探し始めます。
また、オリーブの花言葉である「平和」と「知恵」は、「心と体を平和に」「ミドルエイジの知恵(経験値)をもとに組織に貢献し、新たな活躍の仕方を考えよう」に通ずると考え、組織の名称を「Oliveto」としました。
第1回 DEIB/更年期に関する意識調査についての概要
イベント冒頭で有志コミュニティ「Oliveto」の説明があった後、NewsPicks Operationsチームの香月から、2023年7月28日〜8月10日にかけてグループ全社員を対象に行われた「更年期に関する意識調査」のアンケートの結果が共有されました。
このアンケートは、ユーザベースグループ社員の更年期に対する意識の現在地を知るために行われたもので、78名から回答が得られています。
【調査内容】
基本的な知識・意識について(更年期に対する社員の意識の度合いを把握する)
経験者の取り巻く環境や心情
活動のニーズについて
まず、更年期に関する基本的な知識・意識について、更年期についての知識が「ない」「あまりない」と回答した人が全体の70%。ただし、45歳以上の女性は100%が「何かしらの知識あり」と回答しています。
「更年期について、職場で話題になることはありますか?」という問いに対しては、「まったくない」「あまりない」が85%。職場で話題にすることに抵抗感や恥ずかしさを感じますか? という問いに対しては、約60%が「感じない」と答えています。ただし、45歳以上の8割は、職場で話題にすることに抵抗を感じているという結果に。
「更年期症状をオープンにすることでどのような影響があると思いますか?」という問いに対しては、「言い訳を言っていると思われ評価が下がる」「配慮が必要と思われ、仕事を頼まれなくなったり、業務の差配に影響が出る」「『更年期』という言葉を出した瞬間、『おばさん』とラベリングされる」といった回答がありました。
更年期症状の経験者にもアンケートを実施しました。実際に経験した具体的な症状のトップスリーは、「疲れやすい」「肩こり」「気分が落ち込む」。何らかの体調不良が起きていて、それによって「仕事に集中できない」「感情の起伏」など制御できない出来事が起こっていることがわかります。
経験者は、更年期症状は症状が感覚的で周囲に伝わりにくいうえに、「また言ってる」等と思われるのではないか? という心理が働いて言い出しにくいと感じているようです。とはいえ、パフォーマンスの低下は周囲にマイナス影響を与えかねないため、DEIBとしてどうしたら相互理解できるかは今後の課題です。
悩んだら産婦人科へ。いたずらに「更年期」を恐れる必要はない
続いて、産婦人科専門医でNewsPicksプロピッカーの稲葉可奈子先生に登壇いただき、ミドルエイジの体や更年期の基本的な医療知識についてレクチャーいただきました。
そもそも更年期とは、閉経の前後5年ずつに及ぶ期間を指します。閉経の平均年齢は50歳であるため、一般的に45〜55歳が更年期と呼ばれます。更年期だからといって、すべての人に症状が出るわけではありません。
稲葉先生によると、実際に更年期において「更年期症状かもしれない」と感じる人は、全体のおよそ30%。半数以上は更年期症状を感じず、穏やかに更年期を過ごしているそうです。
とはいえ、ひとたび症状が発生すると、「更年期症状がつらくて仕事を辞める」「昇進を断念する」「日々の仕事のパフォーマンスが低下する」といった方も少なくありません。こうした更年期症状による経済損失は、およそ4,200億円にのぼると言われています。
社会的損失だけでなく、更年期症状を抱える当事者個々のQOLも低下し、プライベートで何かしらの損失を被っています。
もしも、更年期症状かもしれないと感じたら、相談する先は産婦人科。受診して相談いただければ、まずはどういった症状があるか問診をし、場合によってはホルモン値検査をします。更年期症状の可能性が高いと診断されたら、治療に入ることがあります。
更年期症状で代表的なものは「ホットフラッシュ」。ほかにも「イライラする」「関節がこわばる」などが挙げられますが、産婦人科を受診してみたら、実は更年期ではなくほかに原因がある場合もあります。
ただし、それを自分で判断する必要はありません。もしかして更年期症状かな、と思ったら産婦人科を受診し相談しましょう。
更年期症状の治療は、漢方薬やホルモン補充療法などによって行われます。一般的な3割負担の保険診療が受けられ、かつ治療をすればほとんどの症状は軽くなります。
また、更年期と並んで「プレ更年期」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。一般的に更年期の手前の世代を指す言葉ですが、プレ更年期だからといって更年期症状が出るというわけではありません。わざわざ「プレ更年期」と呼ぶ必要もないですし、「プレ更年期」に当たるからといって、いたずらに恐れる必要はありません。
更年期症状は、女性よりは頻度は少ないものの、男性にも見られることがあります。男性は女性よりもホルモンの変化がゆるやかなため、症状が出ない場合のほうが多いのと、症状が出るとしても、50歳前後とは限りません。もしかして更年期? と思うような何らかの症状が身体に表れていると感じた場合は、泌尿器科を受診します。
女性も男性も、更年期に関する正確な知識をインプットして、価値観や意識をアップデートしていきましょう。
パネルディスカッション:自分の状態を言語化・見える化して更年期をポジティブに過ごそう
パネルディスカッションでは、NewsPicks編集長の佐藤留美がファシリテーターを務め、ゲストに稲葉可奈子先生、Samantha Thavasa 非常勤取締役、Samantha Global/GOOD NEWS 非常勤取締役、Oisix ra daichi Brand Director/People`s Adviserの世永亜実さんを迎えて、ミドルエイジの体の変化や仕事への影響、職場のメンバーとのコミュニケーションなどについてトークを繰り広げました。
年を重ねることによる体の変化について、ファシリテーターの佐藤はホットフラッシュの症状が強く表れていると言います。稲葉先生、世永さんもそれぞれ、「仕事の無理が利かなくなった」と話します。
中でも世永さんは42歳のとき、朝決まった時間に起きられなくなったり、長時間の残業ができなくなったりするなど、体力低下したタイミングで「働き方と人生を変えてみよう」と考え、独立。パラレルキャリアの道を選びました。
ファシリテーターの佐藤は、年を重ねることはネガティブなことではない、むしろ受け入れること、より良く年を重ねるWell-agingが大切だと考えを述べました。このWell-agingという言葉に対し、世永さんからは次のような意見が聞かれました。
私は「Anti-aging」よりも、年齢を受け入れる「Accept-aging」という言葉が好きですね。年齢を重ねて、私はいろんなことを削ぎ落とすようになりました。
たとえば、ファンデーションをするとどうしてもしわが残ってしまうので、最近はファンデーションをやめてパウダーだけにしています。そうすると洗顔がいらなくなり、水で落とすだけでいい。
10年前も楽しかったけれど、いまも十分良くて、戻りたい、若返りたいとはまったく思いません。若い頃から頑張って積み重ねてきた「いま」も、すごく楽しくてステキだよ、と若いスタッフに伝えることが大事なのかなと感じています。
世永さんの発言を受けて、稲葉先生も「Accept-aging」という概念はとても大切だと話します。年齢に比べて心も体も若く保つ努力は良いことである反面、年齢を重ねることで生じるさまざまな症状や体力低下に抗いすぎると、自分に対するネガティブな感情につながりかねません。
「いま」の自分をポジティブに受け入れ、できることに最大限取り組んで行く。加えて、出産や育児などのハードルを乗り越えながら着実にキャリアを重ねていった50代、60代、70代の人たちが、下の世代にロールモデルを示すことで勇気を与えられるとも言います。
一方で世永さんは、「更年期」を腫れ物のように扱う世間の風潮に言及し、本イベントへの登壇を決断するには勇気が必要だったと打ち明けます。こうしたミドルエイジの心境について、佐藤は自身の経験を明るく語りました。
私は昨年閉経したんですよ。そうしたら、すごく気分がよくて、生まれ変わったような気持ちになりました。閉経したらナプキンの持ち歩きから解放される! と思ったんですが、次は尿漏れが始まりまして(笑)。
でもこれを恐れてはいけない。皆さん通る道です! いまは尿漏れパッドもいい製品を売っています。私は持ち運び用にかわいいポーチを買ってみたりして楽しんでいますね。
尿漏れも自然現象。年を重ねるって、そういうことでしょ? 閉経や尿漏れで昇進を断念しなくてもいいんです。みんなで認め合って、「こんないい製品あるわよ」なんて情報交換するくらいがヘルシーだと思います。
すべての女性に佐藤さんのようなマインドでいていただきたいですね。いろんな価値観の方がいますが、私はいつも「閉経=女性の終わり」ではないんですよ、とお話ししています。そもそも、妊娠したい時以外は、生理はないといけないものではないので。
おふたりから、更年期のマイナスイメージを払拭するには、受け取り方や伝え方を変えることに意味があると聞いてなるほどと思いました。「女性の体」や「老化」に関して、こうやってポジティブに伝える場が圧倒的に足りていないんだなと思いました。
稲葉先生からお話があったように、更年期の影響を受ける人は全体で3割程度と言われています。対して、PMS(月経前症候群)で何らかの症状を感じる人は全体の7〜8割と高い数値を示しています。
PMSの症状や程度の差にも、大きな個人差があります。「理由もなく気分が落ち込む」「腹痛や頭痛など身体症状が出る」といった中でも、多いのがメンタル面での症状だと言います。
稲葉先生によると、こうしたPMSなどの症状も産婦人科で適切な治療を受けるなどすることで症状が軽くなり、パフォーマンスの低下を防ぐことができるそうです。
メンタル面で症状が出ることで、「周囲に迷惑をかけているんじゃないか」といった自己嫌悪に陥る方が多いのですが、低用量ピルや、人によっては漢方薬だけで改善する方もいらっしゃいます。症状が重めで悩みが深い方ほど、「もっと早く産婦人科に来ればよかった」とおっしゃいますね。
PMSも月経困難症も、更年期症状も、治療すれば間違いなく改善します。1ミリも我慢する必要はありません。
本イベントは「更年期」がテーマですが、育児や介護、本人の持病や、PMSなど、人は誰しも、何かしら悩みを抱えています。そうした悩みを口にすることで、周囲にネガティブな印象を与えるのではないか、仕事に影響するのではないかと不安になったり、抱え込んだりする人は少なくありません。
しかし、それらを言語化、見える化することで、「多くのことは解決できる」と言います。
私には子どもが4人います。子どもが4人いれば、熱を出す確率も4倍です。当然、オペがある日に子どもが熱を出す場合もあります。一般的にはそこで、「オペだから自分が休むわけにはいかない」と思って、どうしよう、どうにもならない……という気持ちになりがちです。
でも、周囲にそれを相談してみたら、「じゃあオペの順番を変えて早退できるようにしようか」と協力してくれる。一人で抱え込んでいると「無理だな」と思うことも、職場に相談すると皆さんが協力、調整してくれて何とかなることがあるんです。
ですから、ちゃんと言語化して周りに相談することで解決することは、実はたくさんあるのです。
私は高1と小6の子どもがいますが、未だに予定を約束するのが怖いですね。日程の連絡をいただいたときは、「ドタキャン前提で約束させてください」と必ず伝えるようにしています。
こちらからアポを取るときも、相手の方に必ず「お仕事やご家庭の都合で当日何かあったら、遠慮なく言ってくださいね」と言うようにしていますね。
そう伝えるだけで気持ちがすごく楽になります。小さいことのようでいて、すべてにおいて言語化、見える化することは大事ですね。
以前、ワーキングマザーの連載を持たせていただいて、いろんなワーキングマザーを取材しました。多くの人が言っていたのが、「現在地を知らせろ」と。「ここにいますよ」「これ以外は引き受けられませんよ」と見える化、言語化しておくといいよというお話でしたね。
それは育児に限らず、更年期も、持病も、介護も、全部同じだと思います。
パネルディスカッションのあと、会場では登壇者に向けて、女性の体や職場での発信の仕方についてなど、さまざまな質問が投げかけられました。その中で、参加者から次のような意見が。
この方の発言に参加者の多くが深く共感した様子でした。最後に、ファシリテーターの佐藤からまとめの言葉と謝辞を述べ、本イベントは盛況のうちに終了となりました。
編集後記
本イベントは私も参加しましたが、専門家である稲葉先生や、実際に更年期の症状を経験された世永さん、そして自身の経験を笑い飛ばす留美さん(佐藤)の話を聞いて、更年期をむやみに怖がる必要はないんだ! と思えました。
懇親会では初対面のメンバーも多い中、登壇者のお2人に積極的に話しかける人や、お互いの悩みをポジティブに伝え合う様子が見られ、皆さんのパワーに圧倒されっぱなしでした(笑)。