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プロダクト開発こそ、事業成長の「一丁目一番地」(エンジニア出身Co-CEO 稲垣裕介)

プロダクト開発こそ、事業成長の「一丁目一番地」(エンジニア出身Co-CEO 稲垣裕介)

共同創業にエンジニアとしてジョインし、その後COO → Co-CEOと経営者のキャリアも築いてきた稲垣 裕介。ユーザベースのエンジニアカルチャーの特長や魅力、エンジニア出身の経営者だからこその思いを語ってもらいました!

稲垣 裕介

稲垣 裕介YUSUKE INAGAKIユーザベース Co-CEO/CTO

高校時代の友人である梅田に誘われ、エンジニアとしてユーザベースの創業に参画。エンジニアチームの立ち上げを経て人事領域も...

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目次

プロダクト開発は事業成長の「一丁目一番地」

新しい経営体制になってから、およそ半年が経過しました。稲垣さんの視点から半年を振り返ってみていかがですか?

稲垣 裕介(以下「稲垣 裕介」):
ユーザベースは創業以来、「チーム経営」を掲げて共同代表制を執ってきました。今回の体制変更で、僕のパートナーでもある共同代表が梅田(優祐)から佐久間(衡)になり、佐久間のトップとしての個性の発揮によってユーザベースはさらに進化し始めています。もちろん佐久間もこれまでも取締役として経営についての議論をしてきていたので、大きな感覚のギャップはなく同じ価値観で一緒に経営できています。

2020年と2021年で経営方針に最も影響を与えた変化は、アメリカのQuartz事業から撤退したことです。ユーザベースがグローバルに展開するための大きな成長ドライバーとして2019年から投資してきましたが、結果として昨年撤退することを意思決定しました。

2021年の年明けからは新たな成長モデルをつくるために、既存事業であるSPEEDAやNewsPicks、またFORCASやINITIALをはじめとした新規事業などに、投資の再配分を行う経営戦略を打ち出しています。

稲垣 裕介

稲垣:
ユーザベースの強みは、何と言ってもプロダクトです。僕たちはプロダクトを売っている会社なので、良いプロダクトがないと何も始まりません。だからこそ新たな成長モデルをつくるために、プロダクトを進化させて新しい価値を生み出し続けていく必要があります。

プロダクトを作り出し成長させていくためには、何よりエンジニアの力が必要です。これまではQuartzに投資していたこともあって、意図的にエンジニア採用を抑えていた部分がありました。

今回新たな経営戦略を打ち出すのに伴い、経営チームの意志として何に投資するのかを改めて考えた結果、僕たちの成長の一丁目一番地であるプロダクト成長に投資をする、つまりエンジニアチームに投資をしようと決めました。これまで以上に強いエンジニアチームをつくるためのプロジェクトを組成し、僕がリーダーシップを取って動いているところです。

プロダクトのPDCAサイクルを高速化させたい

エンジニア出身の経営者として、稲垣さんが今、一番やりたいことは何ですか?

稲垣:
そうですね、お客様の声に徹底的に向き合って、これまでできていなかった開発をどんどん進めていきたいという思いがあります。

お客様からも「SPEEDAにこんな機能があったら」「NewsPicksのこの機能にこんな選択肢があったら」と以前からいろいろとリクエストをいただいていて、期待に応えられるイメージも持てていました。

ですが2020年までは前述したグループ全体の予算の問題で、投資しきれていなかったんですね。なので今後は、これまで待っていただいていたお客様のためにも開発により投資を行い、いただいている声を元にプロダクトを進化させ、新しい価値を届けていきたいと考えています。

現在コロナの影響で海外に出にくい状況が続いていることもあり、今は日本市場でしっかりと満足度の高いプロダクトの基盤をつくることに集中します。将来的にコロナの影響が落ち着き、グローバルへの投資を強化していくタイミングで、そのプロダクト基盤が強い土台にもなると考えています。

稲垣 裕介

稲垣:
僕たちはユーザベースのプロダクトの競争優位性として、「エキスパート(独自の知見を持ったビジネスパーソン)」「データ(コンテンツ)」「テクノロジー(プラットフォーム)」の3つのコアアセットを定義しています。

エキスパートの方々に快適にシステムを利用いただくためにもエンジニアの力が必要ですし、データを生産性・正確性高く格納していくシステムをつくるためにもエンジニアの力が必要です。ユーザベースの競争優位性を強固にしていくためには、エンジニアの力が必要不可欠なんです。

この3つのコアアセットをベースにプロダクトが多角化していく中で、ここ数年で開発チケットは一向に減らず、むしろ増え続けている一方です。状況を改善するためにも、採用も含めてエンジニアチームを強化し、もっとスピード感を持って開発ができる体制を構築していかなければならないと思っています。

各事業のCEOやプロダクトオーナーたちも、仕様変更など開発の戻りがないように必死に考えて優先順位をつけています。ただやはり最後はプロダクトを出してみないとわからないこともありますし、挑戦した結果の失敗は学びにもなります。一番もったいないのは、市場投入できないまま議論だけが続くことです。

プロダクトの創造という答えのない領域だからこそ、議論だけでは前には進まない。実際に市場投入さえできればPDCAを回して前進することができるので、その意味でも継続的かつスピード感を持って、お客様にプロダクトの価値を届けられるチームを作ることが大切です。

ユーザベースのエンジニアカルチャー

稲垣:
ユーザベースがこれからも発展し続けていくことを考えたときに、このプロダクトのPDCAサイクルを早く回すことなくして先はありません。

市場全体を見てもさまざまなプロダクトがリリースされてきており、日本国内はもちろん、グローバルはさらに変化のスピードが早い。手前味噌にはなりますが、ユーザベースのエンジニアチームは、国内でも稀なレベルの技術力があると自負しています。足りていないのは、とにかくエンジニアチームの人員リソースなんです。

また早い開発スピードを維持していくためには、時間の経過とともに発生するシステムの技術的負債を解消しながら、コードの質にこだわって開発できることも大切です。この質とスピードの議論は常に追求すべきテーマではありつつも、仕事に追われている状態では健全に思考できないため、この観点でも一定以上の人員が必要になります。

今年の目標として掲げたエンジニアチームの強化を、何としてもやりきりたいと思っています。

ユーザベースには、どんなエンジニアが多いのでしょうか? エンジニアチームのカルチャーをひと言で表すと?

稲垣:
エンジニアの多くは課題解決型の思考タイプなので、誰かのために課題を解決をして感謝されることが好きな人が多いと思います。

稲垣 裕介

稲垣:
ユーザベースのエンジニアはその一般的な感覚以上に、チームとして協力して助け合おうとする傾向が強いなと感じます。それはエンジニア同士の話だけではなく、ビジネスサイドのメンバーに対してもその姿勢を持っています。細かい例ですが、経費精算など社内の手続き系の依頼に対して、うちのエンジニアチームはどのチームよりもきちんと期日を守るので、社外の方からはかなり驚かれますね(笑)。

たしかに社内を見てみても、エンジニアとビジネスサイドがお互いにリスペクトを持って接しているなという印象があります。

稲垣:
僕たちがここまで成長できた理由として、エンジニアとビジネスサイドが強い信頼関係を持って、両輪でプロダクト開発をやってきたことがやはり大きいと思っています。

ビジネスサイドがお客のニーズを聞いてきて、それを元にエンジニアが膝詰めで細かいレベルの議論をしながら「ここをこうしよう」と話したり、時には一緒にユーザーの声を聞きに行ったりすることもします。

プロダクトを作った後も、編集チーム・アナリストチームとともに強いコンテンツを載せていく必要があるし、営業チームがいてくれて初めてお客様に価値が届く。それ以外にもさまざまなチームのおかげで成り立っている。それを理解して、チームとして姿勢を持って開発をしてくれていると思います。創業期に意識してきたことが、今では強い文化としてみんなが体現してくれているのはとても嬉しいですね。

僕の視点からさらにもう一段超えてほしいところとしては、今はまだ「自分はエンジニアだから」「営業だから」といった役割の線引きが強く存在している感覚があります。お互いにリスペクトしているから、あえて踏み込まないようにしている部分もあるんだと思いますが、良いプロダクトをつくるためにも、もっと境界を超えて踏み込んだ議論ができるチームになるといいですよね。

稲垣 裕介

エンジニア出身経営者だからこその思い

稲垣:
僕自身の原体験を振り返ってみても、創業初期に共同創業者の梅田や新野さん(新野 良介)といったビジネスサイドの人間と、いわゆる「営業」と「開発」の摩擦を乗り越え、お互いの視点から経営強度を持って議論し続けてきたことで、ビジネス的にも技術的にも妥協しないモノづくりができた感覚があります。

当時、梅田や新野さんがプロトタイプをお客様に見せて対話してきた感覚から、仕様変更をしたいと言われたことがありました。そのときにビジネスのことはよくわからないから「梅田や新野さんがこう言っていた」とただの伝言として理解し、対応してしまったことがありました。

これでは本当の意味での課題に気づけないし、さらに仕様変更が起きた時に他責になってしまう。僕自身も仕様変更が何度も起きた時に「前に梅田がこうしろと言ったんだろ」と怒ったことがあり、その時に梅田から「稲垣の意見はどうなんだよ」と言われて、たしかに自分ならこうしたいと意見があったので、怒ったことを反省した記憶があります。

創業当時の写真

創業当時の写真

稲垣:
エンジニアのリーダーである僕がこういう考えの元に仕様変更をお願いしていくと、「また梅田から仕様変更が来た」とチーム分断の連鎖を招くし、エンジニアとしてお客様に向いたモノづくりができなくなっていきますよね。

ビジネスサイドが集めてきてくれたお客様の声をしっかり理解することで、「ここはもっと技術的にこういう表現方法がある」「これは他のシステムではできなかったかもしれないけど、この予算があれば必ず解決できる」と前向きな仕様変更や経営判断ができるようになりました。

また徐々に積み上がっていくシステムの技術的負債については、ビジネスサイド側の視点からは当然見えません。資金的にも人的にも常に経営資源が有限な中で、エンジニアが何をどうしたいのかを非エンジニアにも分かるように説明しなければ、前向きな意思決定はできません。

一方で経営として投資する対象は、システムに関連するものだけではなく多岐に渡ります。特に選択肢が少ない創業期は、エンジニアとビジネスサイドがしっかりとコミュニケーションを取り、その上でお互いが納得感を持って一緒に意思決定をしていくことが非常に重要です。

エンジニアがもっと経営に関わり、プロダクトを作っていく世界を実現したい

稲垣:
短期的にその時々での経営判断として、システム以外のことに投資する意思決定をすることもあると思います。それでも次の投資フェーズで、もう一度議題に上げて議論する。自分の担当に責任を持っているからこそ、自分の領域に対して経営強度を持ち主張することは、ある意味当然のことです。

なのでエンジニアは「ビジネスサイドはシステムのことをわかっていない」と他責にせず、みんなそれぞれの領域で責任を持ってくれていると信頼してほしい。そのうえでエンジニアチームとしても同じように、自分の領域の必要な投資を継続的に主張していくことが大切だと思います。

もっと良いプロダクトをつくって世の中に影響力を発揮していくためには、そういったエンジニアとビジネスの意志が、経営強度というレベルでもっと交わらなければなりません。お互いが自分の責任を背負っているからこそ、エンジニアチームとして経営に関わり、しっかりと意思を持って一緒に意思決定をしていって欲しい。

これは「エンジニアも財務や会計を勉強すべき」「エンジニアはみんなビジネス感覚を持つべきだ」といった形式的なことを言っているわけではありません。

稲垣 裕介

稲垣:
プロダクトを展開している企業にとって、プロダクト開発は事業成長の一丁目一番地、つまり経営会議としても超重要なトピックです。ビジネスサイドのメンバーたちも技術のことがわからないだけで、何より大切なプロダクト開発に必要なことを理解したくない人はいません。

エンジニアチームもそのことを理解し、もっと自信を持って技術視点から適切に経営に参画してほしい。1つのチームとして一緒に経営の議論・意思決定をして良いモノづくりをしていってほしいです。日本のモノづくりの強さを、システム開発の領域においてもどんどん発揮していってほしい。

もっとエンジニアが経営に参画し、ビジネスサイドと協力して世界に出ていくプロダクトを作っていく。そんな企業が増えていくことを願っています。

エンジニアとしてのハピネスを追求できるのがユーザベースの魅力

最後に、ユーザベースに興味を持ってくださっているエンジニアの方々へのメッセージをお願いします。

稲垣:
エンジニアにとっての自己実現やハピネスには、「新しくておもしろい技術に挑戦できる」というのがあると思います。

ある課題に対して複数の技術アプローチがあって、コストもそこまで変わらない場合、新しい方、おもしろい方を選ぶほうがいいですよね。その技術を使ってみたいという思いの裏には、今まで以上に良い課題解決ができる可能性があるという思いがあるはず。エンジニア個人としてもその好奇心を大切にしてほしいし、チームとしても新しくておもしろい技術への挑戦は、新しい刺激として良い変化を起こしていくと思っています。

ユーザベースには社内にSPEEDAやFORCASといったB2BのSaaSプロダクトもあるし、NewsPicksといったB2Cのメディアプラットフォームもあり、それぞれでさまざまな技術が活用されています。希望するチームに異動することも可能です。さらに先日、社内複業制度「DIVE」も新設しました。

技術は陳腐化するのが早いですし、昔懐かしい技術しか使えないエンジニアになってしまうのって本当に怖いですよね。その結果としてエンジニアは一定のサイクルで転職したり、フリーランスになったり、新しい環境でこれまで触ったことのない技術をキャッチアップしていくことが求められます。

でも本来であれば、せっかく価値観の合うチームと出会えたのなら、そのチームの中でこれまで触ったことがない技術に挑戦できる方が幸せなはずです。ユーザベースにジョインしていただいたら、同じ価値観を共有したチームの中でプロダクトを異動することもできますし、プロダクト単位で見てもいろいろな技術に挑戦できます。

たとえばSPEEDAはCTOの林(尚之)によってマイクロサービス化が進み、新しい技術もどんどん採用されています。NewsPicksも見えない部分での技術的負債の解消、そして新しい基盤構築の挑戦が進んでいます。FORCASやINITIALといった新しいフェーズのプロダクトもあります。

こういった環境だからこそ、エンジニアがチームとして強いプロダクトを生み出し、意義を持って世の中を変えていくということと、個人の自己実現やハピネスとして新しい技術に挑戦できるということが何の矛盾もなく追求していけるんだと思っています。

ぜひ新しい技術に挑戦することでエンジニアとしても成長し、世界を変えるプロダクトを一緒につくっていける仲間になっていただければと思います。

稲垣 裕介
編集:山田 聖裕 / 撮影:小田 稔郎
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