オープンなカルチャー、新しいチャレンジを求めてNewsPicksに
石井 幸次(以下「石井」):
もともと洋服屋の販売員をしていたんですが、そこを辞めた後に何をしようかと考えて、ウェブデザイナーを志しました。その流れでJavaScriptを触ってみたら意外と面白くて、途中でエンジニアに方向転換しました。
エンジニアになってからは、運よく優秀な人たちと一緒に仕事をすることができ、「彼らに追いつきたい」「できない奴と思われたくない」という一心で、毎日深夜2時頃まで書籍を読んだり、プログラムを書いたりしていました。そうやって技術を身につけて、次第にいろんな仕事を任されるようになっていったんです。
20代後半から、SIerやBtoBのソフトウェア会社、BtoCの事業会社などで開発リーダーとして経験を積んできました。アーキテクチャを考えたり、実装してみたり、またドッグフーディングとして実装が正しく行われているか、自分自身で動かして試すといったことを、さまざまなプロジェクトで繰り返してきた形です。
また、ある事業会社でのできごとをキッカケに、2010年初頭という早い段階でスクラム開発を取り入れ、実践してきました。今ではスクラム開発は当たり前に浸透しているかもしれませんが、当時はマイナーな手法ですべてが手探りでした。
当時いた会社では企画チームと開発チームの関係性があまり良くなくて、ちょっとギスギスしていたんですが、スクラム開発を取り入れた結果、その摩擦はなくなりました。一丸となってユーザーに向き合えるようになり、システム的にも大成功を収めました。それ以降の開発は、必ずスクラム開発をするようになりましたね。
石井:
私がQiitaで書いた記事を見たNewsPicksのメンバーに声をかけられたのがキッカケです。会って話を聞いてみたところ、NewsPicksのカルチャーに惹かれました。360度フィードバックという制度があり、オープンコミュニケーションでいろんな人の意見を聞くことができ、自身の成長につながるだろうと感じたんです。
また、自分はビジネス面の知識や経験が弱いなと感じていたんですが、ちょうどNewsPicksで法人領域のサービスが始まったばかりだっため、新しい事業に参加することで、その弱みを解消できそうだと感じたことも大きいですね。
私は人の意思決定の手助けができるプロダクトを作りたいと思っています。これまでを振り返ってみると、物事がうまくいくときは、たいてい自分の意思を持って何かを成し遂げようと取り組み始めているんですね。
経営者は孤独だという話をよく聞きますが、意思決定の手助けができるプロダクトを作ることで、自分の会社のメンバーからボトムアップで意見が聞けたら、経営者にも刺さるのではないかと思っています。そういったプロダクトを作ることが、NewsPicksで実現したいことの1つです。
人の視座や行動を変えるプロダクトを作る
石井:
NewsPicksの法人向けサービスであるNewsPicks Enterprise(以下、4B)を開発しています。4Bは「学びと組織文化を変える繋がりを生み出すプラットフォーム」です。その組織で働くビジネスパーソンが知るべき情報をワンストップで獲得できる場であり、その情報を起点に社員間の繋がりが生まれる。その繋がりによってできたものが外に出ていく。4Bチームの役割は、このための機能をどのように作るかを考え、実装することです。
大企業には優秀な人が大勢いますが、規模が大きいがゆえに優秀な人材が埋没してしまってたり、組織間の調整などの煩雑さによってやる気を削られたりといったことが起こってしまいます。そういった人たちが埋没しないよう組織の側に気づいてもらったり、その人自身の意識を変えて行動変容を促したりすることで、日本をもっと良くしていこうと考えているんですね。
4Bというプラットフォームを通して、異なる視点を持つ人々が建設的に意見を交わし、それによって人の目線や視座を変えるにはどうしたらいいか。これから作る機能はユーザーにとって本当に便益になるのか、マストハブ(Must Have)になるにはどうすればいいかといったことを常に考えながら開発を進めています。
石井:
技術的な面では、スマホアプリのアーキテクチャを最新に変えたいと思っています。NewsPicksというプラットフォームは、iOSアプリが2013年9月に、Androidアプリが2014年3月に各々リリースされました。リリース後7年~8年という月日が経っており、システム的に古い部分があることは否めません。
こうした技術負債を抱えたままでは、ビジネスの期待に応えられるようなスピード感のある開発ができなくなる可能性があります。さらに言うと、技術者のモチベーションや成長を阻害することにもなりかねません。エンジニアの採用優位性のない会社は遅かれ早かれ衰退していくと思っているので、この状況を変えていきたいですね。
技術刷新の一例を挙げると、AndroidではModel-View-ViewModel (MVVM)で、データバインディングを用いてアーキテクチャを作っています。DIコンテナはDagger Hilt、HTTPクライアントとしてはRetrofit2、Kotlin Flowを用い、またマルチプロジェクト化をしていますね。
現在このアーキテクチャを使っているのは返信機能の一部のみですが、4Bのシステムを徐々に移行し、うまくいけばNewsPicks本体も置き換えていきたいですね。4Bとして切り出して技術面を考えられるので、4Bで採用された技術から、個人向けに提供しているNewsPicks本体のプラットフォームをモダン化していくということも考えられると思っているんです。
また、iOSについてはアプリチームと一緒に検討を重ね、SwiftUIなど最新のアーキテクチャに変えていこうと考えています。これは具体で進んでいる話ですので、これから入社する方はこれらのアーキテクチャを使って開発していくことが可能です。
コトに向き合い、率直にフィードバックし合えるカルチャー
石井:
4Bは新規プロダクトなので、良くも悪くもいろいろなことが起こります。そんな中でも、価値のある機能をユーザーに届けたいという想いが強いメンバーで、コトに向き合うカルチャーがあると思います。
例えば昨年、セキュリティに関するタスクが多かったんですね。セキュリティの穴をふさぐという、技術者的には気持ちが重くなるような仕事でも、「これをやればユーザーが当たり前に安心して使えるシステムになる」と前向きに実装をしていましたね。
チームメンバーには、前職で会計パッケージを作っていたシニアエンジニアやタレントマネジメントシステムを開発したエンジニア、リクルートで新規事業の開発をしていた人、大企業から転職してきた方で、プロダクトを通して大企業を変革させたいという気概を持った人もいます。いずれも新規事業に取り組んだり、toB 向けのシステムを作ってきた人が多いですね。
石井:
先ほども言ったように、私は「意思」を大事にしたいと考えています。メンバーと接するときには傾聴の姿勢でいられるよう常に意識していますね。
NewsPicksでは評価制度も充実しています。規模が大きな企業では上司からのフィードバックしか受けられないことがほとんどだと思いますが、当社には先ほども挙げた「360度フィードバック」を取り入れています。これによって上司はもちろん、同僚や部下、他のチームで関係した人たちからもフィードバックを受けることができるんです。
これは自分を客観視するのにとても役立ちます。例えば、私は話すことが得意ではないのですが、ビジネスサイドのメンバーからすると、それが論理的に話していてわかりやすいという評価になります。逆に技術者サイドからは、文脈が飛んでいて何を言っているのかわからないと評価されてしまうんですけど(笑)。
同じ事象に対して、ビジネス側からの評価と技術者側からの評価が全く違っていて、いろんな視点からのフィードバックを得ることができるんです。これによって、例えばビジネス側と技術者側という観点で見ても、これまでフィードバックがないと気づけなかった両者の齟齬や違いに気づくことができます。仮に齟齬があれば、それをなくす努力がしやすくなりますね。
NewsPicksではエンジニアチームをマネジメントしているほとんどの人は、自らもプログラムを書いています。なので、よくありがちな技術を知らないマネージャーが何か決めていくというような体制では全くなく、エンジニアがエンジニアとして違和感なく活躍できる環境があるのではと思っています。
プロダクトがクライアントのリアルな現場を変える。ユーザーファーストで攻めの開発を実現
石井:
4Bは1〜2年前に立ち上がったプロダクトですが、セキュリティ面でのいわゆる守りの開発はほぼできつつあります。今後はどんどん攻めの開発ができるフェーズに入っていくので、ユーザーにとっていかに便益のある機能か?という視点から開発・実装をしていくことができます。
どういうプロダクトにしていくかはビジネスサイドが一方的に決めるのではなく、エンジニアも主体的に関わっていけるので、ユーザーファーストの考えを起点に、自分の意見をプロダクトに反映しやすい状況であると言えますね。
システム的にもNewsPicksというプラットフォームの古くなってきた部分について、法人向けプロダクトという形で切り出して取り組めるので、新しい技術を試しやすいはずです。ビジネス面、技術面の両軸を伸ばしていけるのではないかと思います。
石井:
そうですね。守りの開発は、当たり前のことを当たり前にやることが大切です。ここで得られるフィードバックは、セキュリティに穴が空いているといったマイナスのものがほとんどなんですね。でも、攻めの開発では、自分たちが考えた機能がどのように使われているのか、良くも悪くもユーザーからの反応が得られるんです。
例えば、2021年1月に実装したコメントの返信機能。もともとこの機能は組織内でのコミュニケーションの総量を増やす目的で作ったんですが、定量的には実にその総量が4割増しになりました。さらに興味深かったのは、定性的な部分です。あるコメントに対していろいろな人が意見を返信したことがキッカケで、部署をまたいだ有志でリアルな場でディスカッションが始まったそうです。
大企業で部署をまたいで有志が集まるというのはなかなかないことですよね。それが私たちの実装した返信機能を通して実現したんです。プロダクトの力で人の行動を、リアルの場を変えた。これが私たち4Bチームのやりたいことであり、今もそうした機能を作っているところです。
石井:
私たちは4Bの提供価値について「学びと繋がりのできるプラットフォーム」を作ることだと考えています。でも、実際これが正しいかどうかは、まだ誰にもわかりません。もし考え方が間違っていたとしたら、自分たちの力でピボットして全く違うサービスに転換することもありえます。そんなとき、1つの事柄や過去にとらわれるのではなく、前向きに考えられる人であってほしいですね。
あとはやりたいことの意思を強く持って、それをやるためにいろんな人と物事を進めていける人、オーナーシップを持ってみんなを巻き込める人は、チームのカルチャーにも合うと思います。