NewsPicksの第三のマネタイズの柱を育てる
麻生 要一(以下「麻生」):
僕は古くから梅田さん(梅田 優祐/ユーザベース共同代表)と知り合いで、リクルートを辞めて起業したタイミングで誘われました。

相羽 輝(以下「相羽」):
僕は入社して2〜3年ほど「SPEEDA」「FORCAS」「entrepedia」のマーケティングとインサイドセールスチームのマネージャーをやっていました。
もともとHR領域のサービスへの関心が強く、社内の新規事業プランコンテストでも提案して受賞もしていたんですね。その後紆余曲折あって、麻生さんが入社されたタイミングで「NewsPicks for Business」にコミットすることに決めました。
麻生:
入社後に、NewsPicksの新たなビジネスの可能性や、現状どのような課題があるのかなど、入社後1ヶ月かけて役員やマネージャーのみんなとディスカッションしました。その中で出てきたのが「NewsPicks for Business」です。
他に出たアイデアとしては、若手向けNewsPicksがありました。既存のNewsPicksは30〜40代の意識の高い男性のビジネスパーソンがコアターゲット。このまま進むと10年後には、ユーザーの中央値も10年分、歳をとってしまうかもしれない懸念がありました。どうやって下の世代をNewsPicksファンにしていくかという課題から出たアイデアです。
どちらも良いアイデアだったと思いますが、ディスカッションを重ねた結果、「NewsPicks for Business」を立ち上げることにしました。「NewsPicks for Business」では「社内限定NewsPicks」「NewsPicksアカデミア for Business」「NewsPicks Intrapreneur Drive」という3つのソリューションを展開します。
麻生:
マネタイズ、コミュニティの活性化、ユーザー数の拡大の3要素があります。
NewsPicksは現在、課金とブランド広告が収益の柱になっています。それに次ぐ第三のマネタイズの柱として、法人向けソリューションである「NewsPicks for Business」を育てていくつもりです。
コミュニティの活性化という意味では、NewsPicksは現在、ニュースにコメントをするピッカーさんたちのコミュニティ自体が価値になっているサービスです。今やユーザーが350万人を超え、コメントも毎日膨大な数が上がっていますが、コミュニティのサイズという点では、現状は公開された大きなコミュニティひとつしか存在しません。
「NewsPicks for Business」では、社内限定NewsPicksという少人数かつ閉じたコミュニティを提供することで、よりコメントしやすくなる、公開コミュニティではしにくいコミュニケーションを誘発するなど、コミュニティの熱量が上がることを目指します。
3つ目の「ユーザー数の拡大」については、これまでNewsPicksは広告やマーケティングを通じてユーザーを獲得してきました。さらに個々の法人向けに導入することで、これまでとは異なる層に拡大できると考えています。
企業の組織開発から新規事業開発までをサポートしたい
相羽:
大変ありがたいことに、企業の組織活性化に課題意識を持たれる方々からお問い合わせをいただいています。経営と現場のコミュニケーションを活発化したい、全社の情報リテラシーを底上げしたい、サイロ化する各部門の情報共有を促進したい、など特にインターナルコミュニケーションに課題を感じられている大企業の皆様からのお問い合わせが多い印象です。
スマホシフトやワークスタイルの多様化、転職の一般化などが背景にあり、従来のインターナルコミュニケーションでは、組織活性化や従業員エンゲージメントの向上といった課題への対応が難しくなっているのを感じます。プロダクトはまだ未熟ですが、インターナルコミュニケーションのあり方を変え、組織風土を良くしたいという情熱を持つ方に役立つサービスに育てたいですね。

麻生:
ただ、「NewsPicks for Business」では人材育成・組織風土活性化にはじまり、最終的には新規事業開発のサポートまでを手がけたいと思っています。そういう意味では、経営層や事業開発部門の方にも、もっと知っていただきたいです。
僕自身、前職からずっと企業の中で事業開発をやってきて、10年前と今とでは産業の垣根がほとんどなくなってきていると感じています。NewsPicksが追いかけているニュースのテーマには、ブロックチェーンやエストニア、次世代物流などがありますが、まさに産業の垣根がないニューフロンティアのようなトレンドですよね。
トレンドとしてのニュースを追いかけつつ、そこに知見のある有識者をプロピッカーとして抱えているNewsPicksのアセットは、企業の事業開発に有効だと考えています。3つのソリューションを使って、社員に知見をインストールすること、社内で事業開発し会社を変革していくことが、最終的に結びついていくと考えています。
会社を変革するなら、既存領域だけでなく新しい分野の知識も必要です。さらにその新しい分野の知見を持つ社外のプロとのネットワークも必要になると考えられます。
産業の垣根がなくなっていく中、フロンティアの知見と有識者を使った事業開発プログラムを展開する。それを3つ目のソリューションである「NewsPicks Intrapreneur Drive」で実現していきます。

麻生:
私の見えている範囲では、既存事業の利益が上がっていても、10年後もそれをキープし続けられるかと問われて、自信をもってYESと答えられる会社は少ないと思います。であれば今の好景気のうちに、上がった利益を新規事業に投下しなければという熱量は高まっています。
しかしこの20年、さまざまな事情で、新規事業を生み出した経験のある会社は少ない。そして新規事業の経験がある人は、その間にリストラや定年退職などで会社を去っています。
ボードメンバーや役員に新規事業経験者が1人もおらず、判断ができない、そもそもやり方が分からないというケースもあります。会社のルールが既存事業のリスクヘッジやコーポレートガバナンスに偏りすぎて、たとえ現場が何かやろうと思っても難しい例も多いですね。
麻生:
それだけでは難しいでしょうね。
若手の教育やリテラシー向上の施策はどんどんやるべきだし、現場も経営陣に意見を言えるようにならなければなりません。そのためには仕組みを変え、風通しを良くして事業に投資が回るようにしていく必要があります。しかし、この10〜20年で既存事業しかやっていない人と、彼らに教育された新人で構成されている会社が多く、すぐには変わらないと思います。
「NewsPicks for Business」は9月に発表したばかりなので、10〜12月は立ち上げ期と捉えています。顧客に提案しながらどんなニーズがあるのか、どのぐらいのプライシングが適切か、どんな機能が必要かなど、エンジニアも巻き込みながら詳細を詰めている段階です。
HR領域から、社会を変えていく

相羽:
企業のインターナルコミュニケーションへの課題を原体験として持っている方です。私自身、大企業・スタートアップそれぞれの組織で働きましたが、サイロ化する組織の情報共有や、全社の情報共有でいかにエンゲージメントを高めるかなど、日々課題意識を持ってきました。その時の原体験と共感が、いま対面するお客様との会話や事業開発にも活かされていると感じます。
また、NewsPicks for Businessに限りませんが、新しいアイデアは社内で多く出てくる一方で、仕組み化し、組織を安定させられる人は、全体で不足していると思います。目標やビジョンから逆算し、施策やオペレーションに柔軟に落とし込める方は活躍されると思います。
麻生:
ユーザベースは、私がこれまで見てきた会社の中でも、カルチャーが非常に強いという特徴があります。7つのルール(現「The 7 Values」)をはじめとするカルチャーに合うかどうかは大前提。
何らかの判断の際「社内で○○さんがOKって言ったから」「あの会議で××って決まったから」と組織の理論が強くなってしまうケースがよくあると思いますが、ユーザベースでは、常に「ユーザーがHappyになるのか?」「サービスの未来を考えて本当に必要か?」など、常にユーザー目線で意思決定します。
だから会議で決まったように見えることも、普通にひっくり返ります。それに馴染めない人には、厳しい環境かもしれません。
HR領域にいる人の中には、事業開発を手がけたい思いを持ちつつ、なかなか実現できていない人もいるはずです。人材育成や組織活性化から事業開発に関わるのは強みを活かせる近道だと思うので、事業開発を目指すHR領域の人には、ぜひ話を聞きに来ていただきたいです。
麻生:
NewsPicksは、事業もプロダクトもすごく伸びているフェーズです。NewsPicksのような成長率の高いところで事業開発を経験すれば、圧倒的に成長し、キャリアのチャンスにも恵まれるはず。
NewsPicksのアセットを法人に提供し、その法人を変えることで社会を変えていきたい。人材育成や組織活性化に取り組みつつ、いずれは事業開発をやってみたい──そんな気概のある人と一緒に、この「NewsPicks for Business」を成長させていきたいと考えています。
本記事にはすでに退職したメンバーも含まれております(組織名・役職は当時)

