「誰もがビジネスを楽しめる世界」を探索するコーポレートマガジン
メンバーの異能を輝かせる「山に一緒に登るリーダー」の哲学

メンバーの異能を輝かせる「山に一緒に登るリーダー」の哲学

私は周囲を引っ張る強力なリーダーではないけれど、チームの仲間が異能を発揮する環境をつくる、「山に一緒に登る」タイプのリーダーを目指したいです──執行役員 スピーダ事業 マーケティング担当の半澤瑞生は、自分自身のリーダーシップについてそう分析します。メンバーの異能を発揮させるために意識していることや、自身の失敗から学んだこと、ユーザベースの未来に向けての取り組みついてインタビューしました。

半澤 瑞生

半澤 瑞生MIZUO HANZAWA執行役員 スピーダ事業 マーケティング担当

大学卒業後、米国大学留学。帰国後、英系グローバル企業に入社、法人営業として従事。2016年、ユーザベース スピーダ事業マーケティングチームに入社。2020年よりSaaSマーケ...

MORE +
目次

「異能をどう発揮させるか」考え抜く

半澤さんがユーザベースに入社してからのキャリアを教えてください。

2016年に入社してすぐ産休・育休に入り、2018年の春に復帰しました。その後旧FORCAS、旧INITIAL、旧SPEEDAが統合した2020年以降、スピーダのさまざまな事業のマーケティングに携わる機会に恵まれました。

2020年に知財・研究開発領域(以下「R&D」)のマーケティング立ち上げ、2021年にはR&Dと旧INITIALの2つの領域のマーケティングリーダーを兼務することに。2022年からは旧FORCASのマーケティングリーダーをしてほしいと言われて旧INITIALを手離し、R&Dと旧FORCASのマーケティングリーダーを兼務することになりました。ちょっとややこしいですよね(笑)。

2024年7月からは、NewsPicksの広告事業でもDivisionリーダー(※)を兼務し、現在はスピーダ事業とNewsPicksBrandDesign事業のマーケティングを担当する形となりました。

ユーザベースは、スピーダ・NewsPicks・Corporateというカンパニーの下に、Domain>Division(2ndライン)>Team(1stライン)という組織構造になっています

さまざまなチームのリーダーを歴任していますが、自分がリーダーに選ばれたのはなぜだと思いますか?

周囲からは、ゼロイチを強力に立ち上げられる「推進力」があると言われますね。稲垣さん(稲垣 裕介/ユーザベースCEO)には、「一緒に登るタイプ」と言われたことがあります。「どの山に登るのがすばらしいか、それはなぜかを説く人」と、「一緒に登る人」のタイプでいえば、後者だと。

確かに、周囲を引っ張る強力なリーダーシップはないけれど、チームの仲間が能力を発揮する環境をつくることに貢献するのが、私なりのリーダーシップだと思います。

リーダーには、メンバーの成長を促し次世代のリーダーをつくる役割と、会社から求められる数値をつくる役割が求められます。半澤さんは自身のリソースをどう配分していますか?

楽しく仕事をすることは大事なことである一方で、グロース組織として事業数値をつくっていく。その双方を導くのは相当難易度が高いと感じます。そんななかで心がけていることは、大きくふたつあります。

ひとつ目は、情報をできる限りスピーディーに的確にメンバーに共有して、メンバーが意思決定しやすい環境を意識的につくるようにしていること。

ふたつ目は、目標設計をこだわりぬくこと。とことん納得いくまで対話して、ゴールを決めます。自身の強みを活かした納得のいく目標を置くためには、情報がしっかり行き届いている状態をつくっておく必要があります。定量と定性の両立が大切ですね。

特に旧FORCASではすごく厳しい戦略をとっていて、ミドルマネジメントの重要性を感じていました。

執行役員 スピーダ事業 マーケティング担当 半澤瑞生
半澤さんがリーダーとして大切にしている価値観は何ですか?

2024年に特に「芯」にしていたのは、オーナーシップとフォロワーシップを両立することでした。

難易度が高い事業に対して、自分がどの領域でオーナーシップを取るか選択するのはものすごく大変ですし、自分ではない他者が発案したことに対してオーナーシップを自ら発揮していくのも難しいなと。

具体的には昨年、R&D組織からインサイドセールスの役割を巻き取ったんです。自分にそれができるか不安だったんですが、そうすることで組織がよくなるのであれば領域を超えてでもオーナーシップを発揮して事業を前に進めたい。

それと同時に、他者がその強みを活かしてオーナーシップを発揮するための支援をすることこそ、本当の意味でのフォロワーシップなんだと思いました。

このふたつは、自分にとって大切な価値観になっています。

リーダーとして全体を俯瞰して見る視点はどう身についたんでしょうか。

ユーザベースに入社して、ものすごい「異能」を持った人たちと働いてきたからだと考えています。

当時リーダーで今は執行役員の翔陽くん(西川 翔陽/上席執行役員)、竜さん(伊藤 竜一/執行役員)、平野さん(平野 友規/専門役員 スピーダ事業CDO)や、退任したJJ(酒居 潤平/元執行役員)、たぐっちゃん(田口 槙吾/元執行役員)のような圧倒的な異能の持ち主を前に、「この異能をさらにどう発揮させるか」「自分はどう貢献できるか」を考え抜く。これができるのは、ユーザベースでリーダーを務める“超価値”だと思いますね。

入社してすぐの頃は、異能の持ち主たちを前にして自分の無力さを感じたこともありましたが、彼らが異能を発揮「する」のではなく、私が彼らの異能を発揮「させる」んだと切り替えたことで、俯瞰の視点につながり、自分の弱みを明確化することができました。

リーダーは「真似」から始まり独自性へと進化していく

半澤さんにとって、リーダーとはどんな存在ですか?

ユーザベースにはさまざまなタイプのリーダーがいますが、共通しているのはみんながそれぞれのリーダーを信頼していることですね。リーダーという重圧、役割を互いに理解し、信頼・感謝しあっているんです。

信頼して任せる。私自身も、常に意識しています。

そのなかで、半澤さんらしいリーダーシップの発揮の仕方って何ですか?

周りからよく言われるのは、「月曜から元気だよね」ですね。私自身、自分が機嫌よくいられるように、セルフコントロールを心がけているんです。リーダーは数字を詰めるポジションでもあるので、そこでピリピリして見えないよう、ご機嫌でいるようにしています。

とはいえ、メンバーに厳しいことを伝えなくてはいけないシーンもあると思います。そういうとき意識していることは?

「答えを言わない」ですね。実はこの方法だと本人としては意思決定までに時間がかかる。その代わりに遠回りでも意思決定や課題解決の方程式さえわかれば再現性がもてるし、「自分で意思決定した」という手触り感を得ることができるんですよ。

この場合に気をつけているのは、対話を諦めないこと。対話を重ね、メンバーからの答えが出るまで、なるべく待ちます。

一方で、経営や事業が止まってしまわないように、答えを出すまでの期限を決めておきます。たとえば「1ヵ月後までに、来週までに、明日までに答えが出なかったらこうしよう」というふうに、答えが出なかった場合のアクションまで含めて握っておきます。

ユーザベースではNewJoiner(中途入社メンバー)に対して「3分探して見つからなければ人に聞け」と伝えますが、それと近い感覚ですね。

執行役員 スピーダ事業 マーケティング担当 半澤瑞生
組織課題はどう把握していますか?

一次情報を取りにいくようにしていますね。過去に自分の見立てが甘くて、大きなダウンサイドになってしまった失敗がたくさんあるので、必ず問題が大きくなる前に現場の情報を取りにいくようにしています。

特に「前に進んでいないな」と感じたら、すぐ現場に入るようにしています。たとえば「このリーダー、先週も同じこと言っていたな」と思ったら、恐らく何か困っていることがあるはず。なので私も現場に入って解決方法を話し合います。

1stラインリーダー(※)には都度、その解決方法を「真似してもいいんだよ」と伝えていますね。独自のリーダーシップを見つけるのは大切ですが、常にそれを考え続けるのってしんどいじゃないですか。私自身も周りのリーダーの真似をして、成功体験を得ながら少しずつ独自性を見つけていきました。

再掲:ユーザベースは、スピーダ・NewsPicks・Corporateというカンパニーの下に、Domain>Division(2ndライン)>Team(1stライン)という組織構造になっています

失敗から得られたフィードバックは「宝物」

ユーザベースでのキャリアで「失敗」や「挫折」を感じた出来事を教えてください。

3つあります。

1つ目は、2020年のSaaS事業統合のとき。当時SaaS事業統合でリーダーになった人たちはすごく能力の高い人たちばかりで、その顔ぶれを見て「私はうまくできるんだろうか」と不安で仕方ありませんでした。

悩んでいる私に対して稲垣さんがかけてくれたのが、「半澤さん、そろそろ覚悟決めなよ」のひと言。「私に足りていないのは、周囲の『異能』を持つ人たちを支える覚悟だったんだ」と気がついて、そこから世界が変わりました。

このときから、「自分の『覚悟』とは何か」「『覚悟』を発揮できる領域はどこか」が自分のなかで、軸のひとつになっています。

2つ目は、旧FORCASでセミナーのモデレーターを務めたときですね。いわゆるB2Bマーケターとして、業界の第一線で活躍している同じマーケターの方々を相手にモデレーターを務めなければいけないので、とにかくその業界のこと、会社のこと、取り組みのこと、マーケティングそのものを更に深く勉強する必要がありました。

毎週のように開催するセミナーに合わせて資料を読み込まないといけないし、数千人が視聴するのでがっかりさせたくない。事前に壁打ちをして、終了後はユーザー様からフィードバックをもらって、それがつらくて落ち込んだことも数えきれないほどありました。

とにかく大変でしたが、これは自分にとっての成長期間だと思ったし、やっているうちにだんだんと楽しくなる感覚がありました。

「つらさ」から「楽しさ」へ、どう変換できたんでしょうか。

自分は学習欲や内省的な傾向が強いんですが、それを強みとしてセミナーに活かせばいいんだと思ったんです。「知的好奇心」という自分の強みの活かし方がわかって、徹底的な事前準備、自分らしい問いの立て方、視聴者がどういうモチベーションで参加しているか、コンテンツの内容をそこに合致させたり、逆にちょっと裏切ってみたりすることを楽しめるようになっていきました。

この境地にたどり着けたのは、たくさん失敗をしたからだと思っています。失敗すると、その分フィードバックがもらえます。そのフィードバックを「宝物」にしてきたんです。もちろん、よいフィードバックも同じ。フィードバックを受け入れるスキルを身につけられたことも、自分の転機だったと強く思います。

執行役員 スピーダ事業 マーケティング担当 半澤瑞生
「失敗」の3つ目は何ですか?

冒頭でチームがうまくいくことと、数字を達成することのバランスを取るのは難しいという話をしましたが、まさにこの定量・定性のバランスを誤ってしまったことがありました。数字が伸びていないときに、メンバーに厳しく接してしまって、チーム内がギスギスしてしまったんです。

要は、自分の機嫌が取れていない期間があったんですよね……。自分自身はそれに気づけず、メンバーからアラートを出されて、ハッとしました。

そこから、メンバーとの対話を重視するようになりました。実際に話してみると、いろいろな意見があって。私がリーダーとして否定されたわけではなく、伸びしろを指摘してもらったんだという気持ちになりました。このときも対話を諦めなくてよかったですね。

当時は「私はリーダーとしてダメなのかもしれない」と思ったし、ユーザベースを辞めたほうがいいのかもしれないと思い詰めるほどでした。

このときも稲垣さんが伴走してくれたんですが、「メンバーからのフィードバックは、成長の根源がそこにあるということなんだ」と言ってくれて。そしてなによりも、私というリーダーを信じ続けてくれました。そしてそこから「逃げる」という選択肢はなくなりました。

自身もたくさんの失敗をしているわけですが、1stラインリーダーが失敗をしたとき、どうサポートしていますか?

リーダーたちが失敗をしたときは、その事象に対して何がいけなかったのかを分析するのではなく、「あなたは他者に何を理解してほしかったのか」「なぜそれがうまく伝わらなかったのか」という対話をしています。

私は、自分が任命したリーダーに、「あなたらしいリーダーになってほしい」と伝えています。でも「自分らしいリーダー像」を実現するのって、とても難しいんですよね。なぜなら、何が自分のよさで、何が苦手かをわかっていないといけないから。だから、失敗したときはそれに気づいてもらう対話の仕方をします。

そう思うと、ユーザベースのリーダー陣には、失敗しても「逃げない」というフィロソフィーがあるように感じますね。みんな、先が見えない中からゴールを見つけて、そこに向かって走っていく「主体性」を持っています。

ユーザベースが理想としているチーム経営とは「主体性」であって、各人それぞれの原動力があるから、ときに恐怖や臆病な気持ちがあっても逃げずに失敗に立ち向かえるんじゃないかと思いますね。

「いま」と「未来」両方をつくるリーダーでありたい

半澤さんがいま最もワクワクしていることは何ですか?

ユーザベースは、創業当初の梅田さん(梅田 優祐)、新野さん(新野 良介)、稲垣さんの3人体制のときから長らく、遠心力経営をしてきました。この体制下でのチーム経営も大好きだったんですが、2025年1月から稲垣さんの単独CEO体制になり、求心力経営になることでどう変わっていくのか、ワクワクしています。

また、昨年7月からスピーダとNewsPicksを兼務することで、ユーザベースALLでの価値、独自性、またその伸びしろが加速度的に理解できてきました。ユーザベースの新たな投資、戦略とともに、覚悟がもう一段上がり、ワクワクもありますが、同時にとてもヒリヒリしています。

ヒリヒリ感との向き合い方やチャレンジに対するマインドセットの持ち方で、意識していることはありますか?

思考と行動を行ったり来たりすることです。考えながら行動する。考えていても、行動を止めない。物事によって、1日で答えが出せることかもしれないし、1週間かかるかもしれない。難易度が高ければ1ヵ月かかるかもしれません。そこは自分でリソース配分をコントロールし、事業における優先順位を照らし合わせながら、行ったり来たりを繰り返しています。

以前ある役員の方が言っていたんですが、リーダーとして責任範囲が広がれば広がるほど思考の量が増えていくと。考えないようにしていても、役割だとか責任だとか、土日も思考で埋まっていくというんですね。

楽しくて考えることを止められないケースもあれば、つらくて仕方ないときもある。キャパシティを超えるときもあるけれど、とにかく思考をしているんだと。それを聞いて、自分にはまだまだ思考の量が足りていないと感じました。

新しくリーダーになった人たちに期待していることは何ですか?

「いま」と「未来」、両方をつくることができるリーダーになってほしいと思います。現在の事業数字や成長目標の達成、いまの顧客満足をつくっていくことと同時に、未来をつくる。特にマーケティングのリーダー陣にはそれを期待したいですね。

自分のタイトルが上がると、それにつれて向き合うお客様の層も変わっていきます。よりハイレイヤーのお客様と向き合うことで、「自分はまだまだだな」と感じることがたくさんあります。「すごいな」と。そう思わせてくださるお客様って、皆さん思考の時間軸が長いんですよね。

「ビジョナリーであれ」だと難しいと思うんですが、そうでなくてもいいので、長い時間軸で物事を考えられるリーダーであってほしい。

今年から新体制になったユーザベースは、みんなが少しずつ背伸びする時期に来ています。未来につながる「いま」にできるように、全力で「チーム稲垣」を支えていきたいですね。

執行役員 スピーダ事業 マーケティング担当 半澤瑞生

編集後記

みみさん(半澤のあだ名)にインタビューするのは、約4年半ぶり。当時から活躍していましたが、この4年半でさまざまな組織のリーダーを務めたことで、めちゃくちゃ進化しているな〜と感じるインタビューでした。次にインタビューするときはどんな進化を遂げているのか、今から楽しみです!

関連記事
post-link-image
「新しい価値は抽象化思考から生まれる」異なる事業を融合させ非連続の成長を追求するリーダー論
View More
viewmore-image
関連記事
post-link-image
逃げずに立ち向かう。未来へのバトンをつなぐリーダーの原動力
View More
viewmore-image
関連記事
post-link-image
ビッグビジョンを描くのがリーダーの責務──「美点凝視」でメンバーの異能を活かす
View More
viewmore-image
関連記事
post-link-image
ユーザベースの未来に向けてリーダーを育成し、「背中を預け合える組織」をつくりたい
View More
viewmore-image
関連記事
post-link-image
子育ても仕事も、学びも遊びも全部諦めない(SPEEDAマーケター 半澤瑞生)
View More
viewmore-image
執筆:宮原 智子/デザイン:金子 華子/撮影・編集:筒井 智子
Uzabase Connect