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仕事も人生も「自由」であるために成果を出す──SPEEDA JAPAN Field Sales Teamリーダー山下由梨絵

仕事も人生も「自由」であるために成果を出す──SPEEDA JAPAN Field Sales Teamリーダー山下由梨絵

ユーザベースの多様なリーダーに光を当てる企画、「Diversity Empowermentシリーズ」、今回はSPEEDA JAPAN事業Field Sales Teamリーダーの山下由梨絵が登場。リーダー就任の打診を受けたとき、「周りは『レジェンド』ばかりで、正直不安だった」と振り返る山下。SPEEDAをスケールさせるためにも、再現性ある次世代のリーダーが生まれるべきだ。そんな想いでリーダーに就任した山下に、メンバーとの関係性や自分自身の働き方、DEIBの取り組みについて聞きました。

山下 由梨絵

山下 由梨絵YURIE YAMASHITASPEEDA JAPAN Field Sales Team Leader

岡山県出身。2014年に同志社大学卒業後、新卒で株式会社マイナビに入社。進学情報事業部にて学校法人向けメディア営業と事業推進に約6年従事、そののち株式会社セールスフォース・ド...

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目次

「レジェンド」たちの中で再現性あるリーダーになりたかった

はじめてリーダーを打診されたとき、どう思いましたか?

2022年2月、入社してから1年弱でユニットリーダーを打診されたんですが、当時はここまで人数規模も大きくなく、こぢんまりとした組織が急拡大している時期でした。
 
そんなタイミングでユニットリーダーに就任するのは難易度が高いんじゃないかと思いましたし、周りにいるリーダーといえば「異能は才能」を地でいくような、「神」や「レジェンド」みたいな人ばかりで、自分がその道でやり切れるのかという不安が大きかったですね。
 
当時はありたい姿として、自分のキャリアにとってプラスになることには挑戦したいし、個性が発揮できる状態でいたいと考えてはいました。その先にリーダーという道があることは漠然と考えていたんですが、リーダーになることについて、そこまで強いWillはありませんでした。
 
ただ、SPEEDAには次世代のリーダーが必要なんじゃないかとは思っていたんです。チームの状況を見たときに、同じ年代のメンバーで退職した人がいて、理由を聞いてみると「リーダーになる像が思い浮かばない」と言っていて。
 
事業規模と組織拡大の狭間で、「リーダーはワーカホリックに働く」という雰囲気がまん延していた時期だったんでしょうね。
 
ワーカホリックなリーダーばかりでは、誰も次世代のリーダーになりたがらないと思ったし、それでは再現性がない。このままではSPEEDAはスケールしないんじゃないかと思っていました。

SPEEDA山下由梨絵

そんなとき、周りから「リーダーに向いていると思う」とありがたい後押しがあったので、挑戦することに決めました。以前から私が自主的にメンバーのメンターをしていたり、メンバー間の調整をしたりといったことをしていて、メンバーとの信頼関係のベースができあがっていることを評価していただいたんだと思います。
 
そんなこともあって、未来のSPEEDAのためによい意味で「ふつうのリーダー」になろう、サステナブルなリーダーであろうと決めました。

ユーザベースでは「リーダーとマネジメントは別のものだ」と言われますよね。リーダー就任時、この点についてはどう考えていましたか?

まさに、リーダーを引き受けるときに両者の違いについてものすごく考えました。ただ、ユニットリーダーは役割としてマネジメント要素が強いので、いったんはこれまでの自分でいいかなというのが当時の答えでした。
 
というのも、まずは足もとの数字を上げることが大事だったし、人数が増えてSPEEDAのセールス経験の浅いメンバーが増えると、単純にマネジメント、管理をしなければ物事が進みません。こういうフェーズも必要だと思って、ユニットリーダーになりたての頃はあえてマネジメント業務にコミットしていました。
 
ただ、リーダーとして「未来をつくる」ことに目を向けないといけないのもわかっていました。たとえば、他部署と連携しながら新しくコミットする指標をつくったり、今後の組織設計をしたり。もう少しエモーショナルな言い方をすると「想いを伝える」だったり。ユニットリーダーからチームリーダーに転換するにあたって、そうした方向にシフトしてきた1年でした。

ユーザベースで実際にリーダーをやってみてどうですか?

リーダーとマネジメントの違いも含めて、1年間は手探りでしたね。組織が急拡大する中で、環境の変化に適応しながら再現性のあるリーダーを目指すことの難しさを実感しています。
 
とはいえ、ユーザベースはどこまでいっても失敗が許される環境なので、心理的には楽ですね。「ダメだったら降りればいいや」くらいの発想で向き合っていたので、難しさがありながら変な追い込まれ方はしませんでした。

SPEEDA山下由梨絵
就任前に想像していたリーダー像と、実際に就任してからのリーダー像にギャップは感じますか?

ユニットリーダーはある程度、想定の範囲内の難しさでした。マネジメントの要素が強かったので、自分のスキルの延長での話がしやすい。そこにメンバーの特性を加味してアレンジしたり、言い方を変えたりといった対応ができたんです。
 
チームリーダーになってからのほうがギャップを感じますね。いっきに視座が変わって、気にしないといけないことの質が大きく変化しました。根っこにある顧客志向の部分は変わらないんですが、対顧客から対社内に、コミュニケーションが内向きになるんですよね。
 
インサイドセールスだとか、別部署のステークホルダーとのコミュニケーションの強度が上がる一方で、ユニットリーダーも兼務しているので、頭の切り替えが想像以上に大変です。

ワークライフバランス=「やりたいこと」が選択できる状態

仕事だけでなく、人生においても、何を大事にしているか聞かせてください。

自由であること。仕事でもプライベートでも、「これをやりたい」と思ったときに、やりたいことを選択できるだけのスキルや余裕を持ちたいと思っています。
 
そのためには、自分自身が常に評価されたり、何かにコミットしていたり、信頼されたりする必要がある。自分の中で、「自由であるために頑張って成果を出す」というサイクルがあります。
 
ユーザベースは「あなたのWillって何?」と問われることが多いんですよね。ですが私はWillというよりTo Be、「ありたい姿」のほうがあります。
 
たとえば、ワーケーションしたいとか、休みを取って旅行に行きたいとか、欲しい化粧品を買いたいとか。仕事面でも、もしかしたら今後大きなWillが出てくるかもしれない。やりたいことがたくさんあって、それらを「やりたい」と思ったときに自分のスキルや余裕がないせいで実現できないことがないようにしたい。そんな「ありたい姿」は明確ですし、それは実現できている状態なので、ありがたいと思っています。

SPEEDA山下由梨絵
ワークライフバランスについて、どう考え、実践していますか?

働き方を自分でデザインすることとか、自分の意思で変化させられることだと思っています。働く時間も、9〜18時がいいと思う人ばかりじゃないと思っていて。働きたい人は働いたらいいと思うんですよ。もちろん常識の範囲内で。
 
それを否定するつもりはなくて、ただライフステージや突発的な事情によって、プライベートに比重を置かないといけなくなったとき、そっちに舵を切れる状態かどうかが重要だと思うんです。
  
実際でいうと、私は仕事を頑張りたいときはとことん頑張りたいんですよね。特に2023年1月頃は頑張りどきで、いま成果を出さないと今後もう達成できないという時期でした。
 
当時は、「サステナブルなリーダーは諦めたんですか?」と聞かれたりもしたんですが、そのときは「いまが頑張りどきだからだよ、これをずっと続けるつもりはないよ」というスタンスをみんなに伝えていました。
 
この考え方や働き方が変わるときがくるかもしれませんが、そのときはそのときで自分の最適を探していきたいです。

とはいえ「頑張りどきだから頑張る」という考え方に対しては、「それはワーカホリックでは?」と思うメンバーが出てくるかもしれません。

わかります。でもその都度、大事なものを自分で決めることが重要なんだと思います。
 
頑張らなきゃいけないと思うと全部「やらないといけないこと」に見えてしまうんですが、「やらないこと」を決めることも同時にすごく重要です。かけた時間=成果になることもあれば、そうじゃないことも多いので。パンクしそうなメンバーとは、一緒にタスクの棚卸しをすることもあります。

本質的に成果を出すには何が必要か、何をやらなくていいかを柔軟に考えるべきだと思います。

SPEEDA山下由梨絵

「曖昧な表現をするリーダーはかっこ悪い」傾聴し、伝えるべきことはストレートに伝える

うまくいかなかったとき、どうしましたか?

うまくいかないときは大きく2パターンあって、ひとつはそもそも何がボトルネックになっているかがわからないこと。もうひとつは、ボトルネックがわかっていても、私の引き出しでは解決方法がわからないこと。そういうときは、すぐに誰かと1on1します。
 
相談相手はメンバーや上司、HRやカスタマーサクセスといった他部署の人など、テーマによって意識的に相手を分けて思考の整理をするようにしています。
 
そうすることで何がボトルネックか明確になったり、まるで違うところに解決方法があることがわかったり。そもそもそんなに気にしなくていいこともあります。

なかなか相談できずに悩む人もいると思うんですが、山下さんはなぜそんなに自然に相談ができるんですか?

自分の脳の限界を知っているんです。メタ認知することをとにかく重要視していて。仕事がうまくいかなかったときや人生の苦しかったときなど、誰かと一緒じゃないと解決できなかった経験があるので、ひとりで考えすぎないようにしています。私は内省思考が強すぎるので、特に意識しているところです。自然に相談できるのは、相談しやすいような関係性を周りと築けているということだと思うので、それは本当にありがたいですね。

メンバーと話すときに意識していることはなんですか?

ストレートに話すことと、コンテキストを共有することのふたつです。
 
自分の中で、曖昧な表現をするリーダーはかっこ悪いと思っていて。メンバーに寄り添いすぎると表現がすごく曖昧になるんです。曖昧な表現はメンバーを惑わしてしまうので、なるべくストレートに話すことを意識しています。
 
メンバーから相談されたことに対してはストレートに意思決定しようと決めているんですが、その背景に何があるかとか、細かい機微についてはちゃんと伝えて、感情面のフォローをすることも必要です。
 
ただ、メンバー育成という視点でいうと、相談されたことに安直に答えを出せばいいというものではないとも思っています。その人の成長フェーズに応じて、考えるプロセスを大事にしてもらうために、あえて答えすぎないようにすることもあります。

ストレートに言い過ぎてメンバーが萎縮してしまうことはないですか?

おそらくないです。1on1を終えたあとや四半期の終わりに、メンバーが私にフィードバックを書いてくれるんですよ。「言いにくいことをハッキリ言ってもらえるけど、角がない」「適切なタイミングで適切な言い方をしてくれるから、やりやすい」とか。私の想いが伝わってるようで、それは嬉しかったですね。

SPEEDA山下由梨絵
1on1のときに気をつけていることは?

傾聴の姿勢を大事にしています。説法を垂れるのはやめようと思っています。私のほうが話しすぎてしまって反省することも、もちろんあります。ただ、1on1は基本的にメンバーのための時間だと思っているので、相手のしゃべりたいことを「聞ききる」ことは意識しています。
 
上司の海野さん(海野 悠樹/SPEEDA事業Sales Division Leader)に1on1をしてもらうと、「今日しゃべりたいことはある?」と必ず最初に聞いてくれるのが印象として残っているんです。あと自分が1on1してもらう立場なら、言いたいことを言えないと不完全燃焼でツラいと思うんですよね。
 
そもそも1on1は余白の時間だと思っていて、なるべく内容を決めないようにしています。
 
オンライン中心のコミュニケーションでは、発散的に話す機会が必然的に少なくなってしまいますし、チーム定例ミーティングや進捗確認のミーティングなどが結構な頻度で入っているので、1on1はあえて案件やアジェンダの話に特定しないようにしています。

メンバーと意見が対立したときはどうしていますか?

これはひたすら客観的に整理するしかないですね。対立が起こるとどうしても感情が入ってしまいます。意見のメリット・デメリットの話と感情の話を分けて考えないと、論点が散らばってしまって余計にこんがらがってしまいます。 

なので、お互いの持つ意見の客観的なメリット・デメリットはこうだよね、その背景にある私の感情と、メンバーの感情はこうだよね、というふうに一度洗い出します。
 
そのうえで、メリットの多いほうや、顧客や事業にとってベストな選択肢を選ぶ。ここは割とデジタルに判断しています。ただ、議論で潰されると頭では理解できても感情的に納得しにくいと思うので、感情の共感は丁寧に時間を割くようにしていますね。
 
ただ、リーダーだから/メンバーだから、といった立場によって対立してしまう場合、どうしても私の意見には事業的な要素が加わってくるので、メンバーの意見を取り入れきれないときは「事業判断だからごめんなさい」とストレートに伝えることもあります。

DEIBに取り組むことは個人の幸せと組織の成果の最大化につながる

ユーザベースのDEIBについてどう思いますか? 山下さんにとってのDEIBとは?

私はそもそも、DEIBに限らずユーザベースの考え方が好きで入社しました。
 
他社が開示していないことも開示している点や、開示している内容は、私が好きになったユーザベースだなと思いますし、それを実現しようとしている姿勢にすごく共感できます。企業としてDEIBに力を入れているところを誇りに思いますね。

DEIBに取り組むメリットは何だと思いますか?

個人の幸せと組織の成果の最大化につながると思っています。
 
DEIBが個人の幸せにつながるというのは想像しやすいかもしれないですが、成果の最大化という組織的なメリットがあるという点は、この立場になってから考え始めたことです。

組織の同質性が高まりすぎると、中にいる人にとっては居心地がよいかもしれませんが、それゆえ外部環境の変化や思わぬリスクを見逃してしまったり、未来に向けた大きな挑戦や変化への動き出しが遅くなったりしてしまいます。

だから、いろいろな人がいろいろな考え方を実現していることは、組織の成果の最大化につながると思っていて、メンバーの個性の発揮やその発信は積極的に促しているつもりです。
 
私のチームには、これから育休を取る男性メンバーがいます。約1ヶ月間の休職による成果への影響をどう加味するべきか、その期間、ほかのメンバーに負担をかけないようにするにはどうしたらよいか、とても考えました。
 
正解のない答えを見つける作業だったので難しかったんですが、HRの意見ももらいながら自分なりに意思決定をしました。
 
今のSPEEDAのセールス組織は若く、女性も多いです。今後ライフステージの変化によって、さまざまな理由で働き方が変化するメンバーは出てくるでしょうし、性別や年齢に関わらず積極的に休暇を取ってもらえる組織にしたいですね。

そうすることで、自分自身と家族やパートナーの幸せを追求し、全員が気持ちよく、長く働けるメンバーが増えることでコミット力も高まると思います。
 
何より、多様なメンバーがいる組織はさまざまな意見が飛び交うので、外部環境の変化に左右されない盤石な体制が築けるはず。それが成果にもつながると信じています。

SPEEDA山下由梨絵
逆に、ユーザベースがDEIBに力を入れていなかったとしたら、どんな世界があったと思いますか?

「34の約束」がある以上は、社内に向けてはあまり変わらないんじゃないかと思いますね。
 
ただ、DEIBという軸で打ち出すこと自体に企業の価値向上の意味があると思うので、今後もDEIBに注力していることをアウトプットすることが大事なのではないかと思います。

リーダーとして、DEIBについてどう考えていますか?

多様性を認めたいと思いながら、セールスに必要なスキルはある程度共通で画一的なんです。それと多様であることのバランスを取ることについては解を持っていないですし、難しさを感じます。
 
セールスの方法と個人の多様性は別の話なんですが、突き詰めていくと、この方法を実現するにはある特性を持った人でなければ難しい、といった相関が出てきたりします。これを打破するだけの多様性を、結果を出しながら担保するのは難しいテーマですね。

私にとってのDEIB

親友が作家をしておりいくつか本を出版しているのですが、そのうちの児童向け書籍のひとつです。

彼女とはよく多様性について話をします。他の作品にも当たり前に多様性についての要素が散りばめられていますが、この本は最もストレートにLGBTQ+について描いた作品です。
児童文庫ですが大人が読んでもおもしろく、「らしさ」ってなんだろうと考えさせられながらも最後まで愉快に読める作品ですので、ここで紹介させてもらいます。

次世代を担う子どもたちは当たり前のようにこういった文学にふれるんだと思うと未来は明るいなと思います。

編集後記

「周りがすごいリーダーばかりだから、私は『ふつう』のリーダーでいたいんです」と話してくれたゆりー(山下のニックネーム)。ユーザベースはWillが問われる環境だけど、「やりたいこと(To Do)」ではなく、「ありたい姿(To Be)」のほうが明確にある、と笑顔で語ってくれました。

Uzabase Journalでは、公開前に本人にも原稿をチェックしてもらうんですが、ゆりーが心配そうに「これ、ちゃんと誰かの背中を押すような内容になっていますかね……?」と声をかけてきてくれました。いろいろなことに真摯に向かい合うリーダーなんだなと感じたし、この記事がユーザベース以外にも、リーダーになることを躊躇している人の後押しになればと思います。

聞き手:山元 陽作/執筆:宮原 智子/撮影:倉本 あかり/デザイン:片山 亜弥/編集:筒井 智子
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