ファイナンスを起点に会社の成長に貢献したい

大学4年生のときに参加したユーザベースの短期インターンです。3日間の短いインターンの中で印象的だったのは、太田さん(太田 智之/ユーザベース グループ執行役員 事業開発担当)の話でした。
投資銀行から事業会社に来た太田さん自身のキャリアの話で、彼はずっとファイナンスのプロだったんですが、真のCFOとして「ファイナンス×事業」にトライしてみたいとおっしゃっていて。こういう考えを持った人と働いてみたいと思いました。
ユーザベースのインターンが他と違っておもしろかった点があって。ユーザベースがこれから一流企業になっていくために、どんな事業領域で、どんなM&Aをしたらいいかというお題でM&Aの提案ができたんです。審査員である役員の前でプレゼンをして、優勝チームを決めるというものでした。
そこで僕が入ったチームは、特許のデータベースを持っている会社を買いたいと提案しました。当時はまだSPEEDA R&D(技術マーケティングプラットフォーム)などない時代でしたが、僕らが提案した内容を太田さんが評価してくれて、優勝することができました。それがきっかけで、本当にその会社に出資しようということになって、ユーザベースで3ヶ月の長期インターンをさせてもらうことになったんです。
太田さんと一緒にその会社を訪問したり、社内の取締役会に提出する検討資料をつくらせてもらったり。Excelの使い方も含めて、ものすごく丁寧に教えてもらいました。それが、ユーザベースが上場した翌年の2017年です。MIMIRへの出資やINITIALの買収をしたり、FORCASをスタートしたりと、本当にチャレンジングな年でした。

当時は自分で事業をやりたいという想いがあって、それをユーザベースで実現するか、ゼロから立ち上がるスタートアップで実現するか、とても悩んでいたんです。そんなとき、大学の先輩でもあったペイミーの社長から誘われました。会社が立ち上がるタイミングで、資金調達も含めてゼロから事業をつくる経験ができることを魅力に感じて、悩みに悩んだ末にペイミーに入社しました。
当初はサービスローンチする前だったので、サービスがない状態でとにかくセールスをして、その一方で社長と一緒に資金調達に回ったり、金融事業で銀行や代理店さんとのパートナーシップを担当したりしました。
その成果を見込んで関西支社の立ち上げを任されたんですが、当時大阪で入居していたシェアオフィスに、ユーザベースの関西支社も入っていたんですよ。それで、関西支社にいたメンバーとはよくご飯を食べに行っていました。太田さんとも、オンラインベースでやり取りは続けていました。
太田さんは2018年にQuartz事業でアメリカに渡りましたが、Quartzの買収からその後の運営、撤退までを担当され、ずっと外から見ていて、太田さん自身がすごく変化されていたことを感じていました。もともとファイナンスのプロだった人が事業家としてチャレンジをし続けている。僕が短期インターンに参加していたときの太田さんのお話を自ら体現されていて、「かっこいいな」と思いました。
結果的にQuartz事業は撤退になってしまいましたが、帰国して、あらためて「事業開発の担当として、ファイナンスと事業を起点に会社の成長に貢献したい」と太田さんが話すのを聞いて素晴らしいなと思いましたし、そういう想いを持った太田さんとまた一緒に働きたいと考えるようになりました。それで、2022年2月にユーザベースに参画することになったという経緯です。
もともと大学2〜3年生の頃、僕と同い年の学生起業家が周囲にたくさんいました。みんな本当に素晴らしい人たちで、これからの事業の成長が楽しみなところがいくつもあったんです。
ただ、どんなに人がよくて、どんなにいい事業があっても、お金が理由で伸び悩む会社をたくさん見てきました。それで事業成長には「ヒト・モノ・カネ」のすべてが大事だなと思うようになり、ファイナンスを起点に事業を伸ばすスキルセットを持った人が会社にいるのは、とても大事なことだという課題意識を持つようになりました。
大学のゼミでもそういった研究テーマで活動していましたし、スタートアップや事業をつくっている人にすごく興味を持って、ベンチャーキャピタルで2年半ほどインターンも経験しました。
BizDevとして中長期の事業開発に伴走
2022年12月までは、コーポレートの中で事業開発を担うビジネスディベロップメント(BizDev)チームに所属していました。チームメンバーは太田さんと僕のふたりです。
BizDevチームは主に、M&Aの新規検討と、実際にM&Aを実行して実現に至った場合のPMIまでを担当します。それ以外にも、ユーザベースのFORCAS、INITIAL、SPEEDAといった既存事業の競合関係を調べたり、顧客起点で次の事業領域を探索して、それを事業部とディスカッションしたりする役割を担っています。
ユーザベースは各事業がとても強いんですが、たとえば各事業部は足もとの数字を伸ばすことにフォーカスしているので、BizDevチームとしてはもう少し中長期の事業開発に伴走しています。ただ、ふたを開けると2022年はほぼTOBがメインで、太田さんとプロジェクトを推進する事務局を担当していました。
2023年1月からは、千葉さん(千葉 大輔/ユーザベースCFO)がリーダーを務めるFinance Divisionに異動します。千葉さんと一緒にTOB元であるカーライルとコミュニケーションを取るなどして、100日プランや再上場に向けた計画をつくるといった動きをしていきます。
千葉さんとは、これまでM&A検討時のデューデリジェンスなどでお話する機会がよくありました。ユーザベースの誠実さをものすごく体現している人だと思っています。太田さんとはまったく異なるスタイルですが、千葉さんの仕事の進め方もぜひ盗み取りたいですね。
自分の所属企業がTOBをして、もう一度上場を目指すことって、そういう経験を積みたいと思ってもなかなかできない。その中心で事務局メンバーとして働けるのは、僕自身ユーザベースの解像度が上がってとてもありがたいと感じています。
それと、僕は本質的には事業開発をやりたいので、まずはTOB後の業務をしっかりやったうえで、新しい事業のタネも見つけていきたいと思っています。

それはありますね。ただ、僕は今年入社したばかりで何も知らない状態だったので、皆さんとフラットに1on1してもらいました。
その場で、どんな想いでユーザベースに入ったかとか、これからこんなことをやっていきたいんだという話をしました。バリューに共感していたり、同じ想いを持っていたりということが伝わって信頼関係ができて、うまく巻き込めるようになったのではと思います。
新規事業コンテストとTOBが並走。やるべきことに優先順位をつけて乗り越えた
think beyond(ユーザベースグループの新規事業コンテスト)とカーライルとのデューデリジェンスを並行して進めなければならなかったことですね。
think beyondでは「INITIAL HR(仮名)」といって、INITIAL事業の河野さん(河野 文弥/INITIAL事業 執行役員CTO)とデザイナーの廣田さん(廣田 奈緒美/INITIAL Designチーム)、あとはNewsPicksの西村さん(西村 脩平/NewsPicks Brand Design Division所属)たちを巻き込んで、INITIALを起点にしたHR事業を発案しました。
ただ、実は僕、1次審査も2次審査も落ちているんですよ。リベンジピッチ、つまり敗者復活戦で最終審査まで何とか残ってきていて。そのthink beyondの2次審査があった9月上旬は、カーライルとのデューデリジェンスが本格的に始まったタイミングでもあったんです。
2次審査を通ってデューデリに集中しようと思っていたら、落ちちゃって。2次審査の発表後、そこから1週間でリベンジピッチだったので、本業とthink beyondを並行して進めていくのは本当にきつかったです。
審査に落ちたところから、まずは自分の気持ちをしっかり立て直して、やるべきことに集中する。優先づけをしてやるべきことに当たることで、大変な時期を乗り越えました。7月の最終審査まで、やり切ります!

事業開発で大切にしているのは「ユーザーの理想」をかたちにすること
僕は「Thrill the user(ユーザーの理想から始める)」が大好きで、自分のPCにステッカーを貼っているくらいです。
前職でも新規事業を担当していて、ずっとスタートアップで事業をつくって伸ばすことを考えているんですが、お客様の理想を追い求める姿勢はすごく大事だなと思っていて。一方で、「31の約束」に補足があるように、お客様の声を「聞きすぎる」のもよくないと思っています。
自分が顧客の立場に立って事業をつくることが大事ですし、ユーザベースの事業開発は、これまでずっとそれを体現してきています。その考え方に共感する部分もありますし、僕自身、事業開発の業務をするなかで、そういった想いを常日頃意識しています。
いろいろありますね。たとえば、SPEEDAが提供するM&Aデータ導入のストーリーがすごく好きで。 事業会社の人からすると、M&Aデータってこれまであまり使ったことがないから、何に使うかイメージがつきにくかったり、使いづらかったりすると思うんです。
その顧客の声をただ聞いているだけでは事業開発にはつながりにくいと思うんですが、「これから企業運営を行なっていくうえで、企業の動向を知るためにM&Aデータは絶対に必要になる」と判断され導入されたと。
いま必要でなくても、ちゃんと使いこなせるようにSPEEDAとしてサポートすることも重要だと言って、あるべき理想像から半ば啓蒙的に始めたところが素晴らしいと思います。それが結果的に今、お客様になくてはならないものになっている。
ユーザーの声を聞きつつ、ユーザーの理想を考え、結果的に実装してかたちになったという、「Thrill the user」を体現するエピソードではないでしょうか。そんな風にユーザーの理想を先読みをし、その連続でユーザベースの事業は生まれたんですよね。

ユーザベースのアセットで新しい事業をつくりたい
当初はM&Aをやるぞと意気込んで入ったら、思わぬかたちでTOBをすることになったんですが、ファンドと一緒に働くことで会社のことをより理解できるようになりました。今後はもっとユーザベースのこと、ユーザベースに関わってくださるお客様のことを知りたい気持ちがあります。
足元は再上場に向けて、千葉さんと一緒に業務を行っていく。これも、個人としては新しい取り組みなのでワクワクしています。それを社内の人から任せられるような存在になっていきたいですし、最終的にはやっぱり事業をつくっていきたいですね。
2017年に3日間のインターンで僕が考えたことが、まったく違うかたちですけど、SPEEDA R&Dとして事業化されたことが嬉しい。僕の何百倍も熱量を持った竜さん(伊藤 竜一/SPEEDA事業執行役員 技術領域事業CEO)が、ものすごいパッションで事業を推進し続けているのを見ると、竜さんへのリスペクトと、そういう事業開発のやり方を進めてきたユーザベースのことがますます好きだと思えます。
僕もSPEEDA R&Dを超えるような事業をつくっていきたいです。もちろん、think beyondが最終選考に通ったら、そちらもやり遂げたいなと思っています。
ユーザベースに来てよかったのは、人、事業、データなどいろんなアセットがある中で、それを掛け合わせてどんどん事業が生み出せる強みがある点です。ひとりでできることには限界がありますが、ユーザベースなら自分の想像以上のものがチームで生み出せる。その意味ではユーザベースに入ってよかったですし、ユーザベースで事業をつくりたいという想いが強いですね。
コトや事業に向かって、その事業に関わるお客様やメンバーに向き合える状態でいられたら、僕は幸せです。

編集後記
入社時にいろいろなメンバーから「おかえり!」「待ってた!」と歓迎されまくっていた仲川。記事に出てくる役員の太田からも「4年越しで入社してくれた! Uzabase Journalでインタビューしてほしい!」と言われていたので、ようやく公開できてホッとしています(笑)。
Uzabase Journalの個人インタビューでは「一番好きなバリュー」を聞いていますが、同じバリューを挙げていても好きな理由はさまざま。今回のエピソードは、まさに「ユーザーの理想から始める」の真意が伝わるなと思いました。ぜひ他の人の「一番好きなバリュー」もチェックしてみてください!