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突然の代表交代からパーパス策定までの1年間、ユーザベースCo-CEOが見てきた景色

2022/07/20

突然の代表交代からパーパス策定までの1年間、ユーザベースCo-CEOが見てきた景色

2021年1月1日、これまでB2B SaaS事業を牽引してきた佐久間衡が共同代表Co-CEOに就任し、同じく共同代表Co-CEOの稲垣裕介との新経営体制に移行したユーザベース。これまでを振り返り、改めてCo-CEO体制に移行した背景と、どのような取り組みをし、それによってどんな景色が見えてきたのか、Co-CEO稲垣と佐久間に聞きました。

稲垣 裕介

稲垣 裕介YUSUKE INAGAKI代表取締役 Co-CEO/CTO

大学卒業後、アビームコンサルティング株式会社に入社。プロジェクト責任者として全社システム戦略の立案、金融機関の大規模デ...

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佐久間 衡

佐久間 衡TAIRA SAKUMA代表取締役 Co-CEO

2013年にユーザベースに参画し、SPEEDA日本事業担当、FORCASとINITIALのCEO、SaaS事業担当取締...

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目次

稲垣「いつか共同代表になってほしい」 → 佐久間「今ではダメですか?」

そもそも、なぜ共同代表という形を採ったのか、教えてください。

稲垣:
前任の共同代表だった梅田(梅田 優祐/ユーザベース創業者)が退任することになったとき、社外取締役を含め取締役会では当初、共同代表ではなく私が単独で代表に就任することを伝えていました。

同時に、佐久間さん、松井さん(松井 しのぶ/取締役 CPO/CAO)には取締役として私のことを支えてほしいと思っていたので、それぞれ個別に話をする機会を持ったんです。そのとき佐久間さんに「将来的には一緒に共同代表をしてもらえたら嬉しい」と伝えました。

ユーザベースでは創業以来、私と梅田、新野さん(新野 良介/ユーザベース創業者)のいずれかが共同代表に就任してきました。その中で、自分が最も強みを発揮できる分野が組織面や技術面であることと、事業面や財務面では二人の力に頼っていることは自己認識していました。事業を牽引してきた佐久間さんと、私の組み合わせは非常にいいだろうと考えていたので、取締役か共同代表かに関わらず支えてほしいと思ったんです。

そうしたら、佐久間さんが「いつかと思ってくれているなら、今ではダメですか?」と手を挙げてくれて。

全社の責任を負う「代表」を引き受けるのは簡単なことではありません。何よりも強い意志が必要です。その中で、佐久間さんが覚悟を持って意思表示をしてくれたことが嬉しかったし、佐久間さんとなら同じ方向を見て、想いを共有していけると思いました。そういう人はなかなかいません。それでCo-CEO体制への移行を決意しました。

稲垣 裕介

B2B SaaS事業とNewsPicksの分離が進んでしまう危機感があった

佐久間さんの中ではどういった意思決定があったのでしょうか。

佐久間:
一番大きな理由はNewsPicksですね。梅田さんの退任後、私が引き続きB2B SaaS事業を担当することで、NewsPicksとの分離が進んでしまうのではないか? という感覚──危機感が以前からありました。それは嫌だなと。

2013年にNewsPicks事業を立ち上げたとき、実は私も少しだけ関わっていました。当時のミッションだった「経済情報で、世界を変える」ために立ち上げた事業が、バラバラになるのは、何かがおかしいと思ったんです。

ちょうどNewsPicks事業が大きく変化するタイミングでもあって、そこに最初から関わることで、NewsPicksとSaaS事業を同時に持つ意味がつくれるとも考えました。NewsPicksと一緒にやる意味と、それを裏付ける成果をつくることで「経済情報で、世界を変える」に向けて大きく前進できる、と。

そんな中で、稲垣さんから「将来的には佐久間さんと共同代表の形で経営したい」と言われたんですね。1年後くらいにどうだろうか、と。その言葉を受けて、だったら今やったほうがいいと直感的に思いました。それは前述した「NewsPicksとの分離が進んでしまうのではないか」という危機感からです。

もうひとつの理由として、稲垣さんの個性を考えたとき、共同代表のほうがお互いにやりやすいのではないかと感じた部分もありました。私たちは明確な補完関係があると思っているんですよ。人の可能性をどこまでも諦めない稲垣さんと、逆に「コト」に向かい、スピーディな意思決定が大好きな私と。

性格的にもスキル的にも補完関係で、組織に対しては共通の強い想いがある。私たちがずっとやっていたチーム経営を、最高の形で実現できる。何より、最高に楽しく経営できるんじゃないか──そんな風に考え、「1年後ではなく、今やりたい」と伝え、現在のCo-CEO体制がスタートしました。

年表

事業間にシナジーを生みだすために、目指す世界をパーパスとして言語化

Co-CEO就任後、創業以来掲げていたミッションをパーパスに変えるという意思決定をしました。佐久間さんがリードしてディスカッションを始めて、1年ほどかけて「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」というパーパスをつくりましたが、そもそもなぜミッションをパーパスに変えようと思ったんですか?

佐久間:
理由はふたつあります。ひとつは「経済情報で、世界を変える」というミッションでは組織が持たないと思ったこと。グループ内で事業を超えてコミュニケーションするとき、礎となるのはミッションやバリューです。

ですが、当時のミッションのままでは、事業を融合させていく議論が進まないと感じていました。目指す世界をもっと具体化しなければ、事業がバラバラの状態で終わってしまう。それでは同じグループ会社にいる意味がないと思ったんです。

上場している以上、たとえばNewsPicksとB2B SaaS間のシナジーによって経済的価値が上がることを説明できなければいけません。実際、B2B SaaS事業担当の取締役になってから、IRの場でそうした質問をもらったことはありましたが、明確には答えられなかったんですね。

具体化していくプランがない中で、事業間シナジーをどう生みだすかの議論を進めていくためには、目指す世界をより具体化しなければという危機感がありました。

佐久間 衡

佐久間:もうひとつは「自分の言葉にしたい」という思いですね。私が新野さんからSPEEDAを引き継いだり、INITIALの事業を千葉さん(千葉 信明/INITIAL事業CEO)に、FORCASを田口さん(田口 槙吾/FORCAS事業CEO)に引き継いだりしたときのように、リーダーが変われば目指す世界も変わります。

私は世界観が変わるのはいいことだと思っていて、自分自身が本当に信じられる言葉をみんなと一緒につくりたい。最初に「Make Knowledge work Fun」という案を出しましたが、私が特に表現したかったのは「fun」の部分ですね。ビジネスをやる究極の目的は人生を楽しむことだと思っているので。

ミッションからパーパスへの変更、稲垣さんはどう感じましたか?

稲垣:
ミッションを変えることへの違和感はありませんでした。当初はミッションとパーパスとバリューの3つをつくる案があったんですが、そこはひとつにしたほうがいいのではないかと。それならミッションをパーパスに変えてはどうか、という話で進んでいったんです。

ミッションやパーパスを策定するうえでは、「意思がある言葉によって、人が自由でいられるかどうか」を大切にしています。

「経済情報で、世界を変える」という、ある意味何の縛りもない言葉を据えることによって、以前は自由でいられました。それが今は、何もないことが不自由に感じられるフェーズになってきている。それは私自身が感じていたことでもありました。

私ひとりが代表だったら、パーパスへの変更にまで思考をまわす余裕がなかったかもしれないので、今回佐久間さんから提案してもらえてよかったですね。

中期計画に縛られず、変化に適応するための長期経営戦略

今のパーパスの例もそうですが、Co-CEO体制になっていろいろと新しい施策を打ち出しています。そのひとつが長期戦略説明会ですよね。これまでユーザベースは中期経営計画などは発表しておらず、大きな変化のひとつかなと感じています。どのような経緯・背景で長期戦略説明会を開催することになったんですか?

佐久間:
稲垣さんとの共通認識として、ユーザベースでは2年後、3年後の中期でものごとを見るのではなく、短期に集中することで次が見えてくると考えています。

私はそもそも、中期経営計画というものが好きではありません。3年の中期経営計画の実行に縛られ、その後の急激な市場環境の変化に対応できないといった課題を抱える企業は少なくありません。極端な話に聞こえるかもしれませんが、形骸化した中期経営計画が日本をダメにした側面すらあると思っているんですよ。

SPEEDAのお客様を見ても、中期経営計画に縛られている方が非常に多い。計画の実行だけでなく、つくること自体が目的化してしまっているケースも見受けられます。つくったらつくったで、それが絶対の基準になってしまう。それなのに計画未達で2年目に計画から離脱しても、誰も責められない──そんなよく分からない構造になってしまっています。

パーパスをつくったときの課題意識は、そもそも事業間でどういった連携の形をつくり、ユーザベースの存在意義を証明するかにありました。

それを具体化するロードマップをつくることも、パーパスと同じくらい大事です。でも、中期計画の「3年」は中途半端に感じられたんですよ。もう少し時間の幅を広げて、5年単位の長期計画を作っていきたいと思ったことが、長期戦略説明会を開催することになった理由です。

だからといって、計画を定量目標ガチガチにつくって、変化に適応できず、人を縛るようなものは好ましくないと思っていました。事業間を融合することで、パーパスの実現にどう近づくのか、マイルストーンを共有するものにしたかったんです。

目標をどれだけ具体化するか、どれだけあえて抽象化するか。このバランスを考えながら長期戦略をつくりました。

この長期戦略は、毎年更新していこうと思っています。計画通りうまくいかないこともあるし、別のやり方を採ったほうがいい場面も出てくるはずです。あくまで方向性を示すものであって、縛られるためにつくったものではありませんから。

ユーザベースとして短期コミットして、そこから見えてくる景色を活かすことができる本来の強さと、事業間の融合によって大きな社会価値が出せるようになった現在の強さ、両方を取りたいと考えています。

稲垣・佐久間

稲垣:
私も長期戦略に縛られては意味がないと思っています。経営環境が変わる中で、「自分たちは変わらない」のはおかしい。変わることを前提にコミュニケーションしたいけど、それがうまくいかない世の中にジレンマを感じていました。

一方、ユーザベースには複数の事業があるため、コングロマリットディスカウントを受けやすいと言えます。その中で、何をしたいのか、していこうとしているのかが伝わりづらいという課題感があります。

これを無理に計画に落とそうとすると縛られてしまいますが、パーパスくらいの粒度であれば人はブレないし、チームで意思を持ってそれを掲げて進んでいけます。

長期戦略にはどれくらいの粒度で、どんな情報を盛り込むか。難しいバランスをどう設計できるかが論点だと思いますが、そこを佐久間さんと千葉さん(千葉 大輔/ユーザベース グループ執行役員 CFO)が主導してくれて、今回のような長期戦略ができあがりました。

経営トップの手触り感。事業トップの自由意志。その矛盾に挑む

2021年11月には、2人がNewsPicksのCo-CEOにも就任しました。これはどのような背景があったのでしょうか

佐久間:
ユーザベース全体を見たときに、成長する伸びしろが、逆に、うまくいかないリスクも最も大きいのがNewsPicksでした。

NewsPicksをどうにかしないといけないのは明白で、総力を結集する必要がある。そこで私と稲垣さんがCo-CEOになり、坂本さん(坂本 大典/ニューズピックス 取締役 新規事業担当)に新規事業と営業サイドに集中してもらうことで、NewsPicksが新たに成長する道筋をなんとしてもつくらなければという思いでした。

稲垣:
特に私や前任の梅田は、自分たちが自由でありたいという考えを持っていたので、当時FORCASのトップだった佐久間さんやNewsPicksの坂本さんにも、自由にやってほしいという思いが強かったんだと思います。

それが引き起こす弊害がふたつあって。ひとつが、事業に対する手触り感をなくす可能性があること。事業トップの自由意思を尊重して直接介入しないので、自分の喜びを失っていくんです。それが楽しいか楽しくないかで言えば、楽しくはありません。そうした難しさが常にありました。

当時は事業が小さく、私と梅田が交互にSPEEDAとNewsPicksを見ていたので、それでも十分成り立っていたんだと思います。でも規模も形も変化した今となっては、そのやり方ではうまくいきません。

「会社のトップなのに自分が手綱を握れない」という感覚は、乗り越えなければならない課題だと思っています。事業トップの自由意思を尊重することと、手触り感をなくさないこと。それが、2021年に佐久間さんと共同代表に就任してからの、一番大きな挑戦だったのかなと思います。

できる限り経営の変数を減らしてシンプルにしたり、仕組みを取り入れたりして、私たち自身も意思を持って手綱を握れるようにしたいし、その中で各役員たちが自由度を持って事業に取り組める。一見すると矛盾するこの2点を両立させる戦いをしているのだと思っています。戦い方は明確に変わっていますね。

一つひとつを見れば、当然きれいにはいきません。すでにしっかりと手触り感があるものは、自分の感覚を持って自由にハンドリングすることもできるかもしれない。状況が変わってきた事業や、これまで取り組んだことのない事業に関しては、手を入れていかなければいけないシーンもある。

それがNewsPicksに深く入らなければと思ったきっかけでもあります。NewsPicksでもCo-CEO体制を選んだのは、NewsPicksの事業自体をなんとかしなければというよりは、ユーザベース全体で見たときにどういう経営ができるかを考えた結果ですね。

稲垣 裕介

思考と試行の時間軸が延び、「人」に対する選択肢が増えた

Co-CEO体制になって1年以上が経ちました。実際に共同経営する中で、自分自身が変わったことはありますか?

佐久間:
私自身の変化でいえば、思考と試行の時間軸が長くなりました。事業が融合して価値を生みだすまでには時間がかかります。それを1ヶ月でやろうとするとみんなが疲弊してしまう。強烈なトップダウンで、ちゃぶ台返し百連発のようなことが必要になってしまう。

そんな状態では再現性がなく、人が傷ついて終わってしまう。だから、いろんな事業リーダーとやり取りしながら、より時間軸を長く考えるようになりました。

FORCASやINITIAL、SPEEDAのCEOをしていた当時は、基本的に半年ほどのスパンで事業をクリアに見通そうと思っていましたが、いまは2年ほどの時間軸で考えています。そこは自分自身が大きく変化した部分だと思いますね。

もうひとつは「待つ」ことを覚えました。

人によって思考の時間軸も違うし、そもそも完全に景色を共有することは難しい。私が10個の問題を把握していても、実際の現場には100個問題があるケースも少なくないでしょう。100のうち10しか問題を把握していないのに、「1週間でできるだろう」と言っても混乱しか生みません。

いまだに「待つ」のがいいことなのか悩みはしていますが、自分の景色理解の限界を意識するようにはなりました。

稲垣:
私から見ても、たしかに佐久間さんは人の個性に合わせて待つようになりましたね。ただ、それは表層的な変化のひとつであって、全社の責任を負って張り続けるのは普通ではない、大変なことなんです。ものすごい意思が必要だし、同時にまたとない学習環境でもある。

Co-CEOに就任してからの1年で見ても、佐久間さん自身ものすごく成長していると感じます。事業の方面でも、人の方面でも、間違いなく伸びていますね。人に対する許容度や考え方、スタンスは、明らかに選択肢が広がっていると感じます。

自分が一番快適なやり方と、相手を待つやり方には当然違いがあります。自分が快適でも、相手がハッピーになるとは限らないですから。でも、自分のやり方を抑えて相手を待つやり方が行き過ぎると、自分のハピネスを阻害するリスクがある。ここは究極のバランスですね。

自分のやり方でうまくバランスを取れるか。そこはこれからトライしていかなければならないと思いますが、選択肢が広がったのは素晴らしいことだし、可能性が増したのではないかと思いますね。

それぞれの個が「自分が最も輝ける仕事をする」ことがチームのエンカレッジにつながる

Co-CEOとして、今後どんな展開を考えていますか?

稲垣:
ユーザベースはIRをはじめとする世の中への発信も、社内の評価制度なども誠実な考えに基づいている会社だと思っています。

みんなが努力して、改革する。そうしたガバナンスも効いているし、誰かの恣意的な思いを通すようなこともない。やるべきことをやっているからこそ、メンバーには自由にやってほしいと思っています。

佐久間さんに限らず、みんなどうしても「責任」に意識がいきがちです。これだけきちんとやっているんだから、あとは前を向いて、自分がやりたいようにやる。会社としての結果は、みんなの努力の総和だと考えています。

責任を意識するのはもちろんいいこと。でも力学としては、責任を意識しすぎることで、自分のやりたいことを「やらない」方向に行きがちになります。

きちんとやっているからこそ、それぞれが一番輝ける仕事をする。それがチームを最もエンカレッジするんだと思います。

「新規事業人材」として佐久間さんのような人がユーザベースに誕生した背景には、ここまで自由にやってもらえたのが大きいんじゃないかと思っていて。自分がオーナーシップを持って、ひとつの会社を立ち上げるのと等しいくらいの経験をしたことが大きかったのでは、と思います。

佐久間:
そうですね。ユーザベースにはいろいろなメンバーがいます。中途採用や新卒採用だけでなく、M&Aで加わった人もグループ全体の経営に関わっていく。オーナーシップを持つ流れができつつありますね。

私の人生の目標として、そうした代理経験を連鎖させることや、起業という暗黙知の伝承を構造的に広めたいという思いがあります。

ユーザベースは素晴らしい会社だと心から思っています。パーパス実現と、それに伴う大きな経済成果を追求するのはもちろん、その素晴らしい部分をきちんと言語化し、論理化して、ほかの企業でも再現できるようにすることも、ユーザベースを超えたところにある私の使命だと思っています。

佐久間 衡

稲垣:
再現性の話でいうと、ありがたいことにユーザベースは、いろいろな会社からロールモデル的に捉えてもらうことがあります。別に僕らが正しいわけではないけど、強いバリューやカルチャーがあると、僕らのような会社ができる。それを真似したいと思ってくれている会社が少なからずあります。

でも、ユーザベースのシステム、組織の仕組みを真似したいとは思われていないんじゃないかなと。なぜなら、掲げているパーパスやバリューに対して、システムや仕組みが全然追いついていないから。ここが今の大きなペインになっているんですよ。

もちろん悪いことではないんだけど、コーポレート部門のみんなは自分がどんなに忙しくても、組織改編など煩雑で大変な業務をなんとかやり切っちゃう。それではいずれ限界が来ますよね。

極論かもしれないですが、僕は、人が楽しく働いていたらそれでいいと思っています。でも今のままだと、疲弊してしまう人が必ず出てくるはずです。だからそれをシステムという形でサポートしていきたい。

システムをつくる過程で当然ミスも出ると思います。意図しないミスもあれば、もしかしたら不正に近いミスもあるかもしれない。でも後者のミスは、不正をする余地があるから生まれるもの。ユーザベースのバリューの根本には性善説があるけれど、セキュリティ観点ではある種の性悪説にも耐えられるようにしたい。生産性とセキュリティは両立できます。

会社の仕組みやシステムは、その会社の思想や価値観が落とし込まれたものです。たとえば評価制度にしても、会社として何を評価するのかが反映されていますよね。だから意思のあるシステムが、生産性高く稼働しているかどうかが非常に重要です。

だからこそ、バリューに基づいたシステムをつくりたい。ここで言う「システム」は、組織や制度などの仕組みだけでなく、テクノロジーも追いついているものです。テクノロジーが実装されることで、再現性も生まれるはず。そして強い再現性をもたせることで、他の会社にとって、もうひとつのロールモデルになれる可能性もあります。価値観とセットで機能するシステム、僕はエンジニア出身なので、そういった世界を目指したいですね。

編集後記

社内向けには2人が話す場面はとても多いんですが、社外向けには発信していない! と気づき、ようやく公開できました。なぜミッションからパーパスに変更したのか、なぜCo-CEO体制に変更したのか──すでに社内では語られていることではありますが、今回改めて話を聞いて、より深く腹落ちした感覚があります。

毎日が怒涛すぎて、インタビューしながら「え、コレってまだ1年前だっけ?」と思うこともたくさん。それだけ密度濃く、毎日楽しく働けていることに感謝しつつ、今後も定期的に2人にインタビューしていきたいと思いました。

執筆:宮原 智子 / 写真:井上 秀兵 / 編集:筒井 智子
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