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クリエイティブには正解がない。だから誰が何を言ってもいい ── NewsPicks Studios Creative Production Team

クリエイティブには正解がない。だから誰が何を言ってもいい ── NewsPicks Studios Creative Production Team

ユーザベースグループのさまざまなチームを紹介するシリーズ、今回はNewsPicks Studios(以下「NPS」)のCreative Production Teamです。

2017年にNewsPicks内のオリジナル動画コンテンツ『WEEKLY OCHIAI』(落合陽一氏のライブ番組)の配信をスタートして以来、さまざまなジャンルの番組を生み出してきたNPS。普段の業務や、チームでのコミュニケーション、これからの挑戦について聞きました。

目次

メンバー紹介

・木嵜 綾奈:EMI MUSIC JAPAN 営業&洋楽プロモーター → テレビ東京NY支局ディレクター → フリーランス(ライター&通訳&翻訳)→ NewsPicks Studios(2019年〜)
・萬野 達郎:映像クリエイター(フリーランス)→ NewsPicks Studios(2019年~)
・伊江 成晃:テレビ番組の演出・ディレクター → NewsPicks Studios(2020年~)

NewsPicks Studiosのメンバーは、2022年4月現在、約30名です。テレビ業界や広告業界、出版社、新聞社など、メディア出身者が多く在籍しています。

NPS Creative Production Teamってどんな仕事?

萬野 達郎(以下「萬野」):
NPSの番組制作において、テーマ決めから企画、キャスティング、ゲストのアテンド、番組のディレクション、SNSのクリエイティブ作成などの一連の業務を担っています。NPSはもともと、NewsPicksのプレミアム会員(有料コンテンツの利用会員)向けの番組と、『The UPDATE』などの企業の広告案件の番組とでチームが分かれていたんですが、徐々にその枠がなくなって今は1つのチームになっています。

木嵜 綾奈(以下「木嵜」):
1つのチームでユーザー向けとスポンサー向け、両方の番組をつくっている組織は珍しいと思います。制作はだいたい月に15〜20本。毎日のように収録や生配信があります。

番組収録は、やっぱり熱気がすごい。『2 Sides』(ふたつの見識に迫る“新・議論番組”)のような討論番組では、演者同士が激しくぶつかり合うことが多く、自分も引き込まれてエネルギーを吸い取られるほど、現場が白熱することも多いですね。

伊江 成晃(以下「伊江」):
私はプレミアム会員向けの番組をメインに担当していて、番組をいかにユーザーに見てもらえるかを考えているので、ユーザーからの「番組の影響で人生が変わった」といった声をもらえると嬉しいですね。

萬野:
番組のTwitterには約5万人のフォロワーがいて、視聴者から直接ご意見をいただけるんですよね。頑張ってつくったものに対しての反応が届くと、つくっていて良かったなと思います。中には手厳しい意見もありますが、それが番組をブラッシュアップする材料にもなるので、ダイレクトに視聴者の反応を知ることができるのは、一番やりがいがあるところかなと思います。

番組企画のために普段していることは?

伊江:
私はちょっと特殊かもしれないですけど、プライベートでも好きで1日のほとんどの時間、パソコンに向かっています。ずっと何か情報を探していますね。気になる人がいたら、その人に直接メールを送って会いに行くこともあります。

萬野:
私はトレンドはあまり追っていない気がします。むしろ懐古主義なので、昔のものをサンプリングして今の時代に落とし込むことが結構好きなんですよ。2021年12月にスタートした『New Door』(ユーザー参加型のビジネスお悩み相談番組)も私が小さい頃、90年代にテレビで見ていたワイドショーを参考にしました。昔の番組スタイルに、今の経済情報をかけ合わせて、新しい価値を生み出すことが好きですね。

木嵜:
私はTwitterをめちゃくちゃ見ています。やっぱり人を扱う番組が多いので、その人が今どういう状況かを常に把握しようと思っているんです。Facebookもフィードに出てくる投稿はほぼ全部見ていますし、あとは番組の出演者と直接話したり、20代の若者と一緒にご飯に行ったりしていますね。

チーム内外のコミュニケーション

萬野:
伊江さんはYouTubeを手掛けてきましたし、木嵜さんはもともと音楽業界にいましたよね。私は映画などいろいろなことに携わってきました。多様なバックグラウンドのメンバーが「映像の力で、経済をもっとおもしろく」というミッションに向かって、さまざまな番組を制作しています。ダイバーシティが体現できている組織の中で、各々が培ってきたノウハウを活かしていますよね。

木嵜:
雰囲気は……なんか動物園みたいな感じですかね。クリエイティブは正解がないので、誰が何を言ってもいいという雰囲気です。

萬野:
木嵜園長が仕切って、いろいろな動物がギャーギャー言っているみたいな感じですね(笑)。

木嵜:
みんな個性が強いんです。海外出身のメンバーも多く、すごく多様性があるんですよ。あと、インターンのメンバーもガンガン発言しますよ。

萬野:
キャスティングにインターンの意見が採用されることもあります。先日、番組内でインフルエンサーを集めることがあって、インターンのメンバーがあるインフルエンサーの名前を挙げてくれたんですね。失礼ながら、私はその方を存じ上げなくて……。でもお呼びしたら、すごく番組を盛り上げてくれる方でした。

伊江:
私は地上波の番組制作や広告制作、YouTubeのコンサルティング、雑誌の編集も経験してきています。でもそれらの経験があるからといって、「当たるコンテンツ」がつくれるかというと、もうそんな時代ではないと思うんですね。インターンのメンバーもそうですが、特に制作経験がない人の企画がヒットすることもあります。どういうコンテンツが響くのか、本当に分からない時代だと思っていて。

ですから、そういうメンバーから企画が出てきた時に、その企画をちゃんと成立させることが大事だと感じますね。経験がないからとか、企画が微妙だからといって話を聞かないのではなく、小さな種でも拾っていくようにしたいと思っています。

萬野:
番組の方針について意見が分かれることもありますが、それぞれの意見を尊重しながら解決してきました。たとえば、『The UPDATE』を始めたばかりの頃、社内から「もっと『WEEKLY OCHIAI』を見習ったほうが良い」という声があったんです。

『WEEKLY OCHIAI』は、まだみんなが分かっていないテーマを扱い、それを落合さんという天才が話すことで、学習意欲を刺激する番組。それに対して『The UPDATE』は、みんなが抱えていそうな課題点をテーマに、いろいろなゲストとともに討論する番組です。

木嵜:
声を上げてくれたメンバーは『The UPDATE』のバラエティー色やエンタメ要素が強いところ、経済の話を軽いトーンで展開していくところにNewsPicksとしてちょっと違和感があったようです。2019年頃のNewsPicksは、今よりも「意識が高いメディア」という印象が強かったように感じます。

萬野:
違和感があるといった意見はすごく正しいと思いましたが、当時の木嵜さんの「私たちは世の中のみんなを救っていくような番組をつくろう」という方針にチームのみんなが賛成していたので、それぞれの番組の色を分けていく方針にしました。今振り返ると良かったなと思っています。

木嵜:
タイプの違う番組が増えて、今では社内からも「NPSの番組って面白い」と言ってもらえるようになりました。先日も編集部(NewsPicksの記事を制作する部署)から、後藤さん(後藤 直義/NewsPicks副編集長)の著書『ベンチャーキャピタリスト』に関連して、NPSとコラボしたいという話をもらいました。
それで『OFFRECO.』で「世界のベンチャー投資最前線」という番組や、『NewsPicks Exclusive』で 孫泰蔵さん(Mistletoe創業者)をお呼びした対談番組をつくりました。編集部にも動画チームがあるんですが、最近はNPSとワンチームといいますか、一緒に番組を盛り上げていこうという雰囲気になっています。

伊江:
私たちは映像の専門家ですが、編集部の記事をもとにしたテーマや、番組の内容については専門外でわからないことも多いので、Slackで編集部の記者に詳しく教えてもらうなどの連携もとっています。番組制作をする上で、編集部には見えないところでかなり協力してもらっています。

チームで挑戦していること

 木嵜:
挑戦というと、YouTubeのフォロワーを増やすことですね。今、YouTubeに番組の短編動画を載せています(全編はNewsPicksのプラットフォームに掲載)。その視聴数もだんだん増えてきたので、今後はNPSがつくるエンタメ要素のある経済コンテンツを、YouTubeでも拡散していきたいですね。

NewsPicks独自のプラットフォームがある中、なぜYouTubeへの掲載に注力するんですか?

木嵜:
現在番組への流入元としてYouTubeからの数値が高いので、コンテンツを広めていくにはYouTubeやTiktokといった他のプラットフォームも活用するべきだと感じているからです。今後は既存の番組の短編動画だけでなく、YouTube用にオリジナルコンテンツもつくっていきます。

伊江:
これまでNewsPicksに触れたことのない人にも番組を届けたいので、「NewsPicksらしさに若干の広がりをもたせたコンテンツ」をつくろうとしています。NewsPicksのアプリで配信する際のトーンやマナーは、もうある程度最適化されていると思います。次は、YouTubeやTikTokなど他のプラットフォームで、「新しいNewsPicksらしさ」のあるコンテンツをどうやって広げていけるかが挑戦ですね。

動画コンテンツは流行りのど真ん中で、今このインタビューを受けている間にも、ひたすら動画が生まれているような状況ですよね。ですから、NewsPicksのコンテンツだとわかる、唯一無二の立ち位置は明確にしたいと思っています。

一方、外部のプラットフォームでやるには、そのプラットフォームの最適解があると思います。ある程度そういう点を理解した上で、コンテンツをつくること。それと同時に、他のプラットフォームでも戦えるよう、VSEO(Video Search Engine Optimization:動画コンテンツの検索エンジンへの最適化)といった、コンテンツ以外の施策づくりも必要になってきています。

ユーザベースグループに入社して〜私のこれまでとこれから〜

木嵜:
予想外のことばかりです。私はまさか取締役になるなんて、本当に全く思っていませんでした。入社したきっかけとなった上司も、今は独立して新しい事業に挑戦しています。そうやって組織が変わっていくことは、いいことだと思うんです。それくらいみんなWill(意志)があってどんどんNPSから飛び立っていくということですから。

ユーザベースでは「自分のWillは何か」や「この会社で何がしたいのか」をすごく聞かれます。そして、それを実現するために会社を利用したとしても「個人のWillを叶えることで、会社も一緒に成長できたらいいよね」と思ってくれる、すごくポジティブな環境がありますね。

萬野:
私はNPSに、元NPS取締役の方から声をかけられてたまたま入った感じでした。一応、NHKワールドで経済番組を担当していましたが、経済番組だけをずっとやってきたわけでもなかったですし、最初はスポットでお役に立てればと思っていました。

でも、ユーザベースのカルチャーなんですかね。この組織がすごく楽しかったので、徐々にコミットメントを高めて、今はいろいろな番組を担当しています。ユーザベースのカルチャーに「ちょっと自分は合わないんじゃないかな」と思う人でも、入ってみたら「すごく楽しい」と思えるかもしれないと、自分の経験から感じていますね。

私のポリシーは、「番組の収録後にゲストに笑顔で帰ってもらうこと、そしてチームメンバーが笑いながら制作できる環境をつくること」。今後もNPSの動画制作に携わった人たちが、少しでも楽しんでもらえるような場づくりをしていきたいと思っています。

伊江:
私は今、当初やりたいと思っていたこととは全く違うことをやっています。とはいえ、それをやらされているとは感じていません。ちゃんとそこに私のWillもあった上で、仕事がアサインされるので、その場その場でやりたいことができている感じがするんです。割と自分のやりたいことを許容してもらって、自由にやらせてもらっていますね。

木嵜:
入社時に思い描いていた自分像を上回っていることには、自分でも驚いています。チャンスを与えてくれる会社ですし、そのチャンスが社外にも広がっていることを感じます。

今年、ACC TOKYO CREATIVE AWARDクリエイティブイノベーション部門の審査員をさせていただくことになりました。NPSにいなかったら選ばれていないと思います。きっと『The UPDATE』などで広告案件もやらせてもらっていたので、お声がかかったんですよね。こういう新たなチャンスが出てきたことは、非常に嬉しく思っています。

少し大き過ぎるWillかもしれませんが、私個人としては海外でも見てもらえるようなコンテンツをつくりたいです。世界という枠で見ても、日本のクリエイターがつくるコンテンツはすごいと思うんですよ。「経済情報で、世界を変える」という入社当時のユーザベースのミッションに共感して今に至るので、やはりそこを体現できるような動画をこれからつくっていきたいと思っています。

NPSのざっくり年表

・2017.07  NewsPicksで『WEEKLY OCHIAI』の配信スタート
・2018.06 映像コンテンツの企画・プロデュースを専門とする、NewsPicks Studios 設立
・2019.01 『The UPDATE』(視座を高める“共感型・討論番組”)の配信スタート。その後『HORIE ONE』(タブー・忖度なしのニュース放談番組)などのレギュラー番組を次々と配信
・2021.08〜現在 Creative Production Teamが発足

執筆:杉尾 美幸 / 編集:髙田 綾佳・筒井 智子 / デザイン:片山 亜弥
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