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バリューの多様化とカルチャーの融合が統合をスムーズにした——MIMIR × ユーザベース PMIのリアル

バリューの多様化とカルチャーの融合が統合をスムーズにした——MIMIR × ユーザベース PMIのリアル

ユーザベースでは2020年4月、エキスパート・ネットワーク事業を運営するミーミルを完全子会社化しました。「経験知に価値を与える」をミッションに掲げ、企業の高度な意思決定を支えるリサーチ支援サービスを提供するミーミルが、組織面、カルチャーシナジー面でどうユーザベースグループと融合してきたか、PMI(Post Merger Integration) のリアルについて、ミーミル取締役の守屋俊史とユーザベース取締役の松井しのぶに聞きました。

松井 しのぶ

松井 しのぶSHINOBU MATSUI 取締役 CPO/CAO

神奈川県出身。公認会計士。国内大手監査法人、PwC税理士法人を経て、トルコで4年半過ごした後、2014年ユーザベースに...

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守屋 俊史

守屋 俊史TOSHIFUMI MORIYA Mimir, Inc. 取締役 共同創業者

早稲田大学卒業。総合人材会社インテリジェンスにて採用支援、社内ベンチャーファンド1号案件となる経営顧問事業の立ち上げに...

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目次

「景色の違い」から起こるコンフリクトは、共通の目的を持つことで解消を図る

まずミーミルがユーザベースの100%子会社となるに至った経緯を教えてください。

守屋俊史(以下「守屋」):
ミーミルを創業したのは2017年1月です。その直後にユーザベースから出資を受け、ユーザベースグループ入りをしました。このときからカウンターパートで松井さんに参画してもらい、ユーザベースとのシナジーが生み出せるよう連携の座組みをつくってきました。

当時から営業やサービス面で少しずつ連携を進めていましたが、2020年4月に本格的にSPEEDAや、NewsPicksとのブランド・プロダクトベースでの連携を含めて大きな座組みを組んで、実現していこうということで、経営統合に至った形です。PMIのプロセスがスタートしたのはここからですね。

その半年後の2020年9月にはサービスブランドを統合し、SPEEDA EXPERT RESEARCH、NewsPicks Expert、FLASH Opinionといったサービスをリリース。2021年1月にはOKRや人事制度を統合しました。

そもそもPMIは何をするのか、どんなプロセスで進めたのか教えてください。

守屋:
まずはミーミルを会社として残すのかどうか、サービスブランドはSPEEDAやNewsPicksの名前をつけるのか、どんな名称にするかといったことを、ユーザベースCo-CEOの佐久間さん(佐久間衡)やNewsPicks CROの坂本さん(坂本大典)と議論を重ねてきました。

ブランド以外の部分についてもファンクションごとの統合を議論し、たとえば管理については基本的に統合するものの、経理や総務などミーミルの中にどこまでを置くべきかなど、整理を進めていきました。

法務は統合する。人事については一部分離して、人事制度は踏襲する。採用、オンボーディング、制度運用、カルチャー構築についてはミーミルのことがわかっていなければいけないので分離する。労務は統合する──そんなふうに、ミーミル独自の組織・カルチャーに関わることについてはミーミルで、ユーザベースと連携したほうがいいものは統合して、グループとしての効率化を図りました。各ファンクションの統合に着手したのが2020年4月からで、ほぼ半年ぐらいでPMIのプロセスを走らせましたね。

半年という短期間で急速にPMIを進めたことによって、現場でコンフリクトは起きなかったんでしょうか。

守屋:
実際コーポレートとセールスでコンフリクトが起きました。

既に事業成長で逼迫しはじめていたコーポレートでは、PMIを一気に進めれば楽になるからと、ツールやオペレーションの整理、slackやGoogle Driveもすべて統合していきました。ですが、当時ミーミルのコーポレート部門は時短勤務の2名で回していて、圧倒的な人員不足だったんですね。

ユーザベースはミーミルより組織規模が大きく、法務や経理などコーポレートの業務それぞれに担当がついています。でもミーミルでは2名ですべてをこなしていたため、新しい運用ルールやツールの使い方を覚えたり、社内のメンバーに共有する工数が増えたりと、新規タスクが増えたことで業務が逼迫してしまって……。ユーザベース側に問合せをしたくても、担当がそれぞれ分かれていることによってコミュニケーションがスムーズにいかないなど、コミュニケーションコストも大きな負荷になってしまいましたね。

ミーミル内の実態に合わせて柔軟な対応を求めてもうまく調整ができず、「ミーミルのコーポレートに自由はないのか?」という声が挙がり始めてしまいました。その都度ミーミルのコーポレートのメンバーとユーザベースのコーポレートのメンバーと相互で対話しながら奔走してきた感じです。

当時のミーミルコーポレートの2人は本当に頑張ってくれましたし、現在は頼もしい社員が入社してくれたことで、だいぶ基盤が整っています。

松井しのぶ(以下「松井」):
ユーザベースにも当時のミーミルのように、社員数が少ないところから70名、80名……と増えていくような時期があったわけです。

「何を、どこまですればよいか」といった時間軸や深さについて、当時の経験や上場準備の経験をもとに、もう少ししっかり仕切れたらよかったというのは、私自身の反省点ですね。ユーザベースのコーポレートも、今でこそ、それぞれの領域に専門性の高いプロフェッショナルなメンバーがいますが、当時はミーミルのように数名でやっていました。

一方で、関与するメンバーが増えると、全体感が見えなくなることも多くなります。それぞれの担当メンバーは自分の領域においてしっかりと対応してくれているのですが、ミーミルは2人で全部対応している。そのリソースの差や専門領域における専門リテラシーの違いを、お互いにしっかり認識することが大事だなと改めて思います。

ユーザベースが何年もかけてやってきた「上場会社としての内部統制や仕組み」の整備を、ミーミルには半年で整えてもらうことになり、大きな負荷がかかったと思います。

セールスの連携でも摩擦が生じたそうですが、具体的にはどんなことがあったんですか?

守屋:
ミーミルでは当初から高い数字目標を掲げていたので、それを実現するためにSPEEDAの既存の顧客すべてに当たらせてほしいという声がありました。

ほかにも、当時のOKRやターゲット企業の選定にミーミルのセールスが計画段階から入れないことに違和感がある、自分たちの意見が盛り込まれていないなど、初期の頃はうまくコミュニケーションがとれず、フラストレーションの声が挙がることもありましたね。

こうしたコミュニケーションの摩擦が起こったときは、佐久間さんや松井さんに間に入ってもらいました。「ユーザベースのすべてのサービスにエキスパートの価値を」と号令をかけてもらったり、「FLASH Opinion」などの共同プロダクトやPCDなどの共同チームをつくったり、共通OKRなどの共同の目的に対しての取り組みを重ねたり。

共通の目的を持って取り組むことで、個々人が仲間としての意識を持ち始めました。一気にPMIを推し進めようとしても、現場では意見の食い違いや景色の違いがあって、最初の2〜3ヶ月は本当に大変でしたが、いま振り返ってみると必要なコンフリクトだったのかなと思います。

双方にとって好影響を与える組織・カルチャー面のシナジー

ユーザベースにはオープンコミュニケーションのカルチャーがあります。新しく入ったメンバーなど慣れていない人は戸惑うことも多いですが、その点はすぐになじめましたか?

守屋:
ユーザベースには、「対話をする」「景色を交換する」「疑義は放置しない」といったカルチャーもありますよね。

オープンコミュニケーションについては、言葉は聞いたことがあっても体験として持っていなかったので、たしかに最初は戸惑いました。でも問題を解決する過程で、ユーザベースのカルチャーのパワーを体験して融合が進んでいったように思います。

実際に問題が起こったときは、その1つひとつに対して佐久間さんや松井さん、稲垣さん(稲垣 裕介/ユーザベースCo-CEO)たちが間に入って、相談に乗ってくれたり、対話の場を持ってくれたりと、解決に向けて一緒に動いてくれたことが大きかったと感じています。

当時はオープンコミュニケーションの意味が理解できておらず、どうしても意見のぶつけ合いになっていました。

今ではミーミル内でも「meme(ミーム)」という共有と議論の場を設けています。

ミーミルのリーダー間で意見がぶつかったときに、みんなの前で対話形式で景色交換する場を持つなど、ミーミルの中にもオープンコミュニケーションの文化が根づきつつあります。ユーザベースと一緒に課題を乗り越えて、カルチャーが融合してきたことを実感していますね。

松井:
ミーミルがすごいのは、ユーザベースの手法をうまく活用しながら、さらに進化させているところですね。それこそ統合のシナジーだと思っています。

守屋:
FLASH OpinionやSPEEDA EXPERT RESEARCH、NewsPicks Expertといった事業上のシナジーはもちろんですが、実はカルチャーや組織上のシナジーが非常に大きいと考えています。

ミッション・バリュー経営の実践や、個人の主体性を重んじる自由なカルチャーは、どのスタートアップでも掲げたいテーマであると思っています。一方で、多くのスタートアップがうまくいかずに悩んでいるような、非常に難しいことをユーザベースでは独自に実現しています。

GS/FB(Goal Setting / Feedback)の考え方や思想、OKRの運用の仕方など、ユーザベースがこの10年をかけて蓄積してきた組織運営ノウハウを、ミーミルでは自分たちなりに取り入れさせてもらっています。大きなハレーションが起こらずに、メンバーが納得感を持ってこれらを導入できているのは大きいですね。

2020年4月の統合時には、ミーミルの社員は20名。それが2020年末には40名、2021年末には60名規模と、50人の壁、100人の壁を一気に駆け抜けようとしているフェーズにあります。

もっとも組織課題が起こりやすいフェーズと言えますが、人事制度やGS/FB、コンピテンシー、meme(ユーザベースでは「THM(Town Hall Meeting)」と呼ばれる全社MTG)、有志のカルチャープロジェクトなど、ユーザベースのノウハウをうまく取り入れながら、自分たちが主体性を持ってミーミルらしいものに進化させることで、組織の健康状態を良好に保ったまま成長プロセスを歩めていると思います。

「バリューの多様化」があるから、主体性を持って事業・組織を成長させられる

ユーザベースとミーミルはそれぞれにバリューを掲げていますが、この点はPMIにどう影響しましたか?

松井:
バリューについては、あるとき守屋さんから「ミーミルのメンバーが戸惑っている」と相談を受けました。ユーザベースに入ると、研修でユーザベースの「The 7 Values」についてオリエンテーションを受ける。一方で、ミーミルでも「6つのバリュー」についてオリエンテーションを受けると。メンバーからは「どちらのバリューを尊重すればいいですか?」と言われたそうです。

そこで、ユーザベースでは「ミッションは同じ方向を目指し、バリューは相互尊重、多様化を目指す」と整理していることを伝えました。

守屋:
ユーザベース同様、ミーミルもミッションドリブンな会社です。サービスやプロダクトが重要だと考えている一方で、さらに会社を成長させるためには「強い組織・カルチャー」をつくることが根幹として非常に重要だと考えています。

自分たちの組織を自分たちでつくるためには、バリューという根幹の部分が必要です。アイデンティティがない状態では、強い組織づくりはできません。特に、サービス名はSPEEDAやNewsPicksの名を冠しているので、外部から見るとミーミルという組織の認知度が低くなりがちです。

そんな中、「事業・組織を動かしているのは自分たちだ」という意識を持ちながら思い切りやれているのは、ユーザベースのバリューの多様化、各事業の自由な経営をうたう思想やカルチャーが大きく影響していると思っています。

なぜ今回のPMIがスムーズにいったのだと思いますか?

守屋:
目指しているミッションがそもそもはじめから同じ方向を向いていたこと、バリューや組織の思想も近かったので、自然な形でなじむことができたと思っています。

一般的にイメージされるM&AやPMIには吸収合併によって「コントロールされる」印象があるかもしれませんが、そんなことは全然ないですね。ユーザベースはバリューの1つ目に「自由主義で行こう」を掲げており、自由や自主性を重んじて、それをサポートするカルチャーがあります。

これはまさに、ユーザベースが「自由主義で行こう」に加え、「バリューの相互尊重」を実践しているため。今回のPMIでも、長年培ってきた「各事業部に経営の主体を任せる」というカルチャーの根幹が体感できていると思っています。

松井:
私たちにはお互いのバリューを理解し、リスペクトする文化があるので、環境変化によってミーミルの考え方のほうがいいと思えば融合したり、アップデートしたりすることもあり得ます。

守屋さんと日々対話している中では、ミーミルの考え方や仕組みの良さを逆に学ばせてもらっています。ミーミルはユーザベースのやり方をベースにアップデートをしているので、逆にユーザベース側に取り入れたいと思うことも多いんですね。そういった点で、いい化学反応が起きていると思います。

今後はミーミルの独立性の担保にチャレンジしていくそうですが、どのように展開していく予定ですか?

守屋:
ミーミルはミーミル自身の事業を成長させ、強い組織をつくるために、日々考えて試行錯誤しています。そこで困ったり悩んだりすることがあれば、松井さん、稲垣さん、佐久間さんたちが過去のケースをもとにアドバイスをくれるんです。誰と話をしても、ミーミルの組織・カルチャーをしっかりとつくり、開花することにポジティブな応援とサポートをくれる。これはほかのユーザベースのメンバーも同じですね。コントロールや指示監督をせずに、自律を促し、サポートしてくれます。

だからミーミルでは、ミーミルの組織やカルチャーを自分たちでつくっていくための議論が思い切りできるんです。今後も出資やM&Aなども含め、外部からグループ入りする会社は出てくると思いますが、そうした会社に向けて、ここは強く伝えていきたいですね。

最近はNewsPicksやSPEEDAとの連携、プロジェクトチームでの共同開発などを通じて人ベースのつながり、信頼が生まれ、メンバー個人が意思を持ってミーミルに異動してきてくれることも増えています。

松井:
人材の交流が深まっていくのもM&Aの醍醐味ですね。

守屋:
そうですね。たとえばコンピテンシーをつくったり、フィードバックしたりするときに、ミーミルからすると初めての仕組みを取り入れているので視点がバラバラになりがちです。

そこにユーザベースから異動してきたメンバーがいることで目線が整えやすくなって、お互いに共通認識を持てるというような効果もあります。そうしたちょっとした場面でも人の融合が、カルチャーの融合や組織的な連携を加速させていく力を持っていると感じます。組織化を推進するフェーズですごく力になってくれていますね。

引き続きミーミルはミーミルとしての事業やカルチャー、組織をつくることにコミットしながらも、ユーザベースと共に同じ目的を追いかけ、事業は密融合させていく。そうすることで、より良い形でカルチャーの融合が進み、その先には相乗効果が生まれていくと信じています。

執筆:宮原 智子 / 編集:筒井 智子

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