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短期的な衝突を恐れず、オープンに伝え合う大切さ(FORCAS専門役員 北内啓)

短期的な衝突を恐れず、オープンに伝え合う大切さ(FORCAS専門役員 北内啓)

ユーザベースグループで働くメンバーを紹介する社員紹介インタビュー、第18弾は専門役員 FORCAS CAIO(Chief AI Officer)の北内啓です。

北内 啓

北内 啓AKIRA KITAUCHIFORCAS CAIO

1998年に株式会社NTTデータに入社、研究開発部門で自然言語処理、情報検索、テキストマイニングの技術開発に従事。その後約3年間のスタートアップを経て2014年11月にユーザ...

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目次

なぜユーザベースに転職しようと思ったんですか?

理由は主に3つあります。

1つ目は、何より自分の強みである自然言語処理のスキルを活かせると思ったから。私は大学院から自然言語処理の研究開発をしていて、新卒で入社したNTTデータでもずっとテキスト分析をやってきました。ユーザベースは各種レポートやニュースなど、扱うテキスト情報の量がかなり多いんです。自分のスキルを活かすのにピッタリな場だと思いました。

2つ目は面接での梅田さん(梅田 優祐/ユーザベース共同創業者)の印象です。最終面接で稲垣さん(稲垣 裕介/現ユーザベース Co-CEO)と話していたら、終了間際に梅田さんが乱入してきて(笑)、矢継ぎ早に質問してきたんですよ。

その質問がスピーディかつ的確で、頭の回転の速さとスピード感、力強さを感じて、とにかく圧倒されました。私の回答に対しても「何でそうしたの? こうしたほうが良かったんじゃないの?」と弾丸のように意見をぶつけてきて。この人が代表をやっている会社なら絶対にうまくいくと思ったんです。

3つ目の理由は、面接で会った人たちの人柄に惹かれたから。彼らのような人たちと一緒に働きたい──これが一番大きいですね。もう1社内定をいただいていた会社があったんですが、これが決め手になりました。

現在の仕事内容と、仕事でワクワクしていることを教えてください。

実は今、ユーザベースは週3日勤務で、あとはユーザベース出身の関洋二郎さんが創業したxenodata lab.(ゼロデータラボ)で週2〜3日働いています。

ユーザベースではFORCASが2日、NewsPicksが1日の割合です。FORCASは立ち上げ初期から関わっていますが、NewsPicksは今年の4月から。10/19にリニューアルしたアプリの、アルゴリズム部分を検討しました。

根幹となるアルゴリズムをどうするかを私がメインで考え、実装は他のメンバーが担当してくれました。数年前、社内の新規事業開発コンテスト「Think Beyond(2020年に「think beyond」としてリニューアル)」がキッカケで作ったマイニュースの朝刊・夕刊機能がベースになっています。Think Beyondの際に考えたアルゴリズムが今回のリニューアルでベースに採用されたのは、単純にすごく嬉しいですね。

FORCASでは分析アルゴリズムの改善と、多種多様な企業データ組成の2点に主に取り組んでいます。FORCASには2つのメイン機能があります。1つは、既存企業と類似した潜在企業をスコアリングして自動抽出する機能。もう1つは「高成長企業」や「広告宣伝費を増やす可能性が高い企業」など成約確度の高い企業をシナリオベースでターゲティングできる機能です。

私の所属するAIチームでは、その類似した潜在企業を自動抽出する分析アルゴリズムと、ターゲティングする際に必要な企業データをつくるのが主な仕事です。AIを使ったビジネスを展開している企業は、アクセスログや画像など数値や画像を分析対象にしているところが多い。一方、FORCASでは企業のウェブサイトや、求人サイトの求人広告、有価証券報告書など、テキストを対象として企業の特徴を表現するデータを作っています。

カスタマーサクセスやセールスのメンバーを通して、ユーザーからの要望はほぼ毎日届きます。そこから何をやるのか優先度を決め、開発しリリースする。リリースするとFORCASのメンバーからはもちろん、ユーザーからも喜びの声をいただけます。人の役に立っている実感を得られる瞬間ですね。FORCASメンバーやユーザーの喜ぶ姿を想像しながら開発しているときに、ワクワクするんです。つまりほぼ毎日ですね(笑)。

xenodata lab.を手伝っているのも、ユーザベースで働いているのも、自分のやりたいことに直結しているから。自分の強みを活かす、貢献することができて、かつそのサービスが世の中を良い方向に変えられる可能性のあるものに関わりたい。

xenodata lab.がつくろうとしているのも、少なくとも日本には今まで1つもないようなサービス。そこにチャレンジしようとしており、テキスト分析の技術が必要なのに、それが足りていなかった。だったら自分が何とかしたい──自分が関わらないで、もしxenodata lab.がうまくいかなかったら、絶対に後悔すると思ったんです。

仕事で忘れられないエピソードはありますか?

先ほど話したAIチームのメイン業務のうち、企業データの組成は日常的にやっていて、分析アルゴリズムは年1回程度の改善です。後者が本当に大変で……。既存顧客データをアップロードすると「A社が受注できたなら、B社も受注できるのでは?」とスコアとともにサジェストする機能で、だいたい1年に一度改定しているんですね。

アルゴリズムの検討や精度検証の実験だけでなく、分析結果を画面のどこにどのように表示するのかといったUXも合わせて検討する必要があります。さらに分析アルゴリズムの改善と同時に、分析機能自体も改良することが多いんですね。開発に着手してからリリースまで、数ヶ月かかることが多い。前回は約8ヶ月かかりました。

しかも佐久間さん(佐久間 衡/現 B2B SaaS Company代表)のツッコミが激しいんですよ。佐久間さんは数学で大学院まで行っている人なので、めちゃくちゃ得意分野なんですね。我々が分析アルゴリズムについて説明に行くと、数学的な根拠に基づいた専門的な反論やツッコミが入ります。

毎回「ああ、確かに……」って検討し直し、それを何度も繰り返してブラッシュアップして──すごく大変だったけど、より良いものがだんだん見えてくる、そのプロセスがすごく楽しかった。前回の分析機能改良の検討資料は、最終的に200スライドを超えました。それだけ大変だったので、リリースできたときは本当に嬉しかったです。

The 7 Valuesの中で、一番好きなバリューは何ですか?

好きなバリューは「異能は才能」です。自分は得意なこと・好きなことと、苦手なことの落差が大きいんですよ。前職は管理職になるキャリアパスしかなかったんですが、ユーザベースは個人の強みにフォーカスできる。

佐久間さんもよく「強みを伸ばすようにしていきたい」と言っています。弱い部分は他の人がサポートし、それで組織全体で最大のパフォーマンスを発揮できれば良いという考え方です。すごく自分の性質に合っているなって。

今年5月から兼業することになって、チームリーダーを代わってもらったんですよ。メンバーも増えて、プロジェクトマネジメントの必要性も高まった中でも、リーダーをやることにwillのあるメンバーに任せることができました。得意なこと・好きなことをやるほうが、モチベーションも生産性も上がるというユーザベースの考え方は、すごくいいなと思います。

「異能は才能」が好きなもう1つの理由は、ベースにあるオープンコミュニケーションがあるから。いろいろな異能が一緒に働くと、考え方の背景の違いによって衝突することがたくさんあります。

私はものづくりが好きで集中したいけど、意見が合わないとそこで停滞してしまうところがあって。人に強く言われたり、反論されたりすると「うっ」となってしまう部分があるんですね。

でも、ユーザベースでは「異能は才能」とそのベースにあるオープンコミュニケーションという考え方が明文化されている。だから、より良いものを早くつくるために、コトに向かって自分の考えや意見を、遠慮せずに言うことができるようになりました。あくまで丁寧な言葉で伝えるのは大前提ですが、「ヒト」ではなく「コト」に向かって、本人に直接伝えて解決していくことが大事なんですね。

FORCASの会社紹介資料では、独自のバリューとして「共創」と「オープン」を掲げています。これは立ち上げ初期の経緯があるからなんです。例えば、あるメンバーがSlackでぶっきらぼうな言葉で伝えたことで、一部のメンバーが萎縮してしまったことがありました。

その際、佐久間さんが「コトとヒトの2つのタイプがある。コトに向かうのは大事だけれど、ヒトに考慮することも大事だ」と伝えてくれたんですね。一方、私みたいに遠慮してしまいがちなメンバーに対しては、本人に直接言えるようにしましょうと。

「あなたはこう言うけど、私は違うと思う」って、いわゆる「衝突」じゃないですか。短期的に人間関係は険悪になるかもしれない。それでも、自分と相手の考えを相互に共有して、目線を合わせていくことが大事なんですね。雨降って地固まるじゃないですけど、中長期で見ると信頼関係は強くなると思います。

脳は才能

今後挑戦したいことは?

FORCASでは時系列の企業データ組成や分析をやっていきたいですね。2年くらい前からずっとやりたいと思いつつ、なかなか手をつけられていなくて……。たとえば「最近Marketoを使い始めた企業」や「最近マーケティング職の採用を始めた企業」が分かると、自社のサービスを必要とし始めた企業に即アプローチできるようになるわけです。

また、たとえば3ヶ月に1回、既存企業を分析することで「最近受注できるようになってきた企業」の特徴を捉え、それをABM(Account-based marketing)に反映できるようになります。今はそのためのデータ処理基盤を構築している段階です。

もう1つは、先日リリースされたターゲットをつくる機能について、メイン担当ではありませんが、まだ改善の余地があるので携わりたいなと思っています。これはアルゴリズムというよりUXの改善にあたりますが、昔からUXにも興味があるので、ユーザーがより良いターゲット企業を簡単に見つけられるような機能を開発していきたいですね。

NewsPicksはリニューアルしたアプリが正式リリースされたばかりですが、レコメンドアルゴリズムにはまだまだ改良の余地がたくさんあります。今回のリニューアルではニュースが1つのフィードに集約して表示されるようになるため、ニュースの表示順が重要になります。より良いニュースが優先的に表示されるよう改良し、ユーザー体験を向上していきたいと考えています。

今も毎日忙しく働いていますが、とにかくやりたいことが尽きないんですよ。私は今、49歳。あと何年全力で仕事ができるだろう? と最近よく考えるんです。体力は少しずつ落ちているし、徹夜もできなくなりました。いつ大きな病気になるか分からない──自分が役に立てて、かつ楽しい仕事があるなら、今やっておきたい。これからも毎日ワクワクしながら、目の前の仕事に全力で取り組んでいきます。

執筆:筒井 智子
Uzabase Connect