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立ち上げ3ヶ月で案件数を2.5倍に増加──セールス・マーケと一体になって目標を追いかけるインサイドセールスの立ち上げ方とは

立ち上げ3ヶ月で案件数を2.5倍に増加──セールス・マーケと一体になって目標を追いかけるインサイドセールスの立ち上げ方とは

B2Bマーケティングプラットフォーム「FORCAS」のインサイドセールスは、立ち上げ3ヶ月で案件数を2.5倍に増加させるなど、セールス・マーケティングと三位一体になり成長を続けてきました。今回はFORCASインサイドセールスの立ち上げをリードした大堀秋沙と、大手法人向けの統合チームでSPEEDA/INITIAL/FORCASの新たなインサイドセールスの形をつくり出そうとしている千葉未来に、ユーザベースのインサイドセールスならではのやりがいやチーム立ち上げの難しさ、今後のビジョンについて話を聞きました。

大堀 秋沙

大堀 秋沙AKISA OHORIFORCAS Revenue Inside Sales Team インサイドセールスエキスパート

住友電気工業株式会社にて、南アジアを中心とした海外営業業務に従事した後、子育てを期にユーザベースに参画。SPEEDAで...

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千葉 未来

千葉 未来MIKU CHIBAStrategic Partner Division インサイドセールスチーム

株式会社リクルートライフスタイルで非対面営業組織の立ち上げを担当。その後freee株式会社や医療関係者向けコミュニケー...

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目次

インサイドセールス=テレアポではない

インサイドセールスへの注目が集まっていますが、改めてインサイドセールスとはどんな仕事なのか教えてください。

大堀 秋沙(以下「大堀」):
インサイドセールスは、電話やメールなどを中心に、非対面でお客様とコミュニケーションを取る営業手法です。
インサイドセールス=テレアポと捉えられることが多々ありますが、アポイントの質に徹底的にこだわるのがテレアポとの大きな違いです。

インサイドセールスではお客様が抱えている課題をヒアリングし、状況に合わせて継続的にコミュニケーションを取っていきます。そしてお客様のプロダクトに対する興味・関心が高まった時点で、セールスにバトンを渡します。そうすることで、セールスはお客様が抱える課題に対するソリューションを、よりダイレクトに提案することができます。

FORCASインサイドセールスならではの面白さとは何ですか?

千葉 未来(以下「千葉」):
ユーザベース以前に経験してきたインサイドセールスでは、既存顧客と業界区分が同じお客様であればアプローチをしていたので、選定基準は比較的緩めでした。それに比べFORCASは、既存顧客データから成約確度が高いアカウントを特定し、売り上げを最大化できるABM(Account Based Marketing)と呼ばれるマーケティング戦略をとっています。

FORCASではABMを強度高く実践しているので、どういうお客様であれば価値が届くのか判断基準が厳しいんですね。なので、最初は感覚をつかみきれませんでした。

成約確度の高い企業を予測できたとしても、全てのお客様にすぐにアプローチできるわけではないんです。だからこそ、お客様の”温度感”を汲み取りながらお客様に寄り添うことに、とてもやりがいを感じてきました。

大堀:
判断基準を緩めれば、目標とする商談数をより早く達成できるかもしれません。でもそれは私たちの理想とするインサイドセールスの姿ではないんです。

インサイドセールスは各企業のビジネスモデルや課題を理解し、最適なタイミングで適切なアプローチをすることが求められます。FORCASのインサイドセールスは、そのために必要な分析力やヒアリング力、高いコミュニケーションスキルや調整力など、インサイドセールスに必要なスキルを高次元で習得できる環境だと思います。それは私にとっての面白さの1つですね。

また毎日お客様に接する中で磨かれるスキルや感覚をもとに、インサイドセールスが中心となってターゲットリストの精査を行い、ABMの精度をさらに高めることで成果を生み続けていけることもやりがいに繋がっています。

もちろん個別にお客様に向き合うからといって個人戦ではないので、チーム全体でスキルアップしていくことが大事です。「こういうメールを送ったら上手くいった」「こういう伝え方をしたら興味を持ってもらえた」など、毎日の朝会などでメンバー同士で積極的に成功事例をシェアするようにしています。

対談風景

ABMシフトで実現した非連続な成長

FORCASではインサイドセールスチームを立ち上げた当時からABMを導入し、成功事例を積み重ねていたんですか?

大堀:
ABMの実行に必要なデータを分析するためには、最低でも100社ほど事例が必要です。立ち上げ当時はマーケティングチームも立ち上がったばかりだったので、アプローチできるコンタクト先 も少なく、ABMを実践できる状況ではありませんでした。それでも当初から高い目標を掲げていたので、アプローチ先が限られている中で、ひたすら電話をかける日々が続いたんですね。

その後マーケティングチームが立ち上がり、アプローチ先が飛躍的に増えたため、次々と寄せられる見込み顧客に対して対応を続けました。営業の商談機会は爆増する一方、精度の高い商談が少なかったため、忙しいのに受注数が伸びず営業が疲弊し始めてしまって。

その厳しい状況をどのように乗り越えたんですか?

大堀:
導入企業が一定数を超え始めていたので、ABMへシフトすることにしました。ABMでは既存顧客が属する業界や地域、売上や従業員数など、さまざまな情報をもとに分析し、アプローチすべき企業がデータとして可視化されます。どういうお客様に価値を届けていけばいいのか明確になることで、アプローチすべき企業も厳選されるため、インサイドセールスチームがコンタクトできる企業数は必然的に減少します。

でもそれに反比例してご契約いただくお客様は増加するので、好循環が生まれ業績は右肩上がりに成長していったんです。ターゲットリストを見続けるあまり、ほぼ全ての企業が頭に入っており、今ではSNSで名前や写真を見ただけでターゲット企業のキーマンかどうか判断できるほどになりました(笑)。

FORCAS 大堀秋沙
千葉さんは昨年までFORCASのインサイドセールスに所属されていました。今年から所属チームも変わり、これまでとの違いはありますか。

千葉:
現在は大手法人向けにSaaSを提供するSPEEDA/INITIAL/FORCASの3事業が統合した新たなチーム 「Strategic Partner Division」でインサイドセールスを担当しています。Strategic Partner Divisionは、企業が抱える課題に対して3つのプロダクトで包括的にソリューションを提供しているチームです。

これまでとの違いは、お客様は大手企業が中心なので、そもそもアプローチできる企業が限られているんですね。そのため1人ひとりのお客様に、これまで以上に時間をかけて、深く丁寧なコミュニケーションを取っていくことが重要です。以前はFORCASだけを考えていれば良かったんですが、他の2つのプロダクト理解も深めなければなりません。

さらに多種多様な企業の課題に対応するスキルも必要になりますし、事業ごとでインサイドセールスのやり方にも違いがあります。社内システム1つをとっても、現段階では事業ごとに分かれているので、お互いのやり方を尊重しつつ情報連携をしていく難しさを感じています。

FORCASは営業やマーケティング担当者にフィットしやすく、SPEEDAやINITIALは新規事業開発や経営企画部からのニーズが高いなど、顧客層の違いをどのように融合して実際の提案に落とし込んでいくのかに関しては、まだ手探りな部分があります。

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インサイドセールスのさらなる進化を目指す

マーケティングやセールスチームと連携する際に気を付けていることはありますか。

大堀:
お互いに丁寧なフィードバックをするように心がけています。セールス担当の往訪が終わったらすぐにヒアリングし、提案タイミングは適切だったのか、事前に提供する情報は充分だったか、丁寧なフォローができていたのかなど、細かなフィードバックをもらって、PDCAを高速で回すようにしています。

フォーカスすべきお客様へのアプローチが思うように進まない場合は、マーケティングチームにイベントやセミナー設計の提案や相談を行うこともあります。

セールスやマーケティングと一丸にならなければABMの効果は最大化されないので、毎週合同ミーティングを行い、現状の共有や目標値の調整などは週次で擦り合わせています。

千葉:
他チームと連携するうえで、インサイドセールスチームとしての安定的な成果を出すことも重要です。チームの総合力を底上げするために、入社後研修の充実化を図っています。研修にはインサイドセールスに必要なスキルを大きく5つのカテゴリーに分け、その中には5~6つのステップが用意されています。この研修を受けることで、インサイドセールス未経験の人も、早期に自立できるような仕組になっています。

研修の他にも、誰でもすぐにABMを実践できるようにマニュアルを作成しています。アプローチすべき企業の判断基準をつかむまでには時間がかかるため、言語化することで再現性を高めるようにしているんです。また同じような悩みを抱えているお客様にもマニュアルを共有し、社内外に関わらずABMのノウハウをシェアするようにしています。

FORCAS 千葉未来
マーケティングやセールスチームと連携する中で、目標値が違うことによってぶつかり合うことはないのでしょうか。

大堀:
ぶつかり合うわけではありませんが、目標値の違いからマーケティングチームと認識がずれたことはあります。以前のマーケティングチームの目標値は、将来的にお客様になる可能性が高い母集団形成をすることであり、インサイドセールスチームは実際に本格的な検討に入っている成約確度の高い、次につながるアポイント数を見ていました。結果的にマーケティングチームでは目標を達成しても、インサイドセールス側では達成できない状況が発生したんですね。

マーケティングチームと話し合った結果、成約確度の高いアプローチすべき企業が明確に分かるABMの特性を活かし、マーケティングチームの目標値も実際に本格検討に入っている商談数に変更しました。それによって両チームで目線が合い、プロダクトへの興味が高いお客様に、さらに効率的なアプローチができるようになりました。

最後にインサイドセールスにおける今後の展望について教えてください。

千葉:
Strategic Partner Divisionではユーザベースが提供する全てのB2Bソリューションをもってお客様が抱える課題を解決しようとしているので、ユーザベースグループとしてどのような価値を届けていけばいいのか考え抜かなければなりません。お客様の最良のビジネスパートナーになるために、徹底的に顧客の立場に立って考え、複合的にソリューションを提案できるようにしていきたいと思います。

そのためにまずは、Strategic Partner Divisionとしてのインサイドセールスの形を、しっかりつくっていきたいですね。現在はセールスチーム主体でプロジェクトが発足することが多いんですが、インサイドセールスも積極的に提案していけるようにしていきたいです。そのためにもプロダクト理解をさらに進め、企業が置かれている市場環境や事業戦略など、幅広く知識を吸収していきたいと考えています。

大堀:
FORCASでは、これまで顧客層がスタートアップや中小企業を中心としていましたが、今年から大手企業にも拡大しています。それに伴い、インサイドセールスのアプローチ方法も新たな型を見つける必要性が出てきました。これを機にインサイドセールスをさらに進化させ、ABMを極めていきたいですね。

ABMを究極まで追求すると、極めて精度の高いターゲットリストをもとに、マーケティングからインサイドセールス、そしてセールスに最高で無駄のないバトンパスが生まれます。そうすることで、サービスを必要としているお客様に最速で価値をお届けできる、高効率なサイクルを築くことができます。そして最終的には各チームがONE TEAMとして、お客様の価値最大化を目指していきたいと考えています。

文中写真は2019年夏に撮影されたものです。
本記事はオンライン(zoom)にて取材しました。

執筆:因幡 恵 / 撮影:岩井俊樹 / 編集:筒井 智子
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