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商社、金融機関からベンチャーに。一番変わったのは「忖度」しなくなったこと

商社、金融機関からベンチャーに。一番変わったのは「忖度」しなくなったこと

「経済情報で、世界を変える」をミッションに「SPEEDA」「NewsPicks」などのプラットフォームサービスを展開するユーザベースでは、商社・金融機関などの大企業から転職してきたメンバーが多数活躍しています。

なぜ安定している大企業からベンチャーを選んだのか、それぞれのカルチャーの違いや職場が変わっても一貫していることなどについて、実際に大企業から転職してきたメンバーに聞いてみました。

山中 祐輝

山中 祐輝HIROKI YAMANAKASPEEDA事業 執行役員COO

2010年に東京大学を卒業後、新卒で三菱商事に入社。エネルギー事業グループの管理部門で、予決算や投資案件のファイナンス...

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黒川 慶大

黒川 慶大SPEEDA コンサルティングサービ

大阪出身。神戸大学経済学部卒業後、株式会社三菱東京UFJ銀行入社。大阪、東京、名古屋と転勤族の醍醐味を味わい、中堅中小...

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目次

商社→ベンチャーでも一貫しているもの

お二人は商社、金融機関といういわゆる「大企業」からベンチャーのユーザベースに移ってきたわけですが、働く場所が変わる中でも一貫しているものは何でしょうか?

山中 祐輝(以下「山中」):
そもそもなぜ商社に入ったのか、という話をしますね。僕自身は別に留学もしたことないんですが、なぜか日本人としてのアイデンティティーみたいなのが強いんです。僕は映画鑑賞が趣味なんですが、昔の映画って黒澤明とか巨匠みたいな人がいっぱいいて、日本の映画界ってすごい! みたいなものがあったじゃないですか。それが今は弱くなっている。サッカーでも僕の学生時代は日本はそんなに強くなくて、でもお隣の韓国は強くて悔しいなとか、何か事あるごとに日本のプレゼンスが低くて悔しいなと思うことが結構あって。

対談風景

山中:
なので就職活動するときは、日本のプレゼンスを上げることにダイレクトに関われる企業に絞って受けていました。商社だけじゃなくて銀行やコンサルも受けてたんですが、コンサルは全部落ちました(笑)。

最終的に商社と銀行で内定をいただいたんですが、商社はお金の面でもそうでない部分でも関われるのが幅広いなと思って、商社に行ったんです。そこではエネルギー事業に配属されて、LNGの投資などに関わっていました。

ユーザベースに転職した理由は、単純にすごくワクワクしたとか、中で働いている人がうらやましくなったというのが究極的な理由です(笑)。ベンチャーでも大企業でもフェーズが違うだけで、基本的には同じような機能を果たせるなと思ったんですね。ユーザベースは今は1とか10とかかもしれないけど、それを100とか1,000にしていけるポテンシャルを持っている会社だと思うんです。そういう意味ではフェーズが違うだけで、大企業もベンチャーもすごくつながっていると思います。

ユーザベースに転職を決めたのは、事業やサービスももちろんですが、創業者・経営者、メンバーもみんなで本気でグローバルな会社になろうとしているというのがビンビン伝わってきたので、他の会社と違うなと感じたところです。ミッションも「経済情報で、世界をかえる」と世界がターゲットであることを明確にしていますし、そのミッションに向かって愚直に追えるチームを持っているというのは、他にあまりないなと。

転職して一番変わったのは、「忖度」しなくなったこと

次は黒川さんですが、ユーザベースに入って、銀行員だった前の自分と比べて一番変わったところは何ですか?

黒川 慶大(以下「黒川」):
服装ですかね。

(一同笑)

山中:
変わったよね、確かに(笑)。

黒川:
転職した当時は一応ビジネスカジュアルぐらいがいいのかなとセットアップを着ていたんですけど、今はもうほとんど私服でですね。今考えると何でスーツ着ていたんだろうな? という。

SPEEDA 黒川

山中:
僕もスーツ嫌いだからめっちゃわかる(笑)。

黒川:
まじめに回答すると、一番変わったのは、「誰かがこう考えているから、こうした方がいい」というのがなくなりましたね。

山中:
「忖度」だ。

黒川:
僕も流行語ではじめて知ったんですが、それが忖度だったとは(笑)。

大企業って組織が大きいので、やっぱり上司や関係者を立てられるような交渉の仕方をしていたし、実績もそういう視点でつくっていたように思います。

でも本来は、目の前のお客さんに対して、全力を注ぐのが商売の基本ですよね。「この社内向け資料をつくっている間に外回りができたらどれだけいいだろう……」と思うこともあって、社内向けの仕事ももちろん大事で必要なことだったとは思うんですけど、自分のやりたいこととか、社会のために本当はやった方がいいことの優先順位が、逆転しているんじゃないかと感じることもありました。そういうある意味、「仕方なさ」を残して目の前の仕事を頑張っていたところがあります。

それに対してベンチャーに来て思うのは、自分のやりたいことに、自分の責任でやっていけるという環境がすごく自分には合ってるなと。誰かにちょっと調整しにいったりとか、水面下で交渉したりする必要がまったくない。全部オープンにコミュニケーションして、社会に対して価値を出していけるというのは、良いPDCAを回せるというか、良いサイクルをつくっている実感がありますね。

生き方というのは自分が意識して変えられることもありますが、やっぱり、環境が人をつくる部分が大きいんだなと。そういう意味では、自分がやりたいことを実現するために、自分だけじゃなくて環境も変えて、飛び込んだのは良かったのかなと思います。

そういうやりたいことや課題感を持ってベンチャーに飛び込んできているので、働いてみてのギャップもほぼないですし、もちろんしんどいシーンはあるんですけど、不満とか全くないなと感じてます。しんどくても、ダイレクトに誰かのためになっているから頑張れるなという、それだけですね。

将来のキャリアイメージは?

お二人は将来のキャリアイメージはありますか?

黒川:
今の世の中のスピードを考えると、3年後、5年後どうなっているか、全然わからないですね。さんちゅさん(山中のニックネーム)は何かキャリアイメージを持っていますか?

山中:
こんなことインタビューで言っちゃいけないのかもしれないですけど、究極的には「特にない」ですね。

僕がユーザベースに来たのは、究極的には、ユーザベースをGoogleみたいな真のグローバル企業にしたいという思いだけです。今年からSPEEDA事業の責任者になって、ポテンシャルしかないサービスだと思っているので絶対グロースさせていくけど、別にその延長で社長になりたいとも思っていないし。自分が代表やっているような会社って、たかが知れているなと思っていて(笑)。

SPEEDA 山中

山中:
僕たちの業界で言うとグローバルトップは時価総額1兆円を超える規模の企業がざらにあるんですが、ユーザベースはまだ時価総額500〜600億ぐらいの会社です。世界レベルまでにはめちゃくちゃギャップがある。そこで自分が今、5年後のキャリアを想像できちゃっていたら、終わりだと思うんですよね。自分より優秀なタレントがどんどん入ってきて、想像を超えるチームになっていく、とにかくそういう会社にしたい。

ユーザベースに入社したときも、「何もできないからとりあえず営業ね」というぐらいだったので(苦笑)、3年半後にSPEEDA事業を統括しているなんて思ってもいなかった。僕たちは非連続な成長をしながらプロダクト・会社をつくっているので、今時点で想像できちゃうようなものだったら、終わりだなと思います。だからキャリアイメージは「特にない」が僕の答えです。

黒川:
僕も同じで、そんなにはっきりしたイメージが見えていないんですよね。

だからやっぱり今は目の前のことを一生懸命やって、後からたどると、自分の行きたい方向がきっと見えてくるのかな、という考え方しかできない。目の前にある点をとにかく黒く塗りつぶしていくことに全力投球したら、結果的に道が切り開けていくのかなと思っています。

就職活動したときに、松下幸之助の本めちゃくちゃ読んだんです。その中にあった、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉を座右の銘にしていて。

やっぱりどんなに一生懸命頑張っても、結果がついてこないことってあるじゃないですか。結果って、どんなに得ようと思っても思ったように得られないもので。なので、自分が納得いくまで頑張って、あとはもう運を天に任せるしかないと思えるぐらい頑張っていくという、そういう姿勢がすごく好きなんです。

そうやっていくと、気付けば自分の行きたかった島に行き着いたり、また想像もしていなかったところに行き着たりするのかなという気はしています。

僕も同じようにキャリアイメージはないですけど、目の前の目標に向かって一生懸命漕いでいくしかないなと。ユーザベースの「経済情報で、世界を変える」というミッションは僕たちが向かっていく旗印だと思うので、その方向に向かってしっかり漕いでいけば、きっとすごくいいところにたどり着けるんじゃないかなと思ってやっています。

山中:
そうだね。それでいうと、ユーザベースがもっとグローバルな会社になったときに、その中で重要な位置は占めていたいという思いはあります。自分がいないと回らない組織って、絶対つくっちゃいけないと思うんだけど、自分がいなかったらできないことが明確にあるというか、頼られていたい、必要とされたいというか。

自分がいることで作れる価値は提供していきたい。SPEEDAがもっと成長した段階で、振り返ると山中が必要な存在だった、とみんなに思ってもらえるようなことをやっていきたいなと思っています。

たった一度の人生、何かを残さないと生まれてきた意味がないじゃないと思っていて。大企業をやめたのもそれが理由の1つで、毎日の仕事は仕事はすごく楽しいし、偉大なことをしている。でも明日自分が死んだときに、誰も何も困らずに普通に仕事が回っていくんだろうなと思ってしまって、それが悲しくて。

それはもちろん会社として正しくて、属人的な組織を作っていない強さではあるんですが、自分個人として考えると、そうすると自分の存在意義ってどこにあるんだろうなと。なので「山中にしかできないこと」というのを常にやり続けたいですね。

ユーザベースが真のグローバル企業になって、僕よりも優秀な人がバンバン入ってきて、僕のキャパが全然追い付かないぐらいの組織ができて。でも自分にしかできないことがある。そんな状況がいいのかな。今はそんな感じですね。

本記事にはすでに退職したメンバーも含まれております(組織名・役職は当時)

執筆・撮影:山田 聖裕
Uzabase Connect