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「焦らなくても大丈夫」──育児をはじめた皆さんに、母になって15年経った私が伝えたいこと / My Life as a Working Mother

「焦らなくても大丈夫」──育児をはじめた皆さんに、母になって15年経った私が伝えたいこと / My Life as a Working Mother

ユーザベースでは月に2回、全世界のメンバーをオンラインでつなげて、マネジメントからのメッセージを伝える「みんなの会(Town Hall Meeting = THM)」を開催しています。

今日の記事では、ユーザベース初のワーキングマザーであり、自由に働ける会社をつくるコーポレート部門を統括している松井しのぶによる、「My Life as a Working Mother」をお届けします。

目次

自己紹介

今日のみんなの会では、私自身のことについて少しお話させていただきます。

松井しのぶ01

今日お話しする理由は主に2つあります。

1つは、ユーザベースの経営陣をみても男性ばかりだなと感じていること。先日のみんなの会では、太田さん(太田智之/執行役員)が自分の人生を振り返っていましたが、女性視点での話もたまにはしたいと思って、時間をもらいました。

もう1つは、最近は社内でも、女性だけじゃなくて男性も育児参加する人が増えてきています。保育園に子どもをお迎えにいかなきゃいけないとか、育児だけじゃなくても親の介護とかそれぞれの家庭の事情で、「キャリアの切れ目」みたいなのが出てくることが増えて来ていると思います。

私はけっこう早くに子どもを産んだので、母親になって15年ぐらい経っているんですね。ユーザベースの社員のお子さんたちはまだ幼稚園とか小学校低学年が多くて、私は皆さんより少しだけ長く親をやっているので、その経験も踏まえて、今日は私の思っていることを話せればと思います。

「育児をしていても働きやすい会社をつくってほしい」

質問です。今、ユーザベースにはワーキングマザーが何人ぐらいいると思いますか?

Q:ユーザベースグループのワーキングマザーの数は?

──会場:30人ぐらい?

ちょっと近いですね。答えは東京15人、スリランカ2人、シンガポール1人、育休中4人で合計22人です。

A:22人

ただこれは、正しい数字じゃない可能性もあります。会社としては「あなたワーキングマザーですか?」と聞いているわけではないので。

次の質問です。ユーザベース最初のワーキングマザーは誰でしょうか?

Q:ワーキングマザー第1号は?

スライドに出てしまっていますが(笑)、私です。

私が4年前にユーザベースに入ったとき、育児しながら働いている女性社員は誰もいませんでした。まだ上場もしてなくて70人ぐらいの組織で、ベンチャーだったのでみんな土日や昼夜も問わず働いていて、唯一、育休中の社員がいるぐらいでした。NewsPicksも会社じゃなくて社内のいちチームだったし、海外も立ち上がったばかり。

私が入社したきっかけは、駐在先のトルコから一時帰国中に、大学時代からの友人だった未来くん(村上 未来/執行役員)からユーザベースで一緒に働かない? って言われて、とりあえず遊びに行きますとランチに行ったら、「うちに来ない?」って当時社長だった新野さん(新野 良介/共同創業者 兼 現 取締役)に誘われたことがきっかけです。
(参考:「どこでも、いつでも働いていい」働き方を自分でデザインできる会社 ── 株式会社ユーザベース

そのときに新野さんから、

育休制度をつくったんだけどさ、まだあんまり使ってくれないんだよね。 みんな忙しいし、会社も個人もどんどん成長していく会社にしていきたいと思ってるけど、これから子育てしていこうっていう人に「ここに入っても働いていけるのかな」と思われちゃったら、もったいない。そんな会社にはしたくない。 子どもがいても働き続けられる会社だということを、ぜひ松井さんに入ってもらって体現してほしい。

と言われたんですね。

でもちょっと待てよと。ベンチャーってめっちゃ忙しそうだし、「私、そんなに期待されても、時間のすべてを仕事にコミットするってできないです」って言ったんです。

すると新野さんが、「松井さんが仕事に使える時間の中で100%コミットしてくれたらいいよ」と言ってくれて。この言葉が背中を押してくれました。

当時はどベンチャーで深夜まで残業している人ばかりの中で、「経営者がこう考えているってことは、この会社はこれから、私みたいな人でも働いていける環境をつくっていけるんじゃないか」と思いました。

新野セリフ

転職1年目で第1子を妊娠。復帰したけど仕事は超ヒマ!

ここからはちょっと、私の履歴書です。

まず私は24歳のときに結婚して、同時にPwCのTAX部門に転職しました。税務申告書の作成や国際税務のアドバイザリー業務をやっていました。

正直、覚えることも多かったし、まだまだジュニアスタッフだったし、めっちゃ忙しかったです。

そんな中で働いていたら、転職して1年目ぐらい、25歳で第1子の妊娠が発覚しました。悪阻(つわり)が本当にひどくて、時差勤務させてもらえたので朝10時までに会社にいけばよかったんですが、通勤途中で2回ぐらい吐かないと、会社までたどり着けなかった。

PwCは今は働き方改革で有名ですけど、当時は時短とかなくて、時差勤務しか選べませんでした。仕事もめっちゃ激務だったんですが、1日3回はトイレに駆け込んでトイレから出られない……そういう妊娠初期でした。

極めつけは、私は公認会計士なんですが、当時、会計士の資格を取得するには、会計士補になって2年実務補習所に通って、三次試験(今はなくなりましたが)に通らないと会計士になれなかったんですね。これは、だいたい合格率が半分ぐらいの試験です。

ですが当時、悪阻でまったく勉強ができず……。筆記試験の1か月前になってようやく、試験休みと同時に悪阻がおさまって、友だちに頼み込んでどこが出るか教えてもらって、なんとか筆記試験を乗り切りました。筆記試験を通ると次は口述試験があるんですが、それが妊娠9か月のときで、寒い廊下で4時間もお腹大きい中待たされて。試験官に税務のマイナーな論点とかよくわからない質問されて、「あーもうつらい!」みたいなのが第1子の妊娠中の話でした。

松井しのぶ

息子は4月に生まれる予定だったんですが、3月に生まれてきて。今お子さんを保育園に預けられてる方ならわかると思うんですが、3月生まれって、1年育休とると1歳児になってしまうので、保育園に預けるのがすごく難しいんです。当時、認可保育園も18時までしか預かってもらえず、かつ会社の定時も18時だったので、強制的に無認可保育園に預けることになりました。

ところが無認可に預けたところ、保育料がとんでもなく高い! これは後でも話しますが、後に生まれた第2子と合わせて2人預けたら、毎月18万ぐらい取られて。私なんのために働いているんだろう? という状態です。

保育園にようやく預けられたと思ったら、今度は息子が母乳じゃないと嫌だとハンストして、赤ちゃんせんべいしか食べなくなったんですね。さらに入園後1週間で肺炎になって入院することになり、病院から仕事にいって、夜病院に戻って、また昼には双方の母にきてもらってみたいな生活でした。

なのに仕事は超ヒマだった。

これは推測なんですが、当時、ワーキングマザーって社内にそんなにいなくて、残業しないで働く人って、どう扱っていいのか会社がわからなかったんだと思います。すごく遠慮されて、軽い仕事しか与えてもらえなくて。同期は大きなプロジェクトを任せてもらえるようになってたりしてた一方で、私は何のストレッチもない、普通にやってればこなせるような仕事で、かつ量も少なくて。正直、日経新聞読んでようかな、って思うぐらい窓際族みたいな存在でした。

20代半ばで、これから成長しないといけないのに、こんなのでいいのかな? って。泣き叫ぶ息子を保育園に預けてまで、なんで私会社に来てんだろうって。高い保育園料も払って。

これが最初の育休から復帰したときの私の状況でした。

予期せぬ第2子妊娠!

そんな中、復帰して半年後ぐらい、27歳のときに、第2子の妊娠が発覚しました。

もともとのプランではもう3〜4年したらと考えていたんですが、思ったより早くに第2子を授かりました。「やば! 会社になんて言おう……」って焦りましたね。しかも育休・産休で1年半ぐらい休んで復帰したばっかりだったので、半年でまた……? キャリアが……? って。

かつ、それまで社内で暇人だと思われていたからなのか、いきなり監査法人でやっている大きなプロジェクトにアサインされることになりました。それでけっこう働いて、でも悪阻がひどくなって入院してしまいました。

小1の壁にぶちあたる

そんなこんなで第2子も無事に生まれて、29歳のときに育休から復帰しました。

1回目の復職のときはヒマだったんですが、2回目の復職のときは、私の育休中に中堅層がごっそりと抜けた影響で会社は猫の手も借りたいような忙しさで、私のような残業ができない人でもけっこう大きなプロジェクトも任せてもらえたんです。そしたら、意外とできたんですね。

育児中だとか、残業できないとかをマイナスに考えない上司に恵まれて、順調に昇進もさせてもらって、育ててもらって、マネージャーにもしてもらいました。仕事も忙しかったけど、非常に学ぶことも多くて、本当に感謝しています。

マイナスなのは、保育料が高いこと(笑)。2人無認可で18万です。また下の子も1歳のときに2回ぐらい入院しました。いろいろありましたが、自分にとっては充実した日々でした。

小1の壁

そんな中、次の壁にぶちあたります。俗に言う、「小1の壁」というやつです。

小学校になって、息子は、朝8時に家を出るようになりました。

6歳の子どもに向かってさすがに「鍵閉めて家を出なさい」とは言えないので、必然的に自分も8時に家を出ることになります。でも会社には時差勤務はありますが時短はなかったので、9時から18時まで働かないといけない。かつ、下の子を保育園に迎えにいってから家に帰らないといけないので、家に帰り着くのは19時半とかになります。

学童保育ですが、上の子をキッズベースキャンプというアフタースクールに入れたんですね。そこはすごくよくて、家の前まで送迎してくれるんです。でもキャンプを出発するのが19時で、我が家はすごく近かったので19時5分とかに着いてしまって(笑)。19時5分について、19時半まで6歳の息子が1人でお留守番。「まず電気をつけてカーテンを締めなさい」というのを教えて、あと30分はDSでポケモンのゲームをしててもいいよということにしてお留守番させました。

でもその後、3年生か4年生ぐらいになって聞いたところ「実はすごく寂しかった」と言っていて、申し訳なかったなと思いました。

あと小学校って、平日のイベントがたくさんあるんです。プリントがたくさんあって、ランドセルに入れて持って帰ってくるんですが、ランドセルをひっくり返して、そういうスケジュールを把握するだけでいっぱいいっぱい。

保育園は割と丁寧でこまめに連絡してくれてたんですけど、小学校はプリント見ないと行事を見逃すんですね。「え! 今日給食ないの?!」とか。

そうこうしているうちに、32歳のときに夫がトルコに駐在することになり、また「キャリアの切れ目」がやってきました。PwCはとても良い会社だったので、イスタンブールの拠点で働かないかという話もあったんですが、ビザがおりず……。私はけっこう楽天的なので、「まあいっか!」と人生の休暇として専業主婦になることを選びました。

ユーザベースに入社。スーパーフレックスを活用して受験会場からリモートワーク

そうして冒頭の話に戻ります。トルコから一時帰国しているときに、新野さんのひとことで、ユーザベースに入ることになりました。

ユーザベースに入ってからも、我が家ではいろんな問題が起こっています。

まず学童問題が再び(笑)。下の子を学童に入れたんですが、「つまんない」って言って行ってくれないんですね。しょうがないから家にいることになりました。上の子がいたからよかったですが、夏休みとかの長い休みもまた大変です。あと上の子の中学受験も大変でした。もうすぐ下の子も中学受験なので、またまた大変になりそうです。

でもユーザベースの良さは、こういったことにすべて対応できることなんですね。

上の子の中学受験のときは休みをとらず、いつでもどこでも働いて良い「スーパーフレックス」制度をフル活用して、受験会場で仕事をしていました。

皆さんの中には今、お子さんを保育園に通わせている人が多いと思うんですが、大きくなると楽になるかと思いきや、親じゃないといけないことが増えるんですよね。小さいときって物理的なお世話なので、変な話、保育園の先生でもいいんですよ。大きくなると、精神的に大人になるので、親じゃないといけないことや、学校の先生とのやりとりとか、塾の面談とか、そういうのが増えます。あとはPTAの役員もまわってきます(笑)。

忍耐力、マルチタスク能力、判断力──子育てから学べること

子育てから学んだこと

ここが今日、いちばん伝えたかったことです。

私の最初の復帰後の職場では、すごく配慮してもらったおかげで、私の成長はそこで止まったと感じてしまいました。

みんなは配慮はしていいんですが、遠慮はしちゃいけないなと。選択肢は会社にあるんじゃなくて、本人に任せてほしいと思います。

今、ユーザベースで働いているワーキングペアレントって多いんですが、時短にしている人って少ないんですね。ほぼいないと思います。フルフレックス、リモートワークを活用して、みんなと同じように働いています。それができる良い会社だと思います。

もちろん周りは遠慮してしまうと思うんですが、時短にしたい/したくないかも含めて、本人の選択肢なので、周りが遠慮しすぎないでほしいなと思います。

次。いっぺんにすべてを得ようとしない。

子どもももちろん大事だし、でも一度にあれもこれもっていうのは無理です。焦ってしまうと思うんですが、長い目で見て、焦らないで大丈夫です。

私も第1子のときに、同期に置いていかれる! ってすごく焦ったんです。結果として、今となってはそれぞれの道をきちんと進んでいて、2回の出産がマイナスになったとは感じていないです。

子育てって20年続きます。ずっと続くので、それが自分の人生なので、長い目で見て、そのとき一番大事なことにフォーカスできればいいかなと思っています。

それから、絶対に譲れないというラインを決める。あとのことはだいたい目をつぶる。

たとえば私が目をつぶってるのは、家が汚いとか、毎日完璧なごはんを出すとか。そういうのは目をつぶっています。正直、まじめな人ほど全部完璧にやろうと思うんですが、「ここだけは守りたい」っていうところにフォーカスしたほうがいいです。たとえば仕事で我慢するんだったら、今は昇進を諦めて、でも家庭でやれることをがんばろうでもいいと思うんです。

あとは、パートナーとの役割分担を明確にしたほうがいいです。

うちの夫を見ていても思うのですが、男性に対して「気づいてくれるだろう」というのは絶対にないなと(笑)。「気づいてくれるよね」って女性は思いがちなんですが、伝わっていないと思ったほうが良いと思います。男性の傾向として(うちの夫だけかもしれませんが……)、「あなたの役割はこれとこれです」と伝えるとそれは絶対にやってくれるので、明確化して、オープンにコミュニケーションすることが大事だと思います。

職場では、誰が見てもわかる形で仕事をすることを常に心がけたほうがいいです。子どもがいつ熱を出すかもわからないので。時間を有効に使うという意識も大事です。私も今、昼間オフィスにいる時間はほぼミーティングに使っていますが、自分だけで済む作業は、どこか他の場所でやればいいかなと。あと私がやっていたのは、自分の下のメンバーとか同僚にお願いすると、関係がぎくしゃくしたりするんですね。なので困ったときはいつも上司を頼るようにしていました。

最後になりましたが、子育てはすごく楽しいです。

かつ、忍耐力、マルチタスク能力、判断力、突破力、コミュニケーション能力っていう、仕事にも重要なスキルがほぼすべて身につきます。

子育てから得られるビジネススキル

どんなにわけわからない理不尽な大人より、子どもはもっとわけがわかりません(笑)。「3歳児よりマシだ」って思えれば、どんなに理不尽な要求にも耐えられます。

最近子育てをスタートされた方は、キャリアが心配とかいろいろあるかもしれませんが、絶対に身につけられるものがあると、ポジティブでいてほしいなと思っています。

後日談:Working parents meetup を開催!

松井によるこの発表は、社内の育児世代を中心に国内だけでなく海外オフィスでも大きな反響がありました。

そこで社内Slackに #working-parents チャンネルをつくり、海外メンバーが東京に集まるタイミングで、Working parents meetupを開催。現在育休中や妊娠中のメンバーも集まって、グローバルな育児トークを交わしました。

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男女の家事・育児分担は、日本だけじゃなくて国際問題のようです……。

ミートアップ風景02

ユーザベースのオフィスは子連れ出勤も大歓迎です!

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