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自分らしさを言語化し、「My Play Business」の実現につなげる──MIMIRの自己理解ワークショップ

自分らしさを言語化し、「My Play Business」の実現につなげる──MIMIRの自己理解ワークショップ

エキスパート・ネットワークプラットフォームを展開するMIMIRには、四半期に一度、全社員が参加してミッションやバリューの浸透について考える議論と共有の場「meme(ミーム)」を設けています。このmemeを活用して、MIMIRでは2023年の第2四半期(4〜6月)、個人のパーパスにつなげるための自己理解ワークショップを実施しました。

自己理解ワークショップを開いた目的や取り組みについて、MIMIR ER CSチーム/社内コーチで講師を務めた藤原希望、MIMIR HRBPの芹澤加奈、MIMIR取締役の守屋俊史に話を聞きました。

藤原 希望

藤原 希望NOZOMI FUJIWARASPEEDA CS Division・Unit Leader

早稲田大学卒業。ファーストリテイリングにて、営業・CSR(バングラデシュ駐在含む)・社長直轄プロジェクト・人事を経験。...

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芹澤 加奈

芹澤 加奈KANA SERIZAWA株式会社ミーミル HRBP

新卒でパーソルプロセス&テクノロジー株式会社のCVであるコンサルティング部門へ入社。働き方改革や人事制度設計といった人事領域のPJTに従事し全社新人賞受賞。翌年全社PJT賞受...

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守屋 俊史

守屋 俊史TOSHIFUMI MORIYA株式会社ミーミル 取締役

早稲田大学卒業。インテリジェンス(現パーソルキャリア)で営業、新規事業の立ち上げに従事後、フリーランス人材支援ベンチャ...

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目次

「WILLに沿った成長」を促すために自己理解ワークショップを実施

今回、memeで自己理解ワークショップを実施することになった経緯を教えてください。

守屋 俊史(以下「守屋」): 
MIMIRのバリューのひとつに、「個人と会社のアライアンス関係」があります。これは、会社のミッションだけでなく、個人のミッションがあって、それがアラインする部分を一緒に追求していこうという考え方です。
 
MIMIRはメンバー1人ひとりがカルチャーをつくっている組織で、個人がそれぞれミッションやパーパスを持って、それを大切にしていこうという考えがあります。

でも組織サーベイをおこなった結果、「個々人が自分の『WILL』を実現する場としてこの会社が最適だと思えるか?」という問いに対して、そこまで考え切れていないメンバーがいることがわかりました。これを「何とかしたいよね」と芹澤さんと話していたのがキッカケです。

ちょうどその頃、藤原さんや石川大雅さん(SPEEDA Enterprise Customer Success Team)が、社内の有志によるウェルビーイングプロジェクトで、社内コーチ制度を立ち上げました。その中で、個人パーパスのワークショップをつくって希望者にて提供しようとしていて、その内容が素晴らしかったんです。

これを社内全体で展開したらどうかと、芹澤さんと藤原さんで話してもらいました。

株式会社ミーミル取締役 守屋俊史

オフライン取材と伝えたのにオンラインの守屋

芹澤 加奈(以下「芹澤」):
組織サーベイの結果は軒並み高い数値だったんですけど、「Willに沿った成長支援」に関しては低く出ていました
 
みなさん、転職活動をするときは自分のWillがあって、そのWillを成し遂げたいから会社や仕事を選んで入社しますよね。
 
ただ、毎日忙しく仕事をしていると、だんだん自分のWillが薄れてしまうこともあります。「案件を1件達成するぞ」「今月の業績を達成するぞ」といったように、目の前のことに終始しがちになってしまうんです。
 
ちょっと腰を据えて、自分のキャリアや人生について考える機会がほしいなと思ったときに、MIMIRにはmemeがあるなと思いました。 memeの時間を使って、一度みんなで立ち止まろうと。自分の人生について考えることで個人のWillに沿った成長支援につながるんじゃないかと考えたときに、藤原さんと出会ったんです。いろいろディスカッションをさせてもらい、本業が忙しい中で講師として協力してくれることになりました。

藤原 希望(以下「藤原」):
私は守屋さんから「個人のパーパスを策定するワークショップを開きたい」というお話をもらって、それならパーパスの土台となる自己理解を深めるところからやりましょうと提案しました。いきなりパーパスを考える場を設けるのではなくて、自己理解という土台がないとパーパスはつくれないと思ったからです。
   
ただ、自己理解ワークショップを全員参加で開催することについては、抵抗を感じる人もいました。そもそも自分に向き合いたくなかったり、すでに自己理解を深めたから必要ないですという人がいたり。

ワークショップを通して自己に向き合おうとするときに、チーム内に否定的な人がいると、内省が十分にできなくなる、内省の質が低くなる懸念がある。だから不要だと思う人は参加しなくていい設定にしてほしい、といったリクエストもありました。
 
芹澤:
とはいえ、最終的には8割のメンバーが参加してくれましたね。
 
守屋:
自己開示に抵抗がある人は、趣旨説明だけ聞いて、ワークショップには参加しなくてもいいようにしたんです。その場合は、必要に応じて運営サポートをお願いするというふうに、運営の仕方を変えました。

対談風景

相互に自己理解が深まるよう、フラットに原体験を語る設計に

自己理解ワークショップはどうやって設計したんですか?

藤原:
まず、個人パーパスとMy Play Business(※)を描くためにはどんな要素が必要かを洗い出しました。次に、それは自分ひとりでやるべきなのか、チームで取り組んだほうがいいのかを検討して、エッセンスを出しました。

My Play Business:自分自身が仕事で成し遂げたいこと(ユーザベースグループのスローガン「Play Business」から生まれた社内用語)

そのエッセンスを導き出せる問いやワークシートを設計して、ワークシートができたら有志のコーチングのメンバーに見てもらったんです。
 
ワークショップでは、自分らしさの言語化までをグループでおこないました。その「自分らしさ」を踏まえて、どう社会に貢献する価値になるか、ビジョンを持つか、パーパスになるかの部分は、ワークシートを持ち帰って個人作業として取り組んでもらいました。
 
ワークショップをグループワークでやろうと思った背景としては、社内コーチング制度で何人かとお話したときに、自分に自信がない人がとても多かったからです。
 
それぞれが良いものを持っているのに、それを「良いもの」と自己認知していない。「本当はこんなことがしたい」と思っているのに、「いまは子育て中だから……」と自分の気持ちに蓋をしているパターンもありました。
 
先のことを考えたときに、このままでは「私には何もない」とネガティブに思ってしまう人が出てくるんじゃないかと思って、グループによるワークショップで自分のいいところややりたいことを思い出してもらう機会を設けようと思いました。

SPEEDA・MIMIR 藤原希望
グループワークの内容について教えてください。

藤原:
オンラインで、チームごとにzoomのブレークアウトルームに分かれてグループワークに取り組みました。発表の時間は1人当たり15分で、フィードバックが10分。3人ずつ、15チームに分けておこないました。
 
内容は、ワークシートの中から自分の価値観を選んで、「自分をつくる構成要素はこれです」という発表をしてもらうのがひとつ。もうひとつは、写真を1枚選んで、タイトルと写真にまつわるエピソードを発表してもらいました。
 
そこに対して、メンバーから「あなたが大事にしている価値観ってこういうところですね」とか、「ここがステキですね」というふうにフィードバックをもらう。そうすると、「自分にはこういう良さがあるんだ」「自分のやる気スイッチってこれなんだ」と言語化されていきます
 
守屋:
発表者が話しているときに、その場でチャット上にメモ書きを残すルールだったので、発表者が話したことに対して「あなたは人から受ける影響が大きいんだね」といったフィードバックをしていきましたね。

発表者は、話しながら自分自身について気づきを得ていく雰囲気がありました。どのチームもチャットが活発に動いて盛り上がっていました。

ワークショップのグループ分けはどういうふうにしたんですか?

芹澤:
なるべく業務上の接点がないように、「初めまして」の人が集まるようにしました。普段の業務で一緒だと仕事の話ばかりになってしまって、自分の人生についてまで言及できないのではないかと考えたんです。
 
ワークショップをする前にはアンケートをとって、「自分は自己開示してもOK」という人同士でチームを組んだので、全員がオープンコミュニケーションができる前提でした。

MIMIR HRBP芹澤
知らない人同士がチームになると、「この人はこういう人なんだ」という理解の端緒をつかむだけになりそうなんですが、自己理解を深めることはできたんでしょうか?

藤原:
そもそもの内容を、一緒に業務をしている人でも知らないような話が語られるような設計にしたんです。幼少期から学生時代までの経験や、社会人になってからのターニングポイントのような原体験の話ばかりだったので、その人自身の考え方はしっかりと表出できていたのではないかと思います。
 
芹澤:
参加者として感じたのは、たとえば藤原さんとはこれまで一緒に業務をすることはなかったんですけど、ワークショップでエピソードを披露してくれたときに、「正義感が強いんだな」「仁義を切るタイプだな」というふうに、初めましてだからこそストーリーに入っていくことができました。
 
フィードバックを受ける側になったときも、そういう「先入観のなさ」が逆に、「私ってこういうところがあったんだ」という発見にもつながるんだと感じて奥深かったです。
 
藤原:
まさに、フラットに先入観なくフィードバックもできるし、話もできる状態にしたかったんです。

同じチームの中にライバル関係のメンバーがいたとしたら、「自分の挫折経験を話すことで評価が下がるんじゃないか」のようなスクリーニングが働く人もいます。それを除外したかった。自己開示してもらうには、業務での接点や利害関係がないほうがフラットに自分を出せるのかなと思いました。

ブレークアウトルームに分かれたあと、各チームにファシリテーターがいなくてもうまく回ったんですか?

藤原:
そこが一番の懸念だったので、メンバーにはかなり細かく指示を出しました。 1人当たりの持ち時間は何分で、コメントを返すときは「この人のやる気スイッチはどこか」「大事にしている価値観は何か」「ステキポイントはどこか」の3点についてコメントをすること、といった感じです。

対談風景
ワークショップが終わったあと、個人でワークシートを持ち帰って続きをしてもらったとのことですが、その後は振り返りなどフォローアップの機会はあったんですか?

藤原:
他のコーチングのメンバーが提案してくれて、毎週水曜日のお昼に「もくもく会」を開いています。それぞれワークシートにもくもくと書き込んでもらって、わからないことや違和感があったらコーチに吐き出してもらっているんです。
 
1対1でカウンセリングをしながらシートをつくりたい人は、社内コーチ制度でコーチングを申し込むこともできます。

「MIMIRに入社してよかった」メンバーから目に見えて反応が返ってきた

藤原さんは講師としてワークショップに参加してみて、何か手応えはありましたか?

藤原:
オンラインだったこともあって、進行中は温度感がわからなかったんですが、ワークショップが終わった直後から、かなりたくさんのフィードバックをもらいました。
 
「当日チームが一緒になったメンバーで定期的にランチすることになったよ」とか、「ワークショップの続きをすることになった」とか。MIMIRに入社して良かったと言ってくれる人もいて、とても嬉しかったです。
 
芹澤:
参加者の8割が大変満足、残りの人も満足と回答してくれましたね。コメントもたくさん届きました。

対談風景
今回の取り組みが実際に効果として表れた例はありますか?

藤原:
あるチームのメンバーで、自分の弱みを隠そうとする人がいたんですけど、最近少し温和になった気がしますね。
 
他人から自分が苦手なことを提案されると心を閉ざし気味になってしまう人が、最近では素直に「僕こういうの苦手なので、●●さんお願いしてもいいですか?」と言うようになって。リーダーシップの取り方が変わったなと思いました。
 
芹澤:
今回のワークショップの目的は、目の前の業務だけじゃなく「自分の喜び」を知ってもらうことでした。みなさんからは、そうした目的に沿った感想がたくさん送られてきていたので、やはりこういう時間は必要だったんだなとあらためて感じましたね。
 
「自分のことを棚卸できました」と言ってくれる声をたくさん聞いたので、今後につながっていくといいなと思います。

個々のMy Play Businessに向かって定期的に自己理解を深める機会は重要

今回自己理解ワークショップで見えてきた課題や反省点はありますか?

藤原:
いくつかあって、ひとつはグループの人数をもう少し増やして取り組んでみたいと思いました。今回は1グループ3名だったんですが、4〜5名にするともっとコメントが増えて、さらに自己理解が広がります。
 
もうひとつ、フィードバックの時間も増やしたいですね。コメントがたくさんもらえれば、自分に関するタグやキーワードが増えると思います。
 
あとは、話を聞いて「あなたの特性はこうですね」と相手にコメントするのは、かなり経験がある人でないと難しいと感じました。そうしたことに慣れている人や、言語化するのが得意な人がひとりグループに入っていれば確実にクオリティが上がるはずです。
 
芹澤:
私は自分の棚卸をしてもらう側でも参加したんですが、最初に藤原さんがつくったケーススタディをして「コメントはこうやって書くんだ」と理解したつもりでも、いざその場になるとなかなか難しかったですね。
 
なので、運営のメンバーが入って率先してコメントを書いてリードする必要はあるなと思いました。

今後どう展開していく予定ですか?

芹澤:
環境が変われば自己に対する理解は変わっていくものだと思うので、タイミングを見てまた開催したいですね。
 
守屋:
会社の方向性としては今後、メンバー全員がMy Play Businessやパーパスに関連する長期の目標を置いて定期的に振り返るサイクルを取り入れていこうとしています。
 
それを具体化する過程で、「もうちょっと深掘りをしたい」「いったん書いてみたけどまだ納得感が得られない」と思ったら、有志が立ち上げた社内コーチ制度を使って個別相談ができる。みんなでワークショップをする場も設ける予定でいます。
 
そんなふうに、すべてをひとりで考え切ることに固執するよりも、周りの人たちからコメントをもらって自己内省を深めることは、人生における貴重なスキルとして財産になると思っています。

守屋・藤原・芹澤

編集後記

自己理解ワークショップの話を耳にしたとき、どんなことをやるんだろう? どう設計するんだろう? と興味が湧き、今回の取材につながりました。

ユーザベースでは、自己理解と他者理解のズレをなくすことや、オープンコミュニケーションを大切にしており、今回のワークショップはまさにその「自己理解」を深める内容。次回開催時には私も潜入させてもらって、体験レポートを書きたいなと思いました!

執筆:宮原 智子 / 撮影:井上 秀兵 / 編集:筒井 智子
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