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「何ができるか」よりも「バリューフィット」を重視する──ユーザベースらしい障がい者雇用のあり方

「何ができるか」よりも「バリューフィット」を重視する──ユーザベースらしい障がい者雇用のあり方

ユーザベースは、The 7 Valuesのひとつである「異能は才能(We need what you bring)」を体現するために、個々の才能が最大限に発揮される環境を目指してDiversity & Inclusionを推進しています。

その取り組みのひとつが、Diversability(障がい者)の雇用です。ユーザベースではDiversability採用をどうパーパス実現にアラインさせようとしているのか、そのためにどんなオンボーディング設計をしているのか、CPO/CAO(Chief People & Administrative Officer)の松井しのぶとHRの小松翔子に聞きました。

松井 しのぶ

松井 しのぶSHINOBU MATSUIユーザベース Chief People & Administrative Officer

公認会計士。国内大手監査法人を経て、PwC税理士法人で国際税務のコンサルティングマネージャーに従事。2014年ユーザベ...

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小松 翔子

小松 翔子SHOKO KOMATSUユーザベース 事業HR担当

大手人材紹介会社にて主にメディカル領域・製造業領域担当として、個人・法人の支援に約9年間従事。2019年10月に株式会...

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目次

Diversabilityはひとつの特性であり、能力

はじめに、Diversability(ダイバースアビリティ)という名前の由来や、そこに込めた想いを教えてください。

松井 しのぶ(以下「松井」):
名前は「diverse(多様な)」+「ability(能力)」の造語で、「障がいに対するイメージをコミュニティーの力によって再構築していく」という活動をしているコミュニティ「Diversability」から拝借しています。「障がい者」とか「健常者」という分け方が、どうしてもしっくりこなくて。

そもそも障がいの種類は誰ひとりとして同じではありません。たとえば、自閉症の特性として、「ひとつのことを集中してやり続けることができる」といったことが挙げられます。それはつまり、強みと弱みを持ち合わせているのだと思っていて。

人間のグラデーションは「障がい」というひとつの言葉に収められるほど狭くないのではないか、ひとつの特性であり能力であることを表すいい言葉はないかと考えていました。

そんなときに、ICCサミットで、知的障害のあるアーティストを支援するヘラルボニーというスタートアップの方のお話を聞いたんです。彼らも「障がい」という言葉を使いたくないと言っていて、まさに私たちがDiversabilityという言葉に込めた想いと同じ感覚だと思いました。

ユーザベースCPO/CAO 松井しのぶ

松井:
なぜDiversability採用──さまざまなハンディキャップや能力特性を持つ方の採用に取り組むのか。それには大きく3つの理由があります。

ひとつ目は「異能は才能」、ユーザベースが大切にしている価値観である「The 7 Values」のひとつですね。さまざまなハンディキャップも、その人の個性・特性の性質のひとつであり、強みにも弱みにもなりうるものだと考えています。人は「自分が経験していないこと」への想像力には限界があり、だからこそ多様な経験知が集まり、その経験知が重なり合うことによって、さまざまな化学変化が生まれる。そして、それが組織の力になっていく──これがユーザベースが掲げる「異能は才能」だと考えています。

ふたつ目は「社会環境の変化」。サステナビリティに対する企業を取り巻く社会環境は、近年大きく変化しています。企業が社会的存在として生き残っていくために、企業活動にサステナビリティの考え方を取り入れることはマスト。ユーザベースは「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」をパーパスに掲げています。その「世界」の価値基準が、地球環境や社会・経済活動などの点において変化している。

私たちもできていること、まだまだできていないこと、いろいろありますが、「世界」の価値基準をつくっていける、そしてこういった社会の変化をリードできるような会社になっていきたい──それが私たちのパーパスの実現にも繋がっていくことだと思っています。

3つ目は「ユーザベースの成熟度と社会的責任」です。ユーザベースが事業を立ち上げたばかりで自分たちが食べていくのに必死だった頃に、Diversabilityメンバーの採用を積極的に行えるだけの余裕があったかと問われると、正直なところ難しかったと思います。もちろん当時から私たちは「異能は才能」を掲げ、多様性があればもっと創造性が発揮され、組織や事業が爆発的に伸びると信じてきました。ただ、急成長する組織で多様性を保ちつつ事業を伸ばしていくのは、時には容易ではないこともあったからです。

今も立ち上げフェーズにある事業では同じことが言えるかもしれません。ただ、ユーザベースグループ全体で見ると、たくさんのステークホルダーへの社会的責任を果たしていく必要があると考えています。

「入社後の活躍」の観点からDiversability採用でもバリューフィットを重視

Diversability採用をスタートした時点では、法定雇用率を満たしていなかったんですよね。

松井:
2020年までは、障がい者雇用枠での採用は最低限しか行っておらず、どういう人に入ってもらって、どうオンボーディングしていいかもわからない状態で法定雇用率を満たせていなかったんです。でも経営としてD&Iにコミットしていこうとする中で、この状態では企業の社会的責任を果たせているとは言えません。「多様な人が活躍できる組織」という思想はあっても、まだまだ現実が追いついていないところがたくさんあると感じました。

そこで、もう一度ゼロベースで、受け入れ体制の整備含めて、ユーザベースらしい障がい者雇用を立ち上げることになりました。

小松 翔子(以下「小松」):
それが2021年6月ですね。ちょうど社内でD&Iコミュニティが立ち上がった頃でした。

法定雇用率から計算すると、当初Diversability採用の枠は7枠あって、私が担当することになった時点で2〜3人はすでに採用が決定済み。加えて既存メンバーで障害者手帳を持っていた人が2人いたので、残り5〜6人を採用する必要がありました。

ユーザベース HR 小松翔子
Diversability採用のプロセスはどのように確立していったんですか?

小松:
ユーザベースには「採用の3つの誓い(※)」という採用のポリシーがあるんですが、当初、障がい者雇用には「3つの誓い」を取り入れていなかったんです。

とにかく手探り状態の中で私が実践したのは、他社の人事担当者や関係のあるエージェントさんに片っ端からアポイントを取って、市場動向や他社さんがどう障がい者雇用を進めているかヒアリングすることでした。

それから、一次面接はすべて自分が入るようにしました。どんな方がいて、どういう観点で見ればいいのか。まずは自分で感覚をつかもうと思ったんです。半年ほどそんな状態を続けて、いまのプロセスができあがっていきました。

一次面接は自分が行い、バリューフィットしていると判断した方のスキルセットや経験・希望を踏まえて、活躍いただけそうなポジションを探しにいく。二次面接以降は現場メンバーに入ってもらって、実際に業務をお任せできそうか、チームにフィットしそうか、あらためてバリューフィットを確認します。それでOKであれば、最終的に役員が意思決定する流れですね。

採用の3つの誓い:
1.バリューフィット>ミッションへの共感>スキルの順で採用する
2.自分を超えそうな人を採る
3.採用を他責にしない

他社さんではバリューフィットまで確認するところは少ないのではないかと思うんですが、ユーザベースではなぜそこまでするのでしょうか。

小松:
その人がどんな障がい特性を持っていて、何をお任せできそうかだけで判断しても、ユーザベースでは活躍できないのではないかと感じたんです。自分が事業側やコーポレート側の採用をしてきて、「採用の3つの誓い」がどれだけ重要であるかわかっていたので、その観点も踏まえて面接するようにしました。

松井:
面接では、はじめはバリューなのか特性なのかの線引きがものすごく難しくて苦労しましたね。たとえば、朝に出社できないのは自立できていないからなのか、特性なのか。最初は遠慮もあって、障がい特性だから仕方ないと考えていた時期もあったんですが、そんな中で小松さんが立ち戻ってきたのが「3つの誓い」だったんですよね。

当初は受け入れチームの現場リーダーの人たちもどういう観点で採用すればいいかわからずにいたんですが、半年経って自信を持って原点に立ち返り、「採用の3つの誓い」の観点で見ていただいて大丈夫ですよ、と言えるようになりました。

メンバーの自律自走を可能にするためのオンボーディング設計

Diversability採用で、事業にアラインメントしてもらうためのオンボーディングはどのように設計しているのでしょうか。

松井:
はじめは、「受け入れてみた」からのスタートでしたが、どうやら通常の受け入れとは違うノウハウが必要だということで、第1弾のオンボーディングガイドを作りました。

小松:
面接の線引きと同じで、現場リーダーが「どこまでが合理的配慮の範囲なのか」がわからず、苦しくなってしまっていたんですよね。同時に、Diversability採用されたメンバーが不安な気持ちを吐露したり、業務の進め方やコミュニケーションの取り方を相談したりしやすいサードプレイス的な場所が必要だと思ったので、専門的な立場からアドバイスがもらえる第三者として上前忠司さん(株式会社 日本障害者雇用総合研究所 代表取締役)と契約をしたんです。

松井:
障がいの特性によって、業務の得意不得意があります。いま担当している業務が不得意なものに該当していた場合は、リーダーとメンバー両方に業務の組み替えをアドバイスする、といった役割を上前さんにお願いしています。

小松:
次に、彼・彼女たちが業務にコミットしていく中で、インクルージョンをどのようにつくっていくかが大事だと思ったので、第2弾はゴールセッティングとフィードバックを回して、ユーザベースの中で自走できるかたちにオンボーディングすることを目指しました。

私たちとしても、自走してどんどん活躍のフィールドを広げてほしいので、業務上のゴールセッティングを明確にして成長実感を得てほしいと考えたんです。

松井:
ゴールセッティングの大切さが特に際立つのが、雇用形態の話です。そもそもユーザベースのDiversability採用は、原則として契約社員からのスタートにしています。

我々としてもご本人としても、本当にユーザベースで働いていけるのか、特性の観点から通常の採用よりも見極めが難しいという事情があります。そのため契約社員でスタートすることを原則としているのですが、正社員になりたいと考えているメンバーも多い。そうすると、どうしたら正社員になれるかのゴール設定がとても重要なんです。

小松:
それを明確にするために、私たちのチームではスキルベースに落とし込みました。たとえば採用オペレーションの仕事にはこういう項目があって、定型業務までできればこのタイトル、イレギュラーに一歩入ることができれば、その上のタイトルに上がる、といったものですね。自分が具体でどのスキルを身に付け、何ができればいいかを可視化しています。

対談風景

松井:
これは佐久間さん、稲垣さん(佐久間 衡稲垣 裕介/ユーザベースCo-CEO)も含めて議論をしたんですが、人事評価に使うコンピテンシーテーブル・給与テーブルを、Diversabilityメンバーとその他のメンバーで違うものをつくるか、非常に悩みました。

ユーザベースのコンピテンシーは、特定のタイトル(等級)以上は「自律自走できること」「いかに未来をつくれるか」が重視されています。これからビジネススキルを身につけていかなければいけないメンバーにとって、それでは先が遠すぎてしまう。そうすると、頑張っても給料が上がらない状態になってしまうんです。

いろいろ試行錯誤した結果、Diversabilityメンバーとその他のメンバーのコンピテンシーテーブル・給与テーブルは分けたほうがいいという結論になりました。

小松:
会社によっては、そもそも障がい者雇用で入った社員についての目標設定をしていないところもあるようです。ユーザベースに入ってくれたメンバーでも、前職などで目標設定の経験がないメンバーが多くて。なので、入社してくれたメンバーとも話しながら、一緒に目標をつくっていく必要があります。

ユーザベースでは、バリュー、エグゼキューション(Value、Execution、Edge)、エッジで評価されます。それぞれについて現状の立ち位置がここで、タイトルを上げるためには何が必要か共通認識を持ち、その差分をどう埋めるかを一緒につくる。いずれはそれらを自分で考えられるように、コンピテンシーには「自分の成長を描く」という項目も入れています。そうすることで、もともとのコンピテンシーにある「自律自走」に寄せていきます。

現在は第3弾のオンボーディングガイドとして、ユーザベースのバリュー理解研修の作成に取りかかっています。入社時にユーザベースのバリューについてより理解を深め、バリューを拠り所として日々の業務にどう取り組んでいくべきなのか、そして自分をどう成長させていくか、といった内容ですね。

また、これまでいろいろな方を見てきた中で、「報連相」や「スケジュール設計」などといった基本的なビジネススキルを教わっていない可能性があるのかもしれないと思うようになりました。ユーザベースのバリューを体現しながら自律自走し、一人ひとりが活躍するためにするために必要な、ビジネススキルを取得できるオンボーディング研修を、目下作成中です。

松井:
社会の現状として、たとえば養護学校などに通っていた方が、そうではない学校に行っていた方と同じ強度でビジネススキルを得られるような教育を受けてきてるかというと、日本社会の現実として、残念ながらまだまだそうではないケースのほうが多いのではないかと思うんです。

そうなると、たとえば中途採用の人たちと同じようにいきなりOJT(On The Job Training:新人や未経験者に対して、実務を体験させながら仕事を覚えてもらう教育手法)で、と言われても難しいのが現実です。であれば、業務を教えることやオンボーディングのケアも含めて業務をひとつのチームに集約し、マニュアルなどをつくって受け入れ体制を整えるべきではないかと。

そのチームのコンピテンシーを設計してつくっていくことが、結果としてより多くのメンバーが活躍できる土台になるのではないかと思っています。正解がなく難しいのですが、Equityの概念も意識しながら、つくっていきたいと思っています。

HR小松翔子

実際に入社したメンバーの声

メンバーの声①

Q1.入社後どんなところに戸惑った?
Slackで連絡を取り合う(情報のテキスト化)、ミーティングが多め、いろいろな情報の更新が早いなど、ユーザベースの環境は入社前に伺っていましたが、その環境を体感してみると想定以上で戸惑いました。現在では手話通訳士導入により情報のキャッチアップがスムーズになったことで精神的負担が軽減され、楽になりました。

Q2. ユーザベースのDiversability採用について、良いと感じる点、改善してほしい点
良いと感じる点は、大きく2つあります。ひとつは他の人と同じように評価をいただける点。もうひとつは、業務遂行にあたって障がい特性による壁が発覚したらどのようなツールで対応できるか、すぐ考え動いてくれる点です。

改善してほしい点というわけではありませんが、障がいによる困りごとが他にも多々あるため、「聞こえる・聞こえない」だけではない、あらゆる違いに強い会社を、皆さんで討論し、つくり上げていきたいです。

Q3. 社内で手話講座を実施してみてどうだった?
言葉が違えども伝えたい気持ちを持ってほしい、それを大事にしたい、という思いを持って始めた手話講座。皆さんと一緒にユーザベースの手話をつくったり、手話を通して交流をしたりすることで、周囲の皆さんとのつながりが広がり、それがきっかけで相互理解も進んだように感じます。それが業務にも影響して、以前より働きやすくなったなと感じています。

もっと広げていきたいのでどうやったら広げられるか? 参加していただけるか? などの課題はまだまだありますが、今後も続けていきたいです。

メンバーの声②

Q1. 入社後どんなところに戸惑った?
戸惑った部分としては、ユーザベースはオープンコミュニケーションを大事にしていますが、前職と全く異なる社風ということもあり、その環境に慣れるまでが大変でした。また、自発的に行動して、自分自身で仕事を獲得していくことが求められるので、自分は何ができて、どういうことが苦手なのかを落とし込むのに時間がかかった印象があります。

Q2. ユーザベースのDiversability採用について、良いと感じる点、改善してほしい点
採用されるまでの間、エージェントの方を巻き込んでの丁寧な対応をしていただいたり、THM(全社定例ミーティング)では、手話通訳士を導入するだけでなく、実際にユーザベース内での造語をつくったりと、会社全体で真剣に取り組む姿勢が、いつも目にみえる形で実行されていること。入社して半年になりますが、The 7 Valuesにある「異能は才能」──それぞれの個に対する人となりを認めつつも、より良い環境にしていこうという姿勢が実感できるので、心理的安全にもつながり、働くモチベーションも自然と上がって嬉しいです。

メンバーの声③

Q1. 入社後どんなところに戸惑った?
入社してから1年間程度、オープンコミュニケーションの難しさを感じていました。すぐ意見を求められる場面が多い状況の中で、自分の頭が整理できずに混乱してしまうことが多かったので、かなり悩んでいました。時間の経過とともに慣れていきましたが、自分と他人の考えを共有できるように、分かりやすく言語化をすることの重要さに気づき、スムーズな相互理解ができるようなコミュニケーションを行うように心がけています。お互いの考えを尊重することで、その日々の積み重ねが未来につながっていくと信じています。

Q2. ユーザベースのDiversability採用について、良いと感じる点、改善してほしい点
ユーザベースでは、一定の裁量を持って任される会社なので、障がいの有無に関係なく、フェアに接してもらえるのが良い点です。挑戦したいスキルなどがあれば、どんどんやらせてくれる環境でもあります。また、ゼロからスタートして自分で未来を切り開くスキルを身に着けることができるので、非常に良い機会をいただけたと思います。

Q3. ゴールセッティングの仕組みなど、これまで働いてきた会社との違い
ユーザベースでは「360度フィードバック」という制度があり、上司や同僚から多面的なフィードバックをしてもらえるので、良かった面や自分の足りない面を知ることができます。前職ではそういった制度がなかったので、成長する余地や反省材料を把握できないまま、現状維持になってしまう部分がありました。ユーザベースに入ってから、上司や同僚からのフィードバックを元に新しい発見と共に、さらなる向上を目指したいというモチベーションにつながっています。

メンバーの声④

Q1. 入社後どんなところに戸惑った?
ユーザベースはコミュニケーションツールとしてSlackを使っているんですが、テキストだけだと前後の文脈が読み取れないことが多く、また相手の表情も分からないので最初は戸惑ったし、慣れるまでは大変でした。入社して2ヶ月経った頃、聴覚障がいメンバーの景色(生い立ち・背景・音の聞こえ方など)を発信したおかげで、自分の特性を再認識でき、テキストコミュニケーションのコツがつかめて、やりやすくなってきました!

Q2. ユーザベースのDiversability採用について、良いと感じる点、改善してほしい点
障がい者を特別視することがなく平等に仕事を振り分けしていただいています。どんな些細なことも後回しにせず、その場で丁寧に向き合っていただけるので、働きやすいです。また本業以外に自分のWillを応援していただけるのも嬉しいです。

Q3. なぜDiversability Cafeを始めたのか?
これまで社内報とオンライン手話講座を実施してきましたが、オフラインでの対面を通じて、ユーザベースらしいインクルージョンを実現するために何かできないかなと考えていました。新オフィスにカフェスペースができたこともあり、Waku Workチーム(総務)のほっしゃんさん(星野 藍子)に相談して不定期で手話カフェを始めることになりました。

オフラインで対面のイベントをやりたいと思った理由はふたつあります。ひとつは、同じチームメンバーだけではなく、お話ししたことのないメンバーとの横のつながりをつくりたかったから。もうひとつは、今後新たにDiversabilityメンバーが入社したときに、ワクワク楽しめる環境をつくりたいと思ったからです。

第1回は、手話で自己紹介・ジェスチャーゲームを開催しました。強制的に覚えていただくのではなく、日常生活で使えるもの、ジェスチャーでも通じる楽しさを体感していただきました。まだ始まったばかりですが、今後は誰でも気軽に楽しく参加できる手話カフェを目指していきたいです!


小松:
Diversability Cafe通信や手話講座は私たちではなくて、うちのチームに入社したメンバーが提案し、実現してくれたものです。手話講座も、四半期の目標として取り組みたいと相談されたので、業務とは分けるというコンセンサスを取ったうえでお任せしました。

そのメンバーは「待っているだけではだめだ」という気持ちが強くて、想いをかたちにする力を持った人ですね。

Diversability採用に取り組んでみて、組織にどのような効果が表れていますか?

松井:
Diversability採用に取り組んでみてよかったと思うのが、社内の既存メンバーから相談が来るようになったことです。

たとえば、障がい者手帳を持っているけどこれまで開示してこなかった人や、障がい者手帳は持っていないけれども業務上のコミュニケーションに悩んでいて、自分が発達障害ではないかと感じている人など、一般の枠で入社した社員からも相談が来ていますね。

小松:
先日、リクルーター業務の中で、「これがインクルージョンな状態だな」と感じたエピソードがあったんです。採用の日程調整やオファーレターの作成をみゆきさんにお任せしていて、その中でオファー承諾に向けてオペレーションの方々と協力してオファーの承認を追いにいく作業があるんですが、「同じ温度感の中に混じることができて、とても楽しかった」と言ってくれたんです。

松井:
ひとつの目標に向かってチームで一丸となる感覚が得られたんでしょうね。

小松:
そうですね。「小松さんが『採用が楽しい』って言っていた理由がわかりました!」と言ってくれ、これがインクルージョンな状態で企業で働いてもらうことなんだと実感しました。

HR小松翔子

インクルージョンな状態を作り出すために、PDCAを回し続ける

いま一番の課題はどういったことが挙げられますか?

小松:
私の中では、法定雇用率を満たせていないことが一番大きいですね。ユーザベースの中で自走していく仕組みをつくって、少しでも多くの方を受け入れたいと思います。

松井:
法定雇用率を満たす話でいくと、そのために無理やり業務を作り出すのはイヤだと思っていて。業務に臨むメンバーが介在価値を感じてもらえるように、コア業務につながる状態をつくっていきたいですね。

そのための業務集約型のチームというのが、先日設立された株式会社UB Datatech(以下「UBD」)です。ユーザベースの、特にSPEEDAでは、コアアセットでもある経済情報を自社組成することは悲願でした。そのコアとなる業務の部分で業務集約型のチームをつくって雇用の幅を広げることは、UBDの代表取締役の林(林 尚之/ユーザベース コーポレート執行役員 CTOと兼務)さんもやりたかったと。そこで想いが合致したので、ひとつ形をつくろうということになりました。

もうひとつは、ホールディングスのHR部門の中で、総務的なアドミンの話やオフィス周り、あとは採用オペレーションなど、我々の一番身近なところで業務集約型のチームを立ち上げようと考えています。受け入れの窓口としてこうした業務集約型チームをつくり、雇用の幅を広げていけたらと思っているんです。

ユーザベースCPO/CAO 松井しのぶ
Diversability雇用のメンバーのできること・できないことのすり合わせはどのようにしているんですか?

小松:
たとえば、私のチームのメンバーには、Diversability雇用の方へのフィードバックはストレートに伝えるようお願いしています。もちろん障がいへの合理的配慮は必要ですが、どこまで配慮すればいいかわからないのであれば、「もっとこうしてほしい」とちゃんと言う。

それが障がいの特性によってできるか、できないかは、上前さんに相談したり、直接本人と話し合ったりして決めていこうと。配慮はするけど遠慮はしないことを心がけています。

松井:
周りのチームメンバーが、「ここまで求めていいものか」とか「障がいの特性によるものなのか」などが、自分でもわからないことがあって。そういうときは、上前さんや私が1on1を実施して、「会社としてはここまで受け入れ可能だよ」「これ以上は無理だよ」というふうに伝えています。

Diversability採用の人が増えれば増えるほど、異なる特性を持った人が増えていくという課題は出てきそうですね。

小松:
そうですね。かつ、ある一定スキルを持った人を採用するのが難しくなるので、受け入れ側の幅をどう広げて、入社した人たちにどう活躍してもらうか、そういう場をどう自分たちでつくっていくかが重要になってきます。

Diversability採用は発展途上だとは思いますが、今後はどんな挑戦をしていく予定ですか?

松井:
法定雇用率に関しては、全体の採用母数が増えればその分パーセンテージ掛けるで増えていくものです。そうすると、一時期は雇用率を満たすけれども、採用母数が増えればまた足りなくなることが起こり得ますよね。

小松:
オンボーディングなど、まだまだ完成はしていないので、爆速でPDCAを回し続けることが私たちがやるべきことだと思ってます。ただ私たちが一方的にやるのは違うなと。ユーザベースのDiversability採用は発展途上なので、現メンバーやこれから仲間になってくれる方には、そのような中でもユーザベースらしいDiversability雇用のあり方を一緒につくり上げていきたいと思っていただきたいですね。

編集後記

THM(Town Hall Meeting:全社定例ミーティング)やUB DAYで手話通訳が入ったり、みんなで「ユーザベース」や「SPEEDA」の手話をつくったり、最近Diversabilityを身近に感じる機会が増えたと感じていましたが、その採用現場でどんなことをやっているのか、どんな想いや葛藤があるのか、今回取材するまでほとんど知りませんでした。

まだまだ悩むことも多い、ずっとブラッシュし続けることが必要なDiversability採用ですが、Diversabilityメンバーからもらったコメントを読んでいて、改善できそうなポイントはたくさんあるものの、思っている以上にユーザベースで働くことを楽しんでくれていて、とても嬉しくなりました。手話カフェ、前回は参加できなかったんですが、次回は参加します!

執筆:宮原 智子 / 編集:筒井 智子 / 撮影:渡邊 大智 / イラスト:片山 亜弥

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